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あなたの為の特別な料理

作者: soro

彼女の紙の色は白銀で、整った顔立ち、

そそて、大きな青い目で僕を見つめた。


「私は家族もいないし、いるとも思っていない。

 というよりも、私の家族は代々子が生まれると

 親の役目は終わりなの」


大きな細長いテーブルの端っこに2人は向かい合って座り、

用意された料理がドンドン運ばれてくるが、殆どが

肉料理だった。


「子を育てるのは代々使える執事の役目。この広い屋敷で

 暮らしているのは、4人だけ、フフ変でしょ?」


そう言いながら笑った彼女の笑みはどこか不思議で、そして、

ずっとみていたいという衝動が湧き上がってきた。


「へ、へんじゃないと思うよ。き、きみは綺麗だし、、それに」


「君じゃなくて、バーバラって呼んでね。いい?ルーカス?」


「!?僕の名前知ってたんだ、、」


バーバラは小さな口に、綺麗に四角に切ったステーキを

運び美味しそうに食べながら頷くと、パンをちぎりながら


「これもまた私達一族の特性なんだけど、気になる男性が

 突然判明するの」


口へと放り込み、数回間で飲み込む


「気になるって、、ぼ、ぼく」


「えぇ、だから夕食に招待したの。食べないの?」


蝋燭で照らされた食事にルーカスは目を落とし、ナイフとフォークを

ぎこちなく手に持つと、目の前の大きなステーキにナイフを当てた。

ナイフは何の抵抗もなく、水を切るようにスッと奥へと入り込み、

肉を切断したが、その傷口からは一滴の肉汁も流れることなく、

表面に張り付くように残っている。


「美味しいわよ。あなたの為に用意したの」


「う、うん、ありがとう。いただくよ。」


食べる前から、ルーカスの胃はグーグーと雛の様に声を鳴らし、

ついに運ばれてきたステーキは一瞬で溶けていき、喉を流れたのは

個体ではなく液体だったが、そのあまりの美味しさに

しばし、ルーカスは目の前のステーキを驚きの

表情でみつめていた。


「気に入ったみたいで良かったわ。家のコックの料理は最高なの

 特に、肉料理はね。ねぇ、ルーカス?」


「えっ!?な、なに」


呼ばれているのに気がつき、顔を上げたが、いつの間にか

ステーキは半分もなくなっており、彼の口は絶えず動いていた。」


「あなたは私とこの屋敷で暮らすんだけどいいわよね?」


「うん、もんだいな、、えぇ!?」


かんでいたパンをゴクリと飲み込み、ルーカスは

まじまじと小さな目で楽しげに笑うバーバラに目をやった。


「言ったでしょ。好きな人は変えられないの、その人と

 子供を作って役目を終える。それが、特性なのよ。」


「で、でも、僕達15だよ。母さんや父さんだっているし、、あっ、ごめん」


「いいのよ。必要なものは全部手に入る、生活で困る事なんてないんのよ

 それに、あなたを縛る気はないの、デートだってしていいし、学校だって

 一緒にいくわ」


笑顔を絶やそうとしない彼女と冷や汗をかき始めたルーカスの前に

パイで包まれた料理が運ばれてきた。何度も執事の顔を見ようとしたが、

今回も、振り返ったときにはドアが丁度しまるところだった。


「肉と野菜のリゾットをパイで包んだ料理よ。さぁ、食べて」


バーバラはルーカスに説明し、フォークでパイを割り

中の具と一緒に口へと運び、嬉しそうに頬を緩めている。


「一緒に学校にくるって、僕の学校は最低最悪の場所だよ。

 スラムのごみためだ。君だってみただろ?」


「えぇ、あなたの事を調べるために何回も足を運んだわ」


「えっ!?」


「ある時期が来ると、匂いでわかるの。どこにいるのか、、運命の人がね。

 そして、自分の目で見に行くの、私の人を、、ルーカス」


蝋燭で照らされた青い眼は、ジッとルーカスを見つめ、

ルーカスは金縛りにあったかのように恐怖で動けなくなっていた。


「でっ、あなたを迎え入れる準備ができたから招待したの。

 これはね、私とあなたを結びつける食事なのよ。さぁ、食べて」


フォークですくったパイを口に運びながら、バーバラは

子供の様に無邪気に笑った。

そして、ルーカスは確かに全身で恐怖を感じているのに、なぜか、

目の前の料理にめがいくと、思考が停止し、感じた事もない

食欲が体中からあふれるのを感じた。


「愛なんていらないの、あなたと子供を作るのが役目なのよ。

 もちろんすぐにじゃないわ。時期が来ればわかるのコレもね。

 でも、あなたとしかダメなのよ。私の愛というのかしら?

 違うわね、、そう!すべてを受け入れる事ができるのは

 あなただけなのよ」


目の前でバーバラがしゃべっている内容は頭に入ってこず、

手に持ったフォークでパイを突き刺し、縦に割った。

ステーキとは違い、中から今度は黄金色の肉汁があふれ出し

早くよこせと喉と胃が悲痛の叫びを上げる中、ルーカスは

ソレを口へと運び、その瞬間、すべてが歯車の様に

カチリとはまり、その歯車はグルグルと一寸の狂いもなく

ルーカスの舌をとおり、喉を一瞬で通過し、胃へと入っていった。


「フフ、気に入ってくれたみたいで良かったわ。まだまだあるのよ。

 あなたの為のりょうりですもの」


「こ、こんな美味しいモノ食べた事ないよ」


「人は避けるものだから、でもね、私達にとってはそれが

 普通なの、、だって、美味しいでしょ?」


「うん!!とってもおいイタッ!?」


ガリッと何か固いものを彼の奥歯が思いっきりかんでしまい、

口の中に鉄の味が充満し始めた。


「ご、ごめん、何か変なのが入ってたようで、、んっ」


口をモゴモゴさせて、舌の上にきたソレをルーカスは

指でつまむと、シミ一つないテーブルのシーツの上に置いた。


「指輪?、、、」


唾液とパイのソースで濁った指輪は、鈍い光を放ちながら

蝋燭の中でチラチラと輝いている。

そして、ルーカスの顔は一気に青ざめ、口はがたがたと

震え始めた、その目は、大きく見開かれ、毎日見ていた

指輪を凝視した。


「これは、、」


「あなたの為に準備してきたのよ。フフフ」


いつの間にか、バーバラの前の食事はすべて消えており、

ルーカスが吐き出したものと同じ指輪を彼女は

口の中でコロコロと転がし遊んでいた。


「これを結婚指輪にしましょ。素敵でしょ?」


「僕は、、、食べた、、」


「えぇ、とっても美味しかったわ。今日のは特に」


吐き出したいと一瞬考えたが、あんな美味しいもんを吐き出すなんてという

ありえない思考がすぐさま猛反対し、そして、死人のような顔で

涙を流しながら、ルーカスはフォークを手に持ち、パイを食べ始めた。


「フフ、、美味しいでしょ?あなたの為に用意したんだから、、

 大好きよルーカス。これで、あなたは私と同じ、私とあなただけになったのよ。」


時がやみの時を告げる中、屋敷の中では永遠に晩餐は続き、

カチャカチャとフォークとナイフの音と、可愛らしく笑う

女性のこえがきこえていた。


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