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ところで騎士養成機関とは一体どんなものなのか。

半年通ってわかってきたことをとりあえず確認したいと思う。

残念なことにこの機関、小説では王女が3年ほど通ったとしか書かれておらず、田舎では内容がさっぱりだったので、存在する事しか僕も知らなかったんだよね。


そうだ、王女いるんじゃん。

って思って探したんだけど、王族が入ってくるのは3年生、12歳からと決まっていて、まだ同級生として彼女は存在していなかった。

なので情報収集程度しか今のところ出来ていない。


話を戻そう。


騎士養成機関は、文字通り騎士を育てる学校のことである。

ちなみに神の職業的な意味ではない。

王族に仕えるという意味での、騎士の育成機関だ。


まあ端的に言うと、学校である。


特徴としては、なんらかの形で王族に仕えることになるだろう職業持ちを集めている、ということかな。

つまり国営機関であり、10歳児にある程度の職業を天命として受けた人間ばかりが集められている。

一応拒否権はあるのだが、レスみたいにレア職業であるとほぼ強制となるのは言ったとおりだ。

そう、この世界、職業『騎士』はかなりのレア度なのだ。


職業の進化には二種類あって、神に信託された職業クラスが10歳時に発生。

その後、5年ごとに神託としてクラスチェンジが行われる。

最初村人と信託されていても、長年門番を勤めたり傭兵をしたりと行動によって職業が変わるのが通常だ。

つまりこの育成機関は『最終目標として騎士を目指す』機関、ともいえる。

ちょうど卒業年度が15歳なので、その年のクラスチェンジで希望する職業に転職し、華々しく就職先を決めるというのが王道となる。


ただ、この積み重ねによってのクラスチェンジは、神の意向を真っ向から対立するゆえか、なかなか起こらないというのも現実だったりする。

上位職業になるならまた別なんだけどね。傭兵→兵士、とか冒険者→探究者、とかね。


その点レスは序盤のクラスチェンジもふっ飛ばして騎士なので、その上位職である聖騎士や、王を守るとされる近衛騎士、守りに特化した守護騎士なども狙えるとされている。

彼の育成に力が入るのも道理だ、という話だ。

彼の育成度合いによっては勿論機関への補助も増えるし、15才時に転職していなくても騎士という職業はそもそもが花形なので問題はない。



で、まぁ。

僕が知っている情報的には彼、20歳で近衛騎士になるんだよね。

英雄じゃないんだ?

というと、名言がありましてね。


『俺は貴女を守れる騎士でありたい』


という、そういうね、女子が大好きそうな台詞によって英雄になることを選ばずに女王を守る騎士になるんですよ最終的には。

くっそ、滅べイケメン。

似合いすぎてぐうの音もでない!


で、まぁ。

王族に仕えるという意味での機関であるわけだから、当然王族も通うことになっているわけで。

正妃から生まれた王位継承者第一位の王女はまだ10歳だからここにはいない。

だけどね。だけどね。

いるんだな、一人。今年13歳になる王女が、この国には。


「レステリオ様ぁ~」


なんて、甘い声で追いかけまくる、王女が。


「げっ、また来た」

「王族に対しての台詞じゃないよレス……」


でもってこの王女、原作でもレスが大の苦手な『悪女系王女』だったりする。

悪役でも正統派なら僕は好きだったりするんだけど、この王女はまぁ少女小説ゆえなのか、横恋慕上等のびっち系で僕も苦手である。

当然ながら、能力もヒロイン王女以下。

男に媚びるのが得意で、側室の娘とはいえ母の身分も高く、第一王女であるがゆえに障害として立ちはだかる女性として不人気を誇っていた。

まあ、それが狙いですから! と一部のコアなファンには人気があったんだけどね。スタイルは抜群系だし。

悪落ちエンド的な大人向けのヒロインだったね。閑話休題。


「マウレーネ様」


ひっじょうに嫌そうにレスが王女の名前を様付けで呼ぶ。

さすがに機関内では身分は関係がないとはいえど王族は別なので、僕は少しだけ場所を下がってマウレーネが横に来る場所を開けてあげた。

ちなみに前、レスの横にいつも通り突っ立っていたら思いっきり怒られたので、自衛措置である。

決して関わりたくないよとか思ったわけではない。

なんで離れるんだよ、とレスはさらに不機嫌になるがこのくらいはやっておかないと風当たりが強すぎる。


「もうすぐ実地訓練ですわね! レステリオ様は初めてですけれど、意気込みはどうですの?」

「……」

「レス。返事」

「……順調です」


それ、返事じゃないよレス。

と思いつつ、僕は内容には口を挟まず見守ることにした。

僕が促さないと返事すらしないことをマウレーネ王女も気づいているので、僕がいる事にも反応が薄いことにも不服そうにしながらも、彼女は彼の態度には突っ込まない。

ひたすらに愛想を振りまき、少しでもレスの返事を引き出そうと媚を売る。


まぁ、媚を売るといえども、原作時の18歳とは違って年齢ゆえか、ごく一般の口説き程度のかわいいものだ。

そういえばこの王女、いつからびっちになるんだろ?

登場時にはすでに権力者に身を売っていた、みたいなほの暗い描写があるので、王族の闇は結構深い設定だった気はする。

あんまり興味がなかったので読み飛ばしていたけれど、確か側室の王女ゆえにヒロインと違い扱いがあまりよくなく、自分の身一つで身を立てようとしたために……とかそんな裏設定だった気がする。


まあ、ぶっちゃけ興味ないけど。


使っている権力は身分程度のモノだし、僕を引き離そうとするとレスが返事すらしなくなることに気づいてからは彼女は僕をどうこうしてから話そうとはしていない。

だから僕は特に彼女を排除しようと強く思ったりはしないし、逆に積極的に関わりたいとも思わない。


ぶっちゃけレスと仲良くなりたいなら僕と仲良くなった方が早いと思うんだけどね?

ただひたすらに、騎士レスという存在だけに固執する彼女は、レスが生身の人間である事すら気付いていないのかもしれない。

そしてレスは、そんな彼女だからこそ無意識に嫌悪を感じるのだろう。


「そ、それでですね、その、PTはどうなされますの?」


ようやく本題に入るのか、緊張気味にマウレーネ王女がレスに訊く。

レスは興味なさそうに首を振ると、明らかに拒絶気味の顔でマウレーネを見据えた。


「とりあえずは初年生だけで組む――組みます」

「えっ!? レステリオ様でしたら、上の学年との人間といくらでも組めますでしょ? 実地訓練は怪我も伴いますし、ヒーラーがいなければ深い場所にはいけませんわ! 今年の初年生にはヒーラーはいませんでしょ? ですから良ければヒールも使えるわたくしと――!」

「いやです」

「ちょ、レス」


あまりにもバッサリ切る親友に、さすがの僕も口が出る。

いや、うん。

本当に嫌なんだろうけど、さすがに相手は王族だから断り方を考えようよ、という話だ。


「ど、どうしてですの? 初年度生は身の安全のために上の学年の人間と組むことは、推奨されていますのに」

「俺は、自分の力で動きたい。それにコタがいるから怪我なんて問題ない。だから、上の学年のどうしようもないやつらとは、組む気なんてない。――ない、です」

「で、ですから私が一緒にいれば、ヒールが……」

「あなたと組まなくても俺は、問題ないので。ヒールなんていらないです」

「……」


ぐうの音も出ない程拒絶され、はくはくと口を開け閉めする王女を放置して、レスが颯爽と歩きだす。

そんなレスを放置するわけにもいかないので追いかけると、レスは眉間にしわを寄せて全身で彼女を拒絶していた。

……僕がぼーっとしている間に、何かあったのだろうか。


「レス、さすがに断り方酷くない?」

「酷くない。あのくそ王女、あからさまにコタを無視しやがって……」

「……」

「俺を誘いながら、衛生兵を兼ねてるコタは誘わない気満々だったから、腹立った」


いや、うん、そのね?

衛生兵もそれなりに貴重だから、ヒーラーと組む=僕と組めないのは、暗黙の了解だって知ってたけどね?

さすがに穿ちすぎじゃないかなそれはとお兄さんは思います。

まあ、いやにヒール使える事に拘るなとは思ったけどさ。


ちなみにあの悪役系王女、ヒーラーです。割と有用なレベルで。

妹のヒロインの王女様はクラリーネというんだけど、彼女はヒーラーというより、上位の聖女である。ヒールも使えれば攻撃魔法も使えちゃうというビバヒロインな光魔法の使い手だ。

つまり有用なんだけど物語的にはマウレーネ王女、やっぱり雑魚キャラである。


ちなみに王子は王女が20歳になってから生まれるんだったかな?

それでひと悶着あったはずだし、今のところ原作と違って王子がいますとかそういう事はなかったはずだ。

そもそもこの国の王様、忙しいのかなんなのか、子供少ないんだよね……。

王の暗殺未遂で王の代行になったりと、ヒロインはなかなか波乱万丈な予定である。

実際にそんなことが未来に起こるのかは別として、ね。


「でも実際、ヒーラーがいるいないじゃ、かなり効率は変わるけどいいの?」

「いい。大きい傷なら自分で治すし」

「……まぁ、そうなんだけどね」


レスは物語内でもそうなんだけど、自己ヒールが使える。

小説内では一人きりだったから必要に駆られて(死にかけて)覚える――ことになっている。

騎士は基本防御特化だから光魔法が使えてもおかしくはないんだけど、一人じゃない現状何故使えるかって僕がヒールを使えないからだよ!

もちろんポーション的なモノを使っての治療に効果が高くなる衛生的なスキルはあるけど、基本こいつは自分一人で何でもできる子になっている。


でも、基本は回復は僕任せだ。

レス曰く、僕が出来ることは僕に任せる、らしい。

まぁ僕が散々、MPは有限なんだから僕が出来ることは僕がやるからって初期に言ったせいもあるんだろうけどね。

僕のいう事なら何でもそのまま受けれいてしまう親友である。


「それにあのマウレーネ王女にはかかわりたくない」

「え、でも王族だけど?」

「他の子がいい」


他の子ってやっぱヒロインなのかなぁ、と思いつつ。

僕はその発言を聞き流した。

結構後から考えると、重要だったのかもと思うことがなくはないのだけど。



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