表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラスターハンターズ ヤチママタタSAGA  作者: えのしぃ
第3章 衝突
17/30

それぞれの幸せ、願いを叶える為の戦い

仰扇VS潜留!!

 京平きょうへい零路れいじの交戦中、少し離れた場所で仰扇ぎょうせん七賢人しちけんじんの一人、潜留くぐると戦っていた。

「私のブラストは、【螳ョ吶(??????????):諢帙蜉(??????????)】って言ってね、まあ......私自身もどう言う能力かよく分かってないの!」

「へぇ〜、それはなかなか面白いねぇ!いっさい正体不明ってわけかぁ!」

 微量のアルコールで、ここまで性格が変わってしまうのか、仰扇が潜留の説明にハイテンションで答える。


「何が起こるか分からないの!空から雷が落ちてきたり怪物が突然生まれたりするんだよー!今回は何が起こるかなー!?」

 子供が誕生日プレゼントの箱を開く時のようにはしゃぎだす潜留。

 仰扇は彼女の言葉を聞いて、何をされるのか分からないのなら考えても仕方が無いと思い、すぐさま幻獣を召喚する事にした。


「出て来い!灰色の狼(グレンリル)主神の双鴉(フギンドムニン)!!」


 都合の良い事に、辺りは京平のブラストによって燃やされていたので【灰色の狼(グレンリル)】を召喚する為の煙には苦労しなかった。そして、【主神の双鴉(フギンドムニン)】は召喚に何かを必要としない。

「あははっ!何それー!狼と鴉ぅー?かわいいね!」

 潜留は仰扇が召喚した幻獣二体を見て、はしゃぎ出す。

「ちょっと触らせてよー!!あ......」

 幻獣達に近寄ろうとする潜留だったが、その瞬間幻獣は何かにひねり潰されるかのようにぐちゃぐちゃになり、消え去ってしまった。それを見て、潜留は笑っていた。

「粘土みたい!あははっ!面白ーい!」


 突然の出来事に衝撃を受けながらも、すぐに気を取り直す仰扇。

「お嬢ちゃん、本当にめちゃくちゃな能力を持ってるねぇ!やれやれ、手段は選んでいられない無いようだ。」

「お!次は何が来るのかな?」

 仰扇は息を思いっきり吸い込み、それを一気に吐き出した後、再び息を吸い、空へと叫ぶ。

惑いの山羊(ルルンヘイズ)!!」

 すると潜留の目の前に、少し黒みがかった白い毛の羊が現れる。

「羊さんだー!モフモフー!」

 潜留はその羊に飛び込むように抱きつく。羊は先程のように消え去る事は無かった。仰扇はそれを分かっていたかの様な表情でニヤける。

「ごめんよお嬢ちゃん、その羊は触れた人間に1時間程の激しい幻覚を見せるんだ。もうお嬢ちゃんに勝ち目はないよ。」

「へ?」

 羊の能力を告げられた首をかしげる潜留。

「本当はこの手を使うのは嫌だったんだけどね......かわいそ......うだか......ら......」

 勝ちを確信したようだった仰扇が、突然倒れる。

「おじさん!?どうしていきなり!?もしかして、これもすでに幻覚なの!?やばいよおおおお!!」

 潜留は騒いでいるが、これは幻覚では無く現実だ。潜留に惑いの山羊(ルルンヘイズ)の力は効いておらず、何故か突然仰扇が倒れたのだ。

「えー、ちょっと期待したのになー。」

 倒れている仰扇を見下しながら潜留は独り言を呟いた。





 目を覚ました仰扇の視界には、自分の家の景色が広がった。辺りを見渡し、混乱する仰扇。

「お兄ちゃん?」

「アカリ?アカリなのか?」

 重い病気で寝たきりになっているはずの妹、村雲むらくもあかりが彼の元へ歩いてやってくる。

「アカリ!いや......これは惑いの山羊(ルルンヘイズ)の幻覚だろう。あのお嬢ちゃんの何らかの力で、俺が幻覚にかかってしまったんだ。」

 あり得ない風景を目の前に、これは自身の召喚した幻獣による幻覚だと気づく仰扇。

「何言ってるのお兄ちゃん!幻覚なんかじゃないよ!お兄ちゃんが帰ってくる前に、突然病気が治ったの!」

 アカリは嬉しそうに話す。

「本当......なのか?夢じゃないのか?アカリ!」

「夢じゃないよ!本当に本当だよ!」

 仰扇は灯の言葉を聞いて、これは幻覚では無いのではないかと考え始める。

「ねぇお兄ちゃん!明日、遊園地行こうよ!あとショッピングモール!8年ぶりの外出、楽しみだなー!」

 ニコニコと笑う灯。仰扇は既に、これが幻覚なのかそうでは無いのかどうでも良くなっていた。この幸せな時間を過ごせれば、それだけでいいと。

「ん?明日......」

 仰扇が明日と言う言葉から時間を意識し、ある事に気づく。もしこれが惑いの山羊(ルルンヘイズ)の幻覚であれば1時間で自然に目覚めるでは無いか。これ幻覚であった場合でも、そこから自分の意思で抜け出す方法は無い。取り敢えず、一時間待とうと彼は考えた。


「それでさ、僕思いっきり殴られちゃってさ。」

 仰扇は灯に、彼女が病気で眠っている8年間で起きた事をたくさん話す。二人は笑い合いながら笑顔で時間を過ごした。そして......それから約50分が経過した。これが幻覚なら、そろそろ目覚める頃だろうと軽く身構える仰扇。そこで突然、目の前が真っ暗になり、何処からか声が聞こえてくる。

「これは......幻覚です。しかし、私のお願いを一つ聞いてくだされば、この幻覚を現実にしてみせます。」

「誰だ!?」

 突然聞こえて来た声の正体を探る仰扇。

「私は潜留に宿った力......貴方達の言葉では『ブラスト』と呼ばれるものです。」

「ブラストって、喋れるのか!?」

「いいえ、私が特別なだけです。」

 潜留のブラストを名乗る者と会話を始める仰扇。

「なぁ、お嬢ちゃんのブラストさん。幻覚を現実にするって言うのはつまり、アカリの病気を治してくれるって事であってるな?」

「ええ、私のお願いを聞いて下されば、貴方の大切な妹さんの病気を治します。」

「分かった。で、そのお願いとやらはなんだい?」

 仰扇は、潜留のブラストの力なら、本当に灯の病気を治してくれるでは無いか。そう信じてお願いを聞く。

「どうか潜留を、殺してあげて下さい。」

 その頼みは、完全に予想外だった。命を差し出して欲しい、仲間たちを裏切って欲しい。そのような事を頼まれるのかと身構えていた。

 しかし、何故そのような事をお願いされたのか。仰扇は問いかける。

「分かった。だけどどうして?」

「彼女は、私の力せいで不死身になってしまったのです。何をしても死なない。死ねないまま、もうすでに400万年を生きているのです。」

「400万年......」

「彼女は楽しそうに振る舞っていますが、それは死ねないことに絶望しない為なのです。どうか、彼女が本当に絶望してしまう前に、殺してあげて下さい。」

 作り話のようにも聞こえるが、仰扇はこの言葉に嘘は無いと感じた。召喚した幻獣に無防備に向かっていく姿。彼女が「りあおうよ。」と発したときの瞳の色。根拠は沢山あった。幻覚から覚めた時、本人に聞こうと彼は思った。

「最後に質問良いか?どうして僕にお嬢ちゃんを殺せると思ったんだ?400万年死ねてないんだろう?」

「別に、貴方ならやれる。そんな気がしただけです。」






 そして、仰扇は目覚める。

「おじさんやっと起きたー!!」

 潜留は彼が目覚めるまでの間、座って待っていたようだった。

「お嬢ちゃん。僕、君を殺すように頼まれちゃって......」

「まじ?諢帙蜉(??????????)......」

 言葉として、聞き取れなかったが、きっと自分のブラストの名前を呼んだのだろうと察する仰扇。

「全部知っちゃったのね。期待してるよ!おじさん!」

 その言葉を聞いて確信した。

 彼女は死を望んでいると。

 瞳を閉じ、地面に向かって叫ぶ。

安らぎの精霊(リンランド)!僕の心臓を貫け!」

 羽の生やし、剣を持った小さな精霊約50体が、地面からコンクリートを突き破って現れる。そして妖精たちは仰扇の心臓へと勢いよく剣を刺す。


破力全放出ブラストオフ! 幻獣王げんじゅうおうランダルヴァル!!」

 仰扇の背中から巨大な蝶の様な羽が生えてくる。それが羽ばたくと仰扇は空中を浮遊する。

「お嬢ちゃん、全力で行かせて貰うよ!」

「うん!私も全力で死にに行くから!!」

 仰扇が右手を上げると空、地面、そして突然空間から......彼自身が見たことも無いような幻獣達がやってくる。10メートル程の怪鳥、灰色の狼(グレンリル)とはまた違う狼の群れ、龍、妖精、100体の幻獣が一気に彼の元へ集まる。

ブルサ•デグ•マヴナ(全員突撃)!!!」

 潜留の方へと一斉に走っていく幻獣たち。彼女もそれに向かってつっこんで行く!彼女を飲み込む幻獣たちの群れ!






そして、それから数秒後......






そこに残っていたのは仰扇だけだった。






潜留の声が小さく聞こえた気がした。






「ありがとう。」

七賢人、残り4人

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ