覚醒の時、一か八かの賭け
忙しかったり、風邪ひいたりでホントに......
後半は、第一話を書いたときの感覚で書きました。初心忘れるべからず!
キーリンタウン
俺が骨川との戦闘をしている中、キーリンタウンでは京平と七賢人の一人、田辺零路の対話が終わりを迎えようとしていた。
零路は空に向かって笑いながら話す。
「僕はずっと争いを望んでいたんです!傷つけ合う人々、絶え間なく流れる血!最高ですねぇ!」
その姿を見ながら、京平は冷静に話の内容をまとめる。
「つまりお前は、今まで何をしてても退屈で、唯一お前を喜ばせてくれるのは、現在起こってるみたいな戦争状態に身を置く事だけだと......」
「そうです!僕は戦いの中でしか喜びを見いだせない人間!勉強、運動、大体上手に出来ました、しかしその中に楽しさは雀の涙ほどもありませんでした。だけどこの!この状況は凄く楽しいです!」
眼球が取れてしまうのでは無いかと言う程に、目を大きく開けて笑顔で叫ぶ零路。
それを見た京平は「フッ」と笑う。
「そうか......この日の為にお前はブラスト撲滅教に入ったんだな......分かったよ!田辺!この状況、全力で楽しめよ!オレも今からお前を、全力で止めるからな!」
「勿論です!紅蓮柳さんならそう言ってくれると思いました。貴方は本当に、面白い人ですね!」
京平、零路が戦闘態勢を取る。
零路は右腕を大きく上げ、手を開いて叫ぶ。
「行きますよ! 氷河槍•ギンヌンガップ!!」
開いた手に、雪のような白色に氷の結晶を疎らに散りばめたような模様がついた、約6メートル程の長さの大きな槍が現れる。
「それがお前のブラストか、中々綺麗じゃねえか!くぅー!オレの炎で溶かすのが持ったいねぇな!」
そう言いながら、京平は両手に大きな炎を宿らせる。
「フフフフ、炎と氷のぶつかり合いだなんて、なんだかオシャレですねぇ。」
その様子を見た潜留は、まるで放課後の居残り授業から開放された後の様に、気持ち良さそうな伸びをする。
「やーっと終わった!待ちくたびれちゃったよー!結局戦うんかーい!って感じだよねー。さぁさおじさん、私達も、殺り合おうよぉー!」
そう言いながら彼女と共に京平たちの対話が終わるのを待っていた仰扇の方へとスキップで近寄る。
「ああ、分かったよ。だが、あと少しだけ待ってくれないか?本当に少しだ、2分だけ待ってくれ。」
「2分ね、しょうがないなー。それ以上待たせたら、怒るからね?」
「ああ。」
そう言って、仰扇はポケットからチョコレートを取り出して、口の中に入れる。
「えええ!?おじさんのおやつタイムの為に2分待つのー!?ふざけないでよ!」
まさかの行動に潜留は少し苛立つ。
「ふざけてないよ、至って真面目さ。このチョコレートには結構強めのワインが入っててね。」
「え?どう言う事?」
「僕はお酒で酔わないと、本気で戦えなくってねぇ......どこか手加減しちゃうと言うか。」
仰扇は元々物静かで控えめ、悪事を嫌うと言うような性格だが、お酒を飲むと、それは180度変わり、残虐で戦いに積極的な性格となる。
「へぇー!だから、ワイン入りのチョコレートを食べて、酔っぱらおうってわけねー。」
潜留は事を理解し納得する。
「私もなよなよしてるおじさんと殺りあっても、全然楽しくないからさ!いいよ、待つよ!」
「ありがとうねぇお嬢ちゃん!だけどもう十分酔えた!始めようじゃねえか!殺し合いをなぁ!!」
仰扇の表情が、別人の様に変わる。
「やったー!もう始めちゃっていいんだね!!!」
京平と零路、仰扇と潜留の戦いが、始まった。
同刻 港町パルラ•魚市
「破力全放出」
「邪蛇神ゲルムンヨルド!!」
自身の心臓に破力をぶつける事によって得ることが出来るブラストの超強化、破力全開放。通常の10倍以上の能力を引き出すことが出来るが、使用後は肉体に大きな負担がかかる。
骨川は、自身のブラストで力を付与した大蛇の一部を取り込む事で、それを成し得たようだ。彼の全身から黒い泥のような何かが滲み出している。
「これが......破力全放出......!?」
まだ何かされたわけでは無いのに、恐ろしく大きな力を感じる。まともに戦ったら死ぬ。そう直感した。
「全てぇ!全てぶち壊してやるぅ!」
そう言って骨川は俺の方へと歩いてくる!
俺は近づいてくる彼から距離をとりながら破銃を何発も放つが、全く効いていない。
「消えろおおおおおおおお!!!」
そう叫んだ骨川の口から巨大な黒い泥の塊が、バッティングマシーンから300キロのボールが飛び出してきかのように飛んで来る!!
その塊は俺の左肩に直接撃し、骨を粉砕する!!
「うわああああああああ!!」
次にこれをくらったらまともに歩く事すら出来なくなるだろう......しかし、それを止める手段も見当たらない。
逃げる?
いや、もうここから逃げる事できないだろう。
一か八かで あれ をやってみるか......
俺はブラストを使えないが、体の中に沢山の破力があると言われた。そんな俺が破力全開放をしたらどうなるのか、考えていた。今ここでそれを試そうか。
破銃の銃口を自身の心臓に向け、引金を引く。
パァン!
目の前が真っ白だ......
体が......痺れる......
ダメだったのか......?
いや違う!これは雷のブラストだ!直感で理解した。ブラストに目覚めた人間は、直感的にその事を、使い方を、理解し、名前をつける。そう聞いた事がある。これが、その感覚なのだろうか!?
「破力全放出!」
「落雷馬スリーブニル!!」
雷を纏った馬の上に俺は跨っていた。いや、馬だけでは無い、俺自身も雷を纏っていた。俺はこの馬を自由に操る事が出来ると言う事をすぐに理解した。
「ビヒヒーン!!」
俺が頭で思い描いたように走り、鳴き声を上げる。
この馬が走った道には雷が落ち、吠えた先には雷の爆発が起こった。
「これが、俺の破力全放出......」
「な......なんだよそれ!?なんなんだよそれぇ!!?」
骨川が軽く怯えながらも、黒い泥を纏った身体でこちらへと思いっきり飛び、殴りかかる。しかし、馬の上の俺にその拳が届く前に、彼の腕は俺が纏っている雷によって、灰になってしまった。
「壊すんだよ!全部全部!」
そう言って骨川は、右腕を失ったその体で引くこともせず、俺の方へと再び突進する。
「やめろよ骨川!それ以上近づいたらお前は!!」
叫ぶ俺の声は届かず、骨川の体は全て灰になった。
消えてしまう寸前の骨川は何故か、笑っているように見えた。それが、俺の見間違いだったのか、本当だったのかは、分からない。
「はぁ......はぁ......」
骨川との戦いに勝利した俺だったが、その勝利を認識したと同時にその場に倒れてしまった......
それから1時間程で、再び目覚める。
目を開いたら、そこは車の中だった。運転席には、シルクハットをかぶった男が車を運転する姿があった。俺が目を冷ました事に気づいた男が、俺に声をかける。
「君はよくぶっ倒れるね。クセなの?」
丈夫 覚醒!