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ゴーレム戦 1

 広間の中央の燭台に火を灯すと、遺跡内にガシャンと施錠されたような音が響いた。おそらく魔法の檻が作動したのだろう。


 同時に天井から大きな何かの塊のような物が落ちてきて、ターロイはたいまつを放り出し、アダマンタイトのハンマーを構えた。


 燭台のおかげで最低限の視界は確保できている。

 大きな地響きを立てて落下したそれの正体を、慎重に見極めなくてはならない。


 風圧による砂埃が上がったけれど、それを少し目を細めるだけでやり過ごして、ターロイはその物体の動きを注視した。


 塊からまず頭のようなものが出て、燭台の光を弾く。その光沢、どうやら石のゴーレムではなさそうだ。

 次いで腕と足が伸びて、それは二足で立ち上がると、頭部に一つ赤い光を灯した。


 その姿は一つ目ゴーレムだった。

 前時代の大戦で作られた兵器用のものだ。

 薄暗くて視認できないが、確か、その身体はこちらも超硬質金属アダマンタイトでできていたはず。


 事前にガイナードのハンマーを見付けておいて良かった。

 上鋼のハンマーでは、攻撃したこちらの方が壊れてしまうところだった。

 もちろん、魔法生物相手では、こちらの方が圧倒的不利であることに違いはないのだけれど。


 ゴーレムの出方を見ていると、頭部の赤い光がぐるりと動いて、ターロイの姿を捉えた。

 次の瞬間、こちらに拳が向いたのに気付き、とっさに横っ飛びで移動する。すると今しがた自分のいたところに、切り離された拳が飛んで来て、ドスンと勢いよく地面にめり込んだ。


 これはこのゴーレムの基本攻撃だ。確かロケットパンチとかいう名前だったか。


 石のゴーレムは直接攻撃のパンチが基本だが、兵器として造られたアダマンタイトのゴーレムは、その防御力の代わりに重量が増えて速さが犠牲になり、直接攻撃が遅くて当たらない。


 そこで本体はほとんど動かずに発射台となり、こうして遠距離攻撃に特化しているのだ。飛ばされた拳は、すぐに魔法磁力によって引き戻された。

 守りは堅く、その目は三六〇度動き、背後に回ってもすぐに感知される。


 当然ターロイが移動した先に、すぐさま次のパンチが飛んできた。

 しかし、この攻撃は単調で、タイミングさえ誤らなければどうにかかわせる。

 それをさらに避け、ターロイは移動しながらゴーレムを観察した。


 目当ての物を先に見付けておきたいのだ。


「……あれ? ガイナードの核の欠片が見当たらないな……」


 だが、ゴーレムの周りを一周しても、その身体に赤い石を見付けることができなかった。

 そこでふと、こちらを追ってくる頭部の赤い光に目を向ける。


 ……まさか、あれじゃないだろうな?


 もしそうだとしたら、明らかにゴーレムの内部である。魔法生物の破壊をまだできないターロイには、取り出すすべがない。


 充魂武器があれば傷くらいは付けられるかもしれないが、魔法鉱石でできた道具や生物は、格上の鉱石でできた武器でないと壊せないのだ。


 つまりこのゴーレムを壊すなら、最低でもアダマンタイトとオリハルコンでできた充魂武器でないと無理だ。そんなもの、稀少すぎて手に入らないし、今ここになければ意味がない。


 他に魔法生物に通用するとしたら……。


「ひよたん、『戦闘』頼む」


 魔法属性のあるブレスに頼ってみることにする。

 肩に乗っていたひよたんに命令すると、それはぱたぱたと羽ばたいて宙に浮いた。そしてピィィと一声鳴いて、一瞬まばゆい光を放ち、たちまち変身する。


 その姿はやはり猛禽類のそれだった。


 初めて変化したターロイのひよたんは、アカツキのものより少し小さく見える。それでも二メートルを優に超え、その身体は黄色い羽に覆われていた。


 ……そういや、黄色いひよたんは何の特性があるんだろう。グレイに色別の特徴を聞いておくんだった。


「ひよたん、ブレス吐いて! もしくは何か魔法っぽい攻撃して!」


 とりあえずゴーレムの攻撃は未だターロイを追っている。その間にとひよたんに指示をした。まずは何でもいいからマナを消費する技を使ってもらおう。


 さっきまでユニといたおかげで、ひよたんのマナは満タンだ。技の発動はすぐだった。


 ピィィィィ! と大きく鳴くと、空気がビリビリと振動して、次の瞬間ゴーレムに雷が落ちた。


「電撃……! よし、動きが止まった!」


 これは運がいい、ゴーレム相手にこのひよたんは当たりだ。魔法鉱石や魔法金属でできた生物は、特定の耐性があるもの以外は電撃系の魔法が通りやすい。雷で壊すのは難しいが、倒すことはできる。


 倒すことができれば、試練は終わりだ。そこまできて欠片が取り出せないということはないだろう。ゴーレムの頭がぱかっと開いたりするんだ、きっと。


 これは、アカツキの祠の時に比べたらずっと楽にクリアできるかもしれない。


「ひよたん、今のうちにマナを溜めて、雷をもう一発……」


 そう考えて指示をだそうとした、その時。


 電撃を食らって止まっていたゴーレムの身体に、魂言で書かれた術式が浮かび上がった。


「え……? 何だこれ」


 そこにあったのは、パラメータや属性をぐちゃぐちゃに書き換えられた術式。そして文末に、『術式破損による制御異常』の文字。

 これは、本来身体に埋め込まれているはずのゴーレム使役術式が、表出している……。


 電撃属性の耐性増加。

 防御と速さのパラメータ交換。

 炎属性攻撃など。


 ちょっと見ただけでかなり嫌な感じだ。


 そんなターロイの前で、ひよたんが二回目の雷を落とす。

 しかし今度のゴーレムはほぼダメージを受けず、驚く速さで移動を始めた。

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