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22.自信喪失

「バイバイ、健斗」


その言葉が頭から離れない。


「藤堂大丈夫か?」


平井が手を差し伸べてくれるが、俺はそれすら見えていない。


周りが真っ暗になってしまったような錯覚が起きる。


俊也……?


「藤堂!!おいしっかりしろよ!!俊也を追いかけなくていいのか?」


無理矢理、平井が俺を立たせた。平井は柔道部に入っているから結構、力がある。


ひょいっと持ち上げて、俺の方をガシッと掴んだ。


痛い位に力が込められている。


「堂々としろよ!!俊也に確かめなきゃ、なんであんなこと言ったか分からないだろう?」


分かってる。分かってる。そんなの分かってる。


でも足が動かないんだ。


全身が麻痺したかのように、しびれて動かない。


「藤堂。お前……」


平井が何か言いかけた時、教室のドアがバーンと大きな音を立てて開いた。


さっき俊也が出て行ったドアと逆だ。それに驚いたクラスメートと俺達は、反射的にそちらを向いた。


「おい!!さっきすごいスピードで有泉が走っていたぞ?何かあったのか?」


真吾だ。心配になって俺に知らせようとしたに違いない。


「アイツが藤堂のことを大嫌いって」


「有泉が……?」


平井の言葉を聞いた真吾も驚いているようだ。


「俺、どうすればいいんだ。あんなこと言われて……」


俺はあの一言でここまでも弱ってしまった。


なんて俺は弱いんだろう。


俊也に嫌いって大嫌いって言われてしまった。


弱りきった俺を見た二人は凄い勢いで睨めつけてきた。


「情けないな!!お前それでも男かよ!?そんな一言でグジグジ言いやがって!!」


何かが爆発したかのように、真吾が怒りだした。


続いてと言わんばかりに、平井の口からも怒声が飛んできた。


「藤堂。俺はな、お前だから頼んだんだぞ。それなのに……」


平井は苦虫(にがむし)()(つぶ)したように顔を歪ませる。


「そんな情けない奴に俊也が守れるのか?アイツの傷をいやすことができるのか?」


この二人の気配から普通じゃないと察知したクラスメートが、ザワザワと話し始めた。


「場所変えるぞっ」


この場所ではしっかり話し合うことができないと、真吾はさっき来たドアの方へ歩き始める。


平井も、そして俺も後をついて行った。


よろよろとした足取りで。




俺は本当に情けない。頼りない。


『俊也を守れるのか?』


守れるのだろうか?この俺にできるのだろうか?


『アイツの傷をいやすことができるのか?』


分からない。そんな自信、俺にはない。


―――もしかしたら、俺は俊也を好きになっちゃいけなかったのかもしれないな。


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