14.デート!?
「あっつーーい」
今日はプール開きの日。春は過ぎ、季節を夏へと変えた。
俺達はプールの中の掃除をしている。
「健斗。暑いよぉーー!!」
「あぁ。そうだな」
俺はそっけなく返事を返す。
「なんで健斗はそんなに涼しそうなの?」
本当に不思議そうに訊いてくる。そんな天然な所が可愛くて、つい笑いそうになってしまう。
「涼しそう……じゃなくてそうでも考えないと、こんなところにいられるわけないだろ?暑い暑いばっかり言ってたら、余計に暑くなるだけだ」
「そうだけどさ……」
何か言い足りないらしい俊也は、口をとがらせてムッとしている。
そう言えば俊也はアイスが好きなんだよなぁ……。
思いだしたことをいいことに、俺はこう問いかける。
「これ終わったらアイス食いに行こうか?」
「うんうん行こう!!」
目を輝かせる俊也。
これはいい感じに持って行けそうだ、っと思ったのに……。
「駅前にあるアイスクリーム屋さんにしよう!!あそこまだできたばっかりなんだけど、すんごく美味しんだよ♪そうそう――」
掃除そっちのけで俊也はアイスの話を始めた。
早く終わらせるため……早く二人っきりになりたいからそう言ったのに、この調子だと逆になかなか終わらなそうだ。
と苦笑した俺だった。
「うんまーーーい!!」
「あぁ。美味いな」
俺達は駅前のアイスを食べながら、ぶらぶら歩いていた。
――このアイスは本当に美味い、お世辞抜きで。
「でしょでしょ?健斗の何味?」
「チョコ味」
実は俺、結構甘いものが好きで……特にチョコレートは好きだ。
外見からして「ギャップがありすぎる」っと真吾に言われたので、他の奴は知らない……と思う。
「うん、じゃあ貰うね」
「はぁ?」
えぇ……ちょ…っちょっと!!
そう動揺しているうちに、俊也の顔は近付いてくる。そして、俺のアイスをペロリと……。
「あぁー、凄く美味しいな」
俊也は平然と感想を述べた。
そう言う問題じゃないだろ!!だって、だって。
――今の間接キスだろ!?
友達相手なら関係ない?結構普通にする?そんなことはどうでもいい!!
俊也が俺のアイスを舐めた。俊也が……。
混乱した俺の思考回路は完全にショートした。
「どうしたの?」
突然黙った俺を見て不思議に思ったらしく、少し不安そうな目をしている。
「だ、大丈夫だ!!」
「そう?それならいいけど……あっそうだ」
俊也はとんでもないことを言ってくる。
「健斗も食べる?僕のアイス。いちごミルクチョコレートアイスなんだけど」
「い、いらなっ」
動揺のあまりに、片言になってしまう。
「え〜美味しいのに」と勧めてくるが、俺は断った。
――か、か、間接キス……。
そのことがまだ、頭の中でぐるぐる回っている。
深呼吸をして落ち着こうと試みる――が、さらに俊也はとんでもないことを言う。
「なんか、デートみたいだね♪手でもつなぐ?」
「えぇ!!」
今のは冗談だったろうが無かろうが、心臓に悪い一言だった。
落ち着くどころか、さっきより脈が速くなってる。
思いっきり動揺した俺を見て、俊也は面白そうに笑う。
「今の反応、何?凄く面白い!!」
いつも拗ねるのは俊也だが、今日は俺の方が拗ねたい気分だ。
「珍しいな。健斗が拗ねるなんて。たまにはこうゆうのもいいかも」
楽しそうに鼻歌まで歌いだした。
――俊也に格好悪い姿見られるし、揶揄われるし、今日は最悪だ。
と、沈みまくった健斗であった。