15.決心
「怖い怖い怖い。ギャーーーー!!」
夏休みに入ったので、遠くの遊園地まで遊びに来ていた。
夏の定番と言ったら「お化け屋敷」ということで、俺達今、お化け屋敷にいます。
メンバーはいつもの四人。
「有泉の反応はいつも見ても面白い」
真吾は俊也をおちょくっている。
「み、み、宮沢君だってさっき怖いって言ったじゃん!!」
俊也は肩をガタガタ震えながら、必死に反論する。
暗いからはっきりと見えないけど……。
そして、違う意味で肩を震わせているやつが一人―――平井だ。
「…俊也、本当にホラー系駄目だな。嫌なら入らなきゃいいのにな」
「だって……」
俊也は黙ってしまった。
わかっているつもりだけど、認めたくないんだな。
……ちょっと揶揄うつもりで言ってみた。
「まぁー俊也のことはどうでもいいから、早く出ようか?」
「あぁ!健斗まで酷い〜!!」
俊也は、頬を膨らます。それを指でつついてみると、息がゆっくり漏れていく。
「藤堂。俊也で遊んでないで、行くぞ」
「あぁ」
「タツまで……、あぁーもう……」
俊也が落ち着こうとしたときに、真吾が何処かを指差し、わざとらしく叫んだ。
「あぁ!あそこに骸骨が!?」
「えぇっ!?ギャーーー!!!」
混乱した俊也は、俺の腕を思いっきり掴んで、顔を伏せている。
痛いと思ったが、怯えている俊也を離せるわけがなく………俺はただ、じっとしていた。
≪俊也は危なっかしいから、俺がずっと守ってやりたくなる≫
―――俺の中の俊也への気持ちが、益々大きくなっていくのを感じた。
お化け屋敷を出て30分。
「怖かったよぉ」
まだ俊也は怯えていた。いまだ俺の腕を離さない。
「大丈夫だ。もう終わっただろ?それに男なんだから、これぐらいで怯えるな」
「わかってるけど!」
俺達のやり取りを見て、平井が呆れた顔をしながら訊いてきた。
「ほらほらその辺にして……何飲むんだ?俊也はオレンジがいいんだろ。藤堂は?」
「俺は、そうだな……炭酸系なら何でもいい」
「わかった。俺と真吾で買ってくるから、お前らはそこで待っていてくれ」
「あぁ、わかった」
「了解です」
二人はジュースを買いに行った。
俺と俊也はその辺のベンチに座った。夏だから立っているだけでも疲れるし、だるくなるし。
俊也は自分の手で風をあおぐ。
「暑いなぁー。どっか涼しいところない?」
俺は呆れて、大きなため息をつく。
「だから、お化け屋敷に入ったんだろう」
「そっそう意味じゃなくて!!」
『お化け屋敷』という単語を聞いただけで、また怯えだした。
動揺の仕方が可愛くて、思わずクスッと笑いそうになる。俺の表情を見て、俊也はそっぽを向いた。
怒ってるのかと顔を覗き込んでみると、予想と違って俊也は遠くの何かを見るような、不思議な表情をしていた。
どうしたんだ?と訊いてみると、突然俊也はこんなことを言い出した。
「ねぇ……今年の夏休みで遊びは終わりだね。来年は受験だし」
「あぁ?……そうだな。来年は受験だな」
話の意図は分からないが、なんとなく頷いた。
「健斗はどこの大学に行くの?頭良いからどこでも行けそうじゃん」
「まだわからない。それに俺、頭なんかよくない」
そう。勉強はできても、頭なんてよくない。だって、俺は………。
俺が思うことを打ち消すように、俊也は俺を見て勢いよく言った。
「そ、そんなことないよ!!僕、すんごく尊敬してるんだよ!!」
…………。
俊也から褒められたことがなかったので、思いっきり赤面してしまった。
不意打ちだ。
……何か、くすぐったい。
俊也が俺のことそんな風に想っていたくれたなんて知らなかった。
「有難な」
「えぇ?あ……うん」
礼を言われるとは思わなかったらしい俊也も、同じように顔が赤くなった。
照れてるのか、下を向いて頭を掻いている。
どちらとも話すタイミングがなくて、ただずっと黙っていた。
――その微妙な雰囲気を壊したのは、知らない男性だった。
彼はとても大きくて、身長は180センチは優に超えているだろう。眼尻にあるホクロが目につく。
俊也のことを知っているようで、馴れ馴れしく話してかけてくる。
「君、有泉俊也君だよね」
さっきまで下を向いていた俊也は、彼の方に顔を向けた……その瞬間、さっきの顔が嘘のように顔が真っ白になった。
俊也は言葉が出ないらしく、口をパクパクさせている。
「やっぱり俊也君だ」
彼は何かニヤニヤしていて気味が悪い。
「ぼ、僕は違います!!ひ、人違いじゃないですか!?」
あからさまに動揺した俊也を面白そうに、彼は見ている。
俊也はさっきとは違う何かに怯えているようだ。
「嘘が下手だね。昔と変わっていないな、俊也くん……クス」
「だから僕は違いますって!!」
俊也の言ってることを聞いてないかのように離し続ける彼。
「俊也君、嘘はやめなよ。僕たちは中学校の【ともだち】だよ?忘れたなんて言わせないからね……ふふふ」
――何だよ、コイツ……っ!!
嘲笑うような笑み、口調。
それに腹を立てた俺は、こう言い放った。
「すみませんが人違いじゃないですか?俺らはこの辺で失礼します」
俺は手を俊也の肩にのせ、彼がいる反対方向に歩いた。
「違う違う違う……」
俊也は機械のように「違う」と言い続けてる。
抱きしめて安心させようとするが震えは止まらない。
これは尋常じゃない。
そう思った俺は、すぐに平井に連絡をとった。
「どうしたんだ!?」
平井と真吾は全力疾走で駆けつけてくれた。
「俊也が……」
さっきあったことを全部話した。中学校の友達というあの人のことを。
その話を聞いた平井は、俊也に呪文のように言った。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫」
「だいじょ……ぶ…」
少しずつだが俊也の震えはおさまってきた。
俊也は俺の背にしがみつく。
「健斗……けんとぉ……」
涙声で俺を呼ぶ俊也に、胸が苦しくなった。さっきよりもギューと強く抱きしめる。
………俊也。そろそろ言ってもいいだろうか?
俺の気持ちを。
けして怖い気持ちがないわけじゃない。
嫌われるかも知れない、もう話くれないかもしれないと不安はある。
でも、言わなきゃ俺の気持ちは伝わらない。
「俺が俊也を守りたい」
―――そして、
「好き」
って自分の気持ちを俊也に聞いてもらいたいから。
――――俺は告白する決心をした。
だらだらと書いてしまったので、読みにくい部分が沢山あると思います。
すみませんm(__)m
「好き」と言ってもいいですか?は、もう15話目に突入しました!!
今、書いて気づいたんですが「好き」と言ってもいいですか?って題名長いですよね……。
何かいい呼び方がありましたら、お願いします!!
まだまだ続きがありますので、よろしかったら読んでください。感想もお待ちしております!!