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スライム本体?

 ティムが鞄の中から取りだしたのは、投網弾だった。


 撃ち出すと落下先で広がって、網で敵の動きを封じ、絡め取る。もちろん攻撃力はないが、物陰に隠れた敵を引きずり出すにはもってこいだ。


「ゾル部分は網を抜けちゃうかもしれないけど、魔法金属でできてる核部分を引っかけられれば全体が付いてくるだろ。酸に溶かされないようにターロイに時限破壊掛けてもらえばいけると思う。五秒あればここまで引き寄せるのは無理でも、目の届くところに引っ張り出せると思うんだよね」


 言いながらティムは弾の端からロープを引き出して、ランチャーの持ち手に巻き付けた。これが撃ち出した後の引き綱になるのだろう。


「……どの辺にいるのかも分からないのに、当てずっぽうに撃つつもりか?」


 そんなティムの様子を見ていたイリウが訝しげに訊ねたけれど、彼は意に介さずに弾をランチャーに詰めた。


「当てずっぽうってわけでもないけど。今まではこの辺一帯にスライムがいて魔力が分散してたから分かりづらかったけど、今はここまで個体数が減ってまとまってくれたから、外れたところにある魔力が感じられるんだよね」


 そう言えばアルディアに飛ばされてきて、見失った圧力感知板を探している時にも彼はそんなことを言っていたっけ。

 魔法鉱石や魔道具が発する微量な魔力の波動を感じることができると。


 だとするとほぼ間違いなく、ティムの言うように壁の陰あたりに本体のスライムはいるのだろう。


「ターロイ、この投網弾に時限破壊掛けてくれる?」


「分かった。五秒だな」


 ターロイはランチャーに充填された弾に、上限である五秒間の時限破壊を掛けた。これで五秒の間は何があっても網が破壊されることはない。


「よし、行くよ!」


 すぐにティムがランチャーを構え、魔法障壁によってスライムたちが閉じ込められていた壁の陰を狙い撃った。

 引き綱から伸びた先で丸まっていた網が大きく開く。

 それがばさりと地面に落ちた途端、ティムは手元の綱を思い切り引いた。


「おっ、手応えあり! でも重い! みんな手伝って~」


 スライムは魔法鉱石とほぼ液体だ、それほど大きくなくてもそりゃ重いだろう。イリウとディクトが手伝って、五秒以内にどうにかそれを壁の陰から引きずり出した。


「一発で行けたか! よくやった……ん?」


 網に引かれて現れたのは、確かにスライムだった。

 しかし様子がおかしい。全く動かないのだ。

 おまけに、ガイナードの欠片が付いていない。


「……どういうことだ、これ」


 絶対に欠片は本体に付いていると思っていたターロイは困惑した。

 というか、こいつが本体なのかすら分からない。


「赤い石、付いてないな。別のところにあるのか……?」


 イリウもあてがなく周囲を見回した。この存在するものの限られた狭い空間で、別の可能性を見出すのは難しい。


「おい、そろそろやばいぞ、こっちのスライムももう合体を重ねて二体になっている。俺の剣ではこれ以上弾くこともできん。くそ、さっきから削いで分割してもすぐに融合してしまう」


「人工スライムは野良スライムと違って分裂して繁殖するわけじゃないもの。強い攻撃を受けると合体するように造られているの」


 ロベルトも少し焦燥を見せている。

 愚痴にも近い彼の言葉にルアーナが答えると、それを聞いていたティムが疑問を口にした。


「合体するように造られている、か。じゃあ、何であのスライムは合体してないんだろ。死んでるわけじゃないよね? 微量の魔力は感じるし」


「ティムが魔力を感じるってことは、このスライムの核はやはり投影されたものじゃなく魔法鉱石なのか? だとすると、こいつが本体だってことだよな」


 ターロイも疑問を呈する。それにもルアーナが答えた。


「そうねえ、その人工スライムが本体なのは間違いないと思うわ。魔法鉱石は魔力が空になっても微弱な魔力は帯びてるから。合体しないのは単に融合するだけの魔力がないからね」


「……魔法鉱石の魔力が空?」


「簡単なこと、人工スライムが何の動力で動いているか考えてご覧なさい。魔力で動くものの魔法エネルギーが空っぽになったら、どうなるかしら?」


 そうか、このスライムはただ魔力が切れているだけなのだ。だとすると今のうちに核を破壊してしまえば……。

 そう考えて、はたとまた疑問が浮かぶ。


「ちょっと待て、もしかして人工スライムって結局ゾルが主体で、核は添え物なのか? 核が主体だったらゾルも動きを止めるはずだし」


 核が単に術式を彫り込んで能力を増幅させるためだけのものだとしたら、スライムにガイナードの欠損再生の能力がない今、ゾルさえ焼き捨てればいいのでは?


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