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ブラスターハンターズ ヤチママタタSAGA  作者: えのしぃ
第3章 衝突
11/30

戦争の始まり、ヤチママタタ地区•浮上

戦いの火蓋が切って落とされる

 夜の9時。任務終了時刻になり、メンバー全員が支部へと帰還する。朝と同じようにブリーフィングルームに集合し、任務の報告をする。

「今日は特に何もなかったすよ!いっつもどうり漁師の皆さんも元気そうに、えんやこらえんやこらやってたっす。」

 るいがパトロールしていたのは港町パルラだ。漁業が盛んで、この町の魚市はこの国の中で最も有名であると言っても過言ではない。


「こっちも、特に問題は無かったのう。ゾルラマのゴミ置き場にいたムカデが気持ち悪かったくらいかの。」

 大瓦おおがわらさんはキーリンタウン、ゾルラマタウン、ダイデンシティの三つを、ブラストを使って同時に見ていたらしい。


「僕の所も特には......」

「オレんとこも無問題だな。」

 仰扇ぎょうせん京平きょうへいが見ていたガーラタウンとライドットシティも、特に異常は無かったようだ。


「ワタシんとこはねー。ブラスターがいてねー!捕まえたよ、うん!」

 鈴音すずねが楽しそうに話す。

「なんかねー。その人が破力全放出ブラストオフしそうになったんだけど、赤蜻蛉アカトンボで眠らせてねー。」

 シャドーボクシングの動きをしながら話す鈴音。


破力全放出ブラストオフ?赤蜻蛉アカトンボ?ってなんですか?」

 聞いたことの無い言葉に、俺は質問をする。


「そうか、君は知らないんだったな。破力全放出ブラストオフって言うのはな......」

 網楽あみらさんが説明を始める。

「自分の破力を心臓に思いっきりぶつける事によって得られる、ブラストの一時的な超強化の事だ。これをする事によって、個人差はあるが大体3分ほど、いつもの10倍から20倍程の威力でブラストを使えるようになる。」

「そんなとんでもない事が出来るんですね、威力が10倍以上にまで跳ね上がるなんて!」

 ゲームの必殺技みたいでかっこいいと思い、俺はテンションが上がってしまった。


「但し、デメリットもあるんだ。破力全放出ブラストオフを使った後は、その反動でブラストの威力が急激に下がる。殆どブラストを使えないのと同じくらいまでに下がる事もあるな。そして..... 」


 網楽さんは少し間を開けてから説明を再開する。

「使った後は寿命が半年ほど縮むと言われていていたり、気絶して丸1日は起きなくなった人もいると言う事例があったりするんだ......」

 心臓に破力をぶつける。そう聞いてなんとなく察したが、やはり、肉体への負担は大きいのだろう。リスクが無いのなら、皆何度も使っているはずだ。

「だからな、出来れば使わないで欲しい。」

 網楽さんはそう俺たちにお願いする。


「勿論ですよ。今まで一回も使ったこと無いでしょう?いや一回だけあったかなー。まぁ、あれは使わなきゃ死んじまう状況でしたしね!!」

 京平がそう話す。

 この後数分、破力全放出ブラストオフに関する詳しい説明を受けた。


「そうだ、だいもんじのパトロールの報告も聞こうか!」 

 俺の質問で話が脱線してしまっていた。パトロールの報告を再開する。

「俺の所も特に問題は無かったんですけど、1つ聞きたい事があるんです。」

 俺はイババラで聞いた、相手に突然血を吹き出させるブラスターについて知っている事を教えて貰う様に頼んだ。


 網楽あみらさんが話す。

霧島薬子きりしまくすこ、それが奴の名前だ。40代の男性で、おそらく過激派組織、ブラスト撲滅教に入っているであろう。と言う情報以外は一切謎で、私達もかなり警戒しているんだ。」


「霧島......薬子......」

 俺は父が死んだあの日の事を思い出しながら、その名前を口にする。


「彼のブラストの原理は、彼が初めて現れた10年前から未だ全く分から無いんだ。今回キーリンタウンに現れたと言う報告があって、能力の正体をさぐる為にかなで君を呼んだんだ。」

「そうっす。」

 るいが網楽さんと俺が話している所に割って入る。

「ボクのブラストって、相手に本当の事を吐かせる事が出来るんっすよ。だから奴の能力をすぐにでもさぐる為、隣の地区の本部からボクだけ他の誰よりも早く、こっちの支部に引き抜かれたんすよ。」

 少し誇らしげに、そう説明する累。


 正体が分からない能力を解明する事が出来る可能性のある逸材。俺は、累が霧島薬子のブラストの正体を明かしてくれる事を願った。そして、それと同時に能力の謎が分かった暁には、霧島薬子を自分の手で牢獄に放り込みたいと考えた。


 これはきっと、復讐心から芽生えたものじゃない。しかし正義などでも決して無い。そんな何かが俺の思いを掻き立てた。






 次の日 朝6時

 支部で泊まっていたブラスターハンター5人が、館内放送によってブリーフィングルームに呼び出される。自宅に帰っていた仰扇にも、至急こちらに来るように連絡がなされたようだ。


 網楽さんが大声で話す。

「緊急事態だ!ヤチママタタ地区内の4ヶ所でブラスターによる暴動が発生した!全員私が指示したエリアにすぐ向かってくれ!」

 4ヶ所で同時に!?これはきっと偶然では無く、予め計画されていたものだろうと言う答えに全員が至った。

紅蓮柳ぐれんやなぎ村雲むらくもと合流してキーリンタウン!夜桜よざくらはライドットシティ!だいもんじかなではパルラ!大瓦おおがわらさんはゾルラマタウンを!」


「「「「「了解!!」」」」」

 全員が通信機を装着し、ブリーフィングルームを後にする。それぞれが、用意された車に乗り込み目的地へと向かう。


 俺と累の目的地は港町パルラである。ダイデンシティにあるこの支部からは車で20分ほどかかる。


「なんだかとんでも無い事になっちゃったすねー」

 累が車の窓の外を見ながら呟く。


 車に乗って10分が経過する。

「地震か!?」

 突然大きな揺れが起こる。車の運転手がブレーキを踏み、運転を一旦止める。

「この地震、なんか変っすよ!」

 累が地面の揺れに対して違和感を抱く。

「なんか、空に近づいてってないっすかぁ!?」

 そう、累の言った通りだった。揺れと共に地面が上へと動いているのだ。

「どういう事だよ!これ!」

「訳分からないっすよ!」

 困惑する累と俺。


 揺れが収まり10分後、港町パルラに到着する。暴動は漁港の当たりで起きていると言う情報を頼りに、そこに向かうと......


「な......なんだよこれ......」

「信じられないっす......」

 本来海があるはずの場所に、海がない。

 船着き場に近づくと、そこから3~4キロメートル下に海が見えた。俺たちは完全に確信した。

「大地が、宙に浮いているんだ。」


 この後、通信機で他のメンバーから受けた報告も合わせて思考すると、一つの答えに至った。ヤチママタタ地区の大地全てが、他の地区から分断され、空へと浮上したのだ。






 ダイデンシティのとある空き地

「それでは、革命開始です!!」

 ローブの男、神我崎かみがさきが空へと叫ぶ。

ヤチママタタの地が、空へとのぼる。

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