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5.穏やかな時間

勉強会が終わってもう一週間が過ぎていた。



あの後、勉強会は気まずくなく……ちょっと気まずくなってしまったが、何とか終わった。


勉強会は終わったが、俺から休み時間や放課後に積極的とはほど遠いが、有泉に少し話しかけるができた。


有泉も嫌な顔せず話を聞いてくれたから――多分嫌われてないと思う……。




……少しは友達をしては認めてもらえただろうか?



でもなんだろうな。


あの時の有泉の顔が忘れられない。



冷たい声、悲しそうな表情。


俺がそうさせたと思うと心が痛い。


どうしてあんな顔をしたのか聞きたかった。


でも有泉が。



『聞かないで。そのことに話を触れないで』



って言ってる気がしてたから、聞けなかった。


無理矢理でも聞いて嫌われてたら困る。



……平井に聞いてみるのはいいかもしれない。


いつも有泉と一緒にいるのは平井だ。


多分平井は俺が有泉のことを好きって知ってるはず……いや、絶対知ってる。


平井はもともと知らなくても、真吾が勝手に喋ったと思うから。


――アイツ、口軽いしな…。


そうと決まったら、さっそく平井に聞いてみるか!と平井の席の方を向く。





あぁ!


そうだ。そうだった。


大事なことを忘れてた。


いつも有泉と一緒にいるってことは、平井には聞けないじゃないか。


有泉がいれば話せないってこと。


「はぁ……っていってぇ!?」


ため息が出た瞬間だった。頬をつねられた。


ボーっとしていたので、人の気配に気づかなかった。


もちろん、やった奴は顔を見なくてもわかってる。――真吾だ。


俺の反応を見て笑ってる。


「お前、本当に面白いな」


「……」


むきにすると揶揄われると思い、無視した。


これで、どうだ。


と思うのもつかの間。


本当にこいつは、痛いところを突いてくる。


「いつまでも落ち込んでるなよ。ため息ばっかして。幸せ逃げるぞ!」


グサッ!


グサッグサッグサッ!!


――おまえは、針か。


ってぐらい俺の心を突き刺した。



……確かにそうだな。有泉に恋してから毎日のようにため息が出る。


考え込む俺を見て、真吾は呆れ顔。


「すごい変化。中学の時のお前なんてそれはひどかったもんな。こうゆうのに関して。それがこんなに初々しくなって」


茶化すように、真吾は俺の頭をなでる。


「い、言うなよ。昔のことだろう」


俺を下を向きながら言った。



昔――中学の時。 過去。


全て忘れてしまいたい。なかったことにしてしまいたい。


「……」


「……」


なんとなく気まずい。


真吾もそう思ったのか話を戻そうとする。


「あ……まぁーあれだ。お前は積極性がないんだ。俺が手伝うっていたんだから手伝ってやるよ」


真吾は無理矢理、俺を席から立たせ、手をひっぱる。


そして引っ張る先には有泉と平井が。


えぇぇぇえぇ。


おいっ!


ちょっと待て。まだ心の準備がー。


とオロオロしてしまう。



そんな俺を見て、真吾は背中を強く叩いてくれた。


堂々していろ、と。


俺をうん、と頷いた。


普段真吾はちゃらちゃらしててよく俺を揶揄って面白がるけど、こうやって俺を助けてくれるときがある。



そんな真吾が憧れだった。男らしく堂々としてるのがすごく羨ましかった。


俺も頑張らないと!!


そうして、俺は有泉と平井の所に行った。


(本当に俺は小心者だよな……。席に行くぐらいでオロオロして…情けない)




これでいいと思ってた。


有泉と少しでも話せれば。


一緒にいることができれば。


このままでいい。


この時間がずっと続けばいいと思ってた。





穏やかな時間は流れていく。


坦々(たんたん)と、一定に。








……でも、穏やかな日々は長くは続かない。

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