24.友情と…
「ありがとう。真吾、平井。俺、俊也に言ってみる」
俺の言葉に、笑顔の二人。
笑顔と言うか、安心した顔っていた方がいいだろうか?
「そうか。少しは目が覚めた?」
「あぁ」
その言葉に真吾はにやりと笑う。
「もう一回叩いてやろっか?もっとスッキリするぞ?」
真吾はふざけて訊いたんだろうが、俺は本気だった。
「あぁ。お願いする」
即答した俺に、真吾は呆然とする。
「……えぇ?」
その答えが意外だったのか、ちょっと苦笑いの真吾。
本当にする気はなかったらしい。叩こうか叩かないか迷っているみたいだ。
俺は叩かれる準備をして目を瞑った。真吾は決心したかのように手を構え、
バシーンッ!!
と、凄い勢いで叩いた。
さっきは手加減していたらしくそれほど痛くなかったのだが、今叩かれたのは涙が出そうなぐらいとても痛かった。
多分真吾に叩かれたところは真っ赤になっているだろう。
これでよかった。
新しい気持ちでやっていけそうな気がするから。
「頑張れよ!!健斗」
「おう」
「何だよ。その返事」
真吾は叩きが甘かったかと叩こうする。
平井もそう思ったらしく、叩こうと準備している。柔道部の平井に叩かれてたら、一溜りもないと思い、大きな声で返事した。
「おうっ!!」
「それでよろしい」
真吾と平井は腕組みをし、そう言った。
な。何か、息ピッタリ……。
ほんの少し穏やかな時間は予鈴によって壊された。
キンコーンカンコーン
「もうそんな時間か、じゃあまたな」
手を振って二人は、屋上から姿を消した。
屋上に一人。
俺は大きく深呼吸をした。体中に新鮮な空気が入ってくる。
さっきまでの俺は、焦っていて呼吸することもままならなかったと知った。
―――俊也……。
そっと彼の名前を心の中で呟く。
もう一度気を持ちなおすため、自分の顔を両手で叩いた。
俺は勢いよく屋上を出て、階段を駆け下りた。
キンコーンカンコーン
本鈴が鳴る。
慌てた俺は、急いで教室で駆け込んだ。
息をはぁはぁと切らせながら先生を見ると、鋭い目で俺を睨んだ。
「す。すみません、遅れました……」
「早く席に着きなさい」
はいっと返事をし、よろよろと席に着く。
そう言えば教科書出してなかったと机の中で教科書を探している時、先生の困惑した声が聞こえた。
「あれ?有泉君は?」
俺はその言葉にガバっと顔をあげる。俊也の席を見てみると、そこには本人はいなかった。
さっき俺の前からいなくなったとき、教室に戻ったと思ったのに。
突然具合悪くなって保健室にでも行ったのだろうか。
先生は心配になって、保健室に電話したが。
「いないって…」
屋上にはいなかったし、他に行くところは……。
もしかしての不安がよぎる。
「有泉君を最後に見た人」
俺の隣の席に座っていた人が手をあげて、言いづらそうに口を開いた。
「さっき玄関でキョロキョロしているところを見ました」
その一言にクラスメイトがざわざわし始めた。もしかしての不安が的中したのだ。
俊也は学校を飛び出したのだ。間違いない。
「ちょっと先生職員室に行ってくるから……って。藤堂君!?ちょっっちょっとっっ!!」
先生は慌てて名前を呼んだが俺は無視し、教室で出た。
廊下を走って、玄関に直行。
とにかく俺の頭には俊也を見つけることしかなかった。
俊也に何があったのか?
そして、今度こそ俺の気持ちを伝えるために……。
俺は急いで学校を出た。