28.気持ちを伝えたいのに。
……咄嗟に何と言われたのか分からなかった。
俊也からその言葉を言われるとは思っていなかったからだろう。俺は数秒、目を瞠って固まっていた。
「健斗?」
不安そうな声で名前を呼ばれた。俊也の声でやっと正気に戻る。
「……えぇ?」
………。
「迷惑だった……?」
突然の告白に驚いただけだったが、俊也はどうやら勘違いしているようだ。
慌てて俺は、誤解を解く。
「えぇっとその……。嬉しい」
「えぇ?」
俺の言葉に驚いたのか、俊也は目を瞠っている。うっすら頬を赤く染めているのは気のせい?
俊也からの告白は、とても嬉しいもの。喜びたいのだけど……ちょっと俺自身困惑していた。
この勢いで俺も告白していいのだろうか?
俊也が恋として、恋愛感情として俺のことを好きって言ってくれた。なのに、俺はどこかで嘘なんじゃないかって疑っている。
俊也が俺を好きなはずがないって……。
───結局、俺は弱いままなんだ。
自分から告白することもできず、俊也から告白してくれた。
俺から告白しようと決意したのに……。
これはもうどうしようもならないのだろうか?俺は小心者のまま?
そんなのは男して嫌だ。
今だ。チャンスは今なんだっ。
力強く俊也を見つめて、告白しようとする……。
「俺も……俊也のことが、」
「駄目っ今行っちゃダメ!!」
俊也は強い力で、俺を押しのける。
俺も、と返事をしようとしたのに、またも俊也は俺の言葉を遮る。
「どうしてだ!?俺は自分の気持ちを言っちゃいけないのか?」
ここまで言えば、俊也は俺の気持ちを分かっているはずだ。
それなのにどうして、俊也は頑なに俺の言葉を遮ろうとするのか、分からなかった。
強い言い方がよくなかったのか、俊也の目には涙が浮かんでいる。俊也は力なく、俺の肩を掴んで言った。
「お願い……今言わないで…?」
俺が聞いたことのない俊也の弱々しい声音。強く懇願する鋭い瞳。
「どうして?」
しつこいかもしれない。
それでも、どうして言ってはいけないのか、俊也の口から聞きたかった。
「……僕ぅ…」
俊也の声に涙の色が混じっていた。その声を聞くと、俺までもが辛くなった。
そして───俊也から伝えられたことは、俺に辛さだけではなく悲しみも与えた。
「僕、外国に引っ越すんだ……」
───えぇ……俊也が外国に?
俺の頭の中が真っ黒を通り越して、何もかも拒絶するように、頭の中が真っ白になった。