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17.二人の過去―中編―

「俊也が、恐怖症だって言うのか?」


「そうだ。詳しく言うと、男性恐怖症」


男性恐怖症……。


信じられない。だって俊也いつも明るくて笑っていて。


「軽度だけどな。俺とか真吾とか藤堂とかとは喋れてるだろ」


「でも」っと話を続ける。


「アイツが他の男と喋ったところを見たことあるか?」


――――ない。


平井とよく話しているの見たことあるけど、クラスメートと話してるところを見たことがない。男性の先生とだって話してるところを見たことがない。二年になってからは俺としか話してなかったはずだ。


「一番初めに一緒に勉強会しただろう。あの時俊也、お前にものすごく怒らなかったか?」


一番最初の勉強会。忘れたことのない思い出。


あの時、俺が少し笑っただけなのに、なぜかすごく冷たい声を出されたのを覚えている。


それ以上に俊也の悲しそうな表情が印象に残っている。


そのことか?と訊くと平井は頷く。


「あれは俺もびっくりしたんだ。俊也があんなに冷たい声を出すなんて…」


少ししゅんとした俺。それを察したかのように話を続ける。


「そういう意味じゃない。俊也が藤堂を嫌ってるってことが言いたいんじゃないんだ。俊也が人にはっきりしたことを言うのを初めて聞いたってことに驚いたんだ」


どうゆうことだ?訳がわからず首を傾げる。


平井はしょうがないとばかりに口を開く。


「俊也が男性恐怖症になったのは原因があるんだ」


「原因?」


次に平井が発した言葉はあまりにも衝撃的だった。



「アイツは中学校の時、男友達に輪姦りんかんされたんだよ」


輪姦?!


俺はその言葉に、絶句した。


輪姦って一人の人を大勢でおかすっていう……?


いわゆる集団レイプか?


「中学校が同じ奴はみんな知ってる」


俊也にそんな過去があったなんて知らなかった。


「あの時……夏休みの時、眼尻にホクロがあった奴がいただろ。そいつが輪姦した中の、かしらにいた奴だ」


―――アイツが俊也を……っ!!


そう思うと頭に血が上った。だが、今、俺が怒っても仕方がない。


怒りを自分の拳に潜めた。


「アイツはずっと苦しんでいるんだ。男の人が怖いって。………でも、お前は違ったんだな。俊也が男相手に怒れるということは、藤堂のことを信頼してるからってことだろ」


「そうだといいんだが」


自嘲気味に言うと、平井は首を振ってくれた。


「藤堂だからにこの話をしたんだ。………だから」


一瞬、詰まってこう言った。


「……俊也を守ってやってくれ。俺にはもうできないから」







――――もしかして、平井は俊也の気持ちを知っていたのかもしれない。


だからこうやって俺に託そうとしているのだ。


『タツには宮沢君がいるから……』


そんなようなことを俊也は言っていた。


「お前ならできる」







その言葉は嬉しいはずなのに、喜べない自分がいる。


俺は平井の言葉を【絶対】に裏切ってしまうから。



平井の言葉には、「俊也を幸せにしてやって」と意味がある。


俺にはできない。




告白する決心をしたのに……。


でも俺はその資格がないことを今、知ってしまったのだ。





俊也を幸せにできないわけ―――それは、俺の過去が関係していた。


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