11.今はこのままで…
――あれから約四ヶ月が経ち、俺達は高校二年生になった。
俺は有泉と同じクラス。真吾は平井と同じクラス。
平穏な日常生活を送っていた。
変わったといえば、あれだろうか?
「……と…」
声が聞こえる。俺を呼んでいるのだろうか。
「健斗ーーー!!」
有泉が俺のところに走ってきた。
「どうしたんだ俊也。そんなに走ってきて」
有泉のことを『俊也』、俺のことを『健斗』って名前で呼び合うようになった。
それもこれも、あの出来事があったから変わった。
他人。友達。親友。
≪少しずつ、俊也に近づいている≫
そう思っている。
――俊也は俺のこと、どう思っているだろうか。
仲良くなったが、俊也の中にあるものは見えない。
――俊也の心は少しでも癒えたのだろうか。
あの話をあれ以降していないからわからない。
まだまだ知らないことだらけだ。
≪知りたい≫
また違う感情が生まれる。
俊也と一緒にいると、知らなかった感情が生まれてくる。
『好き』 『苦しい』 『悲しい』 『辛い』 『愛しい』
全部、俊也に恋してから知った感情。
「好き」
って、俊也に言ってしまいたい。
でも、駄目だ。俊也の心の傷が癒えてるかわからないから。
……。
……いや、違う。そうじゃない。
俊也がもし、まだ平井のことが好きだったら。
告白して振られたら。
俊也を話すことができなくなったら。
『怖い』
そう思うからできないのだ。
少しでも強くなったかと思っていたけど、全然変わっていない。
俺はまだまだ弱い、小心者のままだ。
いつか言える日が来るだろうか。
俊也に本当の気持ちを。
……今はこのままでいい。
この平穏な日常を、手放す勇気が俺にはないから。
「このままでいい」