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短編小説

異世界に来ちまったからのんびりと商売する

作者: 黒田明人

どっかで見たような話ですね。

書いているうちにどうにも違和感が……

クレームで削除します。

 

あれはちょうどVRゲームをやり込んだ後の事だった。


没入型のVRMMOで、制限時間ギリギリまで仲間と共にハントしまくり、疲労困憊でログアウトして、そのままベッドに倒れ込んだ。

そして起きたら見知らぬ宿の部屋だったって話さ。


小説ではよくある「知らない天井だ」と呟き、例え夢だとしても一度は言ってみたかった台詞に自己満足し、夢の中の異世界風景を楽しんだ後、ほっぺたを抓って我に返ったんだ……現実だと。


当時は不安より期待度が高く、早速にも中二病よろしく「ステータス・オープン」とかやらかしてさ、しかもそれで表示が出たりするもんだからすっかり舞い上がってさ、気付いたら落ち込んでいたんだ。


何故って? そりゃもちろん、チートらしき代物が無いからさ。


異世界転移となればさぁ、鬼みたいなステータスに豊富なスキル、豪華絢爛な加護が目白押しでオレTueeee……とか、期待したほうもアレだけどさ、元々あり得ないはずの異世界転移なんだし、期待するでしょ、普通。


なのにさ、ステータスはしょぼいし、変わったスキルも……いや、一つだけはあったんだけど、それだけだったんだ。


確かに『移動店舗』とか、スキルの名前っぽくないスキルだしさ、これは……とか思ったんだ。


確かに便利ではあるんだけど、戦えないんじゃ意味が無いよな。


移動店舗ってスキルはさ、早い話が何処でも買い物が出来るスキルってだけなのさ。


だから大きな町とかでは意味が無く、なるべく交通の便の悪い、行商人すらも滅多に来ないような村では需要が高そうなスキルだったんだ。


だけどさ、そんな辺鄙な村にわざわざ行くとかさ、それって危険じゃないのかとか思うとさ、使えないスキルなんじゃないかと思えたんだ。


それでもやっているうちに……


ああそうそう、この世界だけど、ちょうど寸前までやっていたゲームの世界にちょっと似ているんだ。

と言ってもシステムが、の話だけど。


つまりさ、ステータスが見られてインベントリがあって、通貨も中に入れられて必要額を念じれば出るってシステムさ。

ただね、オレがゲームで集めていたレア物は全て無くなっていて、膨大にあったはずの通貨も殆ど消えていたんだ。


この世界の通貨単位は『ギール』と言ってね、それもあのゲーム内での通貨によく似ているんだ。

オレがやっていたのはかつて、VRゲームが出る以前の古典的MMOのVR化版というやつ。


そういうのが流行っていて、竜の挑戦とか、最後の幻想とかリリースされていて、オレがやっていたのは後者のほう。

ちょうど飛空船を手に入れる寸前の戦いを仲間とやっていて、いよいよってところで皆がダウンしてさ、ついでにオレも限界ってんでお開きになったんだ。


その時のインベントリの中には、回復薬とか満載になっていたし、金も有り余るぐらいは持っていたんだ。

なのにそれがそっくり無くなっていてさ、あったのは僅かに小銭だけだったんだ。

10億コインを数十枚持ち、伝説クラスの素材を満載し、神話級の武器をいくつか入れていたオレの財産がそっくり……


どうせならそれも込みにしてくれと思ったね。


当時の金は確か、巨額コインとは別に小銭は少々入れていたんだけど、それしか残ってなかったんだ。


僅か6桁の小銭でどうしろと、当時は暗澹たる気持ちになりはしたけどさ、見慣れぬスキルをやりくりするうちに、意外と使えるスキルだと思い至ったんだ。

でもってそれを活用してレベルを上げ、今では一端の冒険者みたいになったけどさ、オレは戦いより商売がやりたくてさ、こうやって野営広場を柵で覆い、小屋を据えて店もどきをしているって訳さ。


つまりさ、スキルで買える代物はさ、二つの世界の両方だったんだ。


だからさ、それに気付いて最初に買ったのは菓子パンだったってオチもあるけどさ、希望が出たのはあれが切欠だったな。

それから露天を始めてさ、食パンを売りに出したのさ。


なんせこの世界、パンと言えば高級品なら柔らかいけど、それでも味わいはあちらの世界には及ばないんだ。

そうして平民区で売られているのは固いパンな訳でさ、そんな所であちら産の食パンを売るもんだからひたすら売れたね。


手持ち全てで食パンを買い、全て売り尽くしたら資金が数百倍になったってオチもあるけどさ、あの日は広場が閉まるまでひたすら客が来てさ、売れども売れどもキリが無くてさ、閉鎖する寸前まで客が尽きずにさ、翌日も絶対に来いとまで言われてさ、翌朝早朝、隣町まで逃げたんだ。


だってさ、あんな売り上げとか、他の店の恨みを買いそうな話だし、かと言って高値で売るのも拙い。


確かにあちら価格の数倍で売りはしたけど、それでも相場からすると半値以下の価格だったんだ。

と言うのも登録露天なら税金も一律だけど、オレのような流れ者の税金は高いんだ。


売価に対していくらって決まっていて、持ち込んだ商品の数の分だけ税金が引かれるんだ。

だから当時、500個持ち込みで申告して、1斤2500ギールで売りに出す事にしていて、それに対して税金が1250ギールも取られたんだ。


酷いだろ、売価の半分も税金掛けるんだから。


そんな訳で3750ギールで500個分売り、その分の税金を分けておき、後はスキルで水増しして、結局はかなりの数売ったんだ。

だけどそんな脱税、連日とかやれるはずもない。


だからさ、夜逃げじゃなくて早朝逃げとばかりにあの町を出たんだ。


え? いくら売ったんだって?

実に3876斤さ、ははは、バレるよな、普通。

だから逃げたんだよ。


まあ、そんな経緯もありはしたけど、初期資金を得て何とか冒険者の端くれになり、地道な商売の後に現在に到るんだ。

いやまぁ、地道と言っても毎回、露天で大騒ぎになって翌日早朝逃げるの連続でさ、嫌気が差して今の状態と言えばいいかな。

もうさ、辺境の町は何処に行っても大騒ぎになるんだよ。


それだけこの世界の品物の質が悪いと言うか、元の世界の品質が良いと言うか。

こちらの世界での一般的な固いパンの価格で向こうの食パンが買えるんだ。

そんなの嫌でも稼げるだろうし、大騒ぎになるのも当たり前だよね。


だからと言ってぼったくり価格にするのも気が引ける……いやね、かつてやったんだよ、食パン1斤5000ギールってさ。

そうしたら税金が2500ギールも付いてさ、7500ギールの食パンとか、平民じゃ中々手が出ない代物になっちまってさ、挙句の果てにそこの領主が聞き付けて、お抱えにしてやるから専属で買い占めるとか言い出してさ、囲い込もうとしたんだ。


もちろん逃げたよ。


それからかな、町での商売がきつく思えてきて、こうして野原を開拓して村もどきにして過ごしているんだ。

ここいらのモンスターは雑魚も雑魚だし、柵を越えてまでは入って来ないんだ。

だから夜も安心とあって、通行中の商人なんかもここで野営するようになってさ、旅の必需品も買ってくれるようになったんだ。



「おい、水くれ、それと、パンだ」

「はい、毎度。水はこいつに一杯で20ギール、パンは1個50ギール」

「お前それで儲けあんのかよ? まあ、オレらは助かるけどよ」


でかい桶に注げば5杯分で100ギールの水、後は固いパンを5人分で250ギール。

これは近隣の町の相場とあまり変わらない価格になる。

持ち運ぶ手間やら重さを鑑みても、安いと思われているらしい。


もっとも、スキルで買うなら水は一杯1ギールな代物で、パンは5ギールだけどね。

固いパンは向こうじゃ商品未満な扱いっぽいから安いらしいんだ。


「おう、塩くれ、こいつに入れてくれ」


塩はこの大陸中央部ではそれなりの価格であり、町で買っても高い代物だ。


「こいつに1杯100ギールだよ」

「町で買うのと変わらないじゃねぇかよ。よし、10杯くれ」

「毎度」


今日は4組の野営か。

たまにこうして大勢で野営になるんだよな。

こういう時は掻き入れ時だし、異国の品を売るのも良いかな。


「おい、掘り出し物、手に入ったか? 」


来たよ来ました、待ってました。


「これなんだけど、いくらで買う? 」

「そいつは塩じゃねぇのかよ」

「砂糖だよ」

「な、マジかよ、いくらだ」

「これに1杯5000ギール」

「うほ、さすがに高ぇな。しかし、うーむ、そうだな、4杯、いや、6杯くれ」

「へい毎度」


実は塩も砂糖も同じ価格なんだよね、あっち価格じゃ。

だけどそんな売り方したら絶対に大騒ぎになる。

だからこんなぼったくり価格でこっそり売っているんだ。

たまに来る商人から手に入れたと偽って。


「オレにも売ってくれ、砂糖」

「ワシにも頼む」

「私も少し良いですか? 」


いやはや盛況だね。

でもさ、戻れないってのも辛いよな。

あーあ、何でこんな事になっちまったんだろう。


「まだあるか、砂糖」

「へいっ、あと少しありますよ」

「全部だ」

「全部だと6万ギールになりますよ」

「良いから寄越せって言ってんだ。こいつが見えねぇのか? 」


やれやれ。


あのね、向こうの品は何でも買えるんだよ。

それは当然、武器もだよ。


「おらおら、ついでに金も出せ。たんまり稼いでんだろ」


ジャキン……タタタン・タタタン……うーん、やっぱり短機関銃最高だね♪


ごめんね、オレもこんな場所で商売するんだし、自己防衛ぐらいはするんだよ。

だってモンスターもたまに出るんだし、こういうのは必須だと思わないかい?


「やれやれ、店長の魔道具が炸裂したな」

「柄が悪いと思ったら、あいつ盗賊だったのかよ」

「自業自得だろ、あんな良心的な店を脅すとかよ」


セーラー服着た女がヤンチャする話を思い出した。

 

でも、さすがに快感とは思えないな。


殺して快感とか、こんな世界でも異端だしさ。

  

水兵さんの服にはマシンガンが似合う?

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