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僕の目の前には通知書がある。

何度見直しても、文字は同じ。

右の者、騎士育成機関への入学を許可する。

そして名前の段にあるのは、親友の名前ではなく―――――僕の名前。

アルハ村のコルネスタ、と。



「なんでだよ!!!!!」

「うわっ!? なに!? もうついたの!!!」



僕の叫びにがこり、と馬車が揺れ、隣でうつらうつらとしていたレステリオが跳ね起きた。

寝ぼけているのだろう、キョロキョロと見回すその姿は間抜けそのものだ。

間抜けなのは間違いなく意味もなく叫んだ僕の方だろうが。


「何度見ても納得がいかない」

「コタ、まだいってんの……」

「納得いかないだろ!? 僕が戦闘能力が皆無であることはわかるはずだ! なんで許可が下りるんだ!」

「知らないよ~~」


馬車の中にいるのは僕とレステリオの二人。

騎士の職業を得たレステリオが騎士育成機関へ送還されるのは、僕にとっては予定調和で何も問題なかった。

問題があるのは、何故僕まで一緒にここにいるのか、ということだ!


「詳細がわからないけど、戦闘系である事は確かだって認定されたんだから仕方ないじゃん……」

「戦闘系っていうのも、はなはだ疑問だけどな……!」

「えー……」


眠いのか目をこすりつつ適当に答える親友に殺意を覚えつつ、僕は昨日の儀式の内容を反芻する。

騎士を得た彼が喜び、皆に祝福された――ここまでは、全員の予想通りだった。

予想が外れたのは、僕の職業を見た神官の一言であった。


「これは――……」


言葉を詰まらせた神官に、嫌な予感がよぎったのは本当だ。

それこそ賭博師とかろくでもない職業が来るのでは、と考えたのは一瞬。

僕は次の言葉で盛大に固まってしまった。


「……何の職業なんでしょう?」

「はぁ?」


神官がいう事に欠いて、何の職業でしょう、って。

僕が聞きたいよ!

ちなみにレアというか、英雄候補的な職業は強い光に祝福される傾向がある。

隣のレスはまさにそれで、光に包まれた彼に神殿の人は総出で祝っていた。


その横で、これである。

僕でなくても何言ってくれてるの、という反応になってもしかたないのではなかろうか。


「……どんな職業名なんですか?」


辛うじて言葉を出した神官に、僕は自分に冷静になれと唱えつつ訊く。

そしてかえって来た言葉は、と言えば……。

これまた予想外なものであった。


「……コマンダー、と」

「こまんだー??」


コマンダーってあれだよね?

指揮官とか司令官とか、なんか作戦を動かす人のことだよね?

何でそれが何の職業なんでしょう、になるんだろう?


首を傾げる僕の前で、神官も首を傾げる。

曰く、聞いたことがない職業なのだ、と。


「聞いたことが、ない……?」


既存以外のレア職業であっても、大きな光に包まれれば神の祝福があるとされて祝われる。

だが、僕に関しては至極普通の光であったにも関わらず、レアな職業名だったために困惑にいたったようだった。

いや、僕も困惑だよ。

何でコマンダー? レア職なの?


「ええと……職業の情報って自分で見れましたっけ……?」

「スキルは見れると思いますが……」


転職したてでスキルなんてあるわけないですよね知ってた……。

ちなみにステータスは神殿の鏡で見れるんだけど、さっき見た限りではすごく一般的なステータスだった僕である。

尚、レスは頭脳(つまりInt)以外は高い脳筋でした。しってたけど。

僕はIntは高いけど魔力(MP)が0なので、単に頭が良いだけのステータスは体格のいい同い年の子以下の職人系ステータスだった。多分なっても学者か研究者な感じの。


「……」

「……」


困惑する僕ら二人を置いて、祝福され真ん中で笑っているレス。

そもそもステータスで神官割り振られたのに、職人系じゃなくて戦闘系の光が発生したのも神官の困惑の原因だったわけだが……。


微妙過ぎる光景のまま、僕は神官にお礼を言ってとりあえず引き下がったのだった。



そして翌日である今日、僕はレスを置いて帰ろうとしていたところで足止めを食らった。

曰く、レア職業であることは間違いがないので、一応育成機関へ送ろうという事になりました、と。

戦闘系のステータスじゃないのに!?

と思うけれども、祝福の光がどう見ても闘いの神様だったため、一応戦闘系だろうと判断されたとのこと。


そりゃぁね!?

コマンダーって言ったら、多分戦闘系だと思うよ?

僕自身に戦闘技術なんてゼロだけどな!!

茫然とする僕の横で、すんごく喜んだのはレスだった。

これからも一緒だな! とにっかり笑ったレスの脇腹に、思いっきりボディーブローを入れた僕は悪くないと思うんだ。

ダメージを与えなさ過ぎて首を傾げられたことを含めても!




関わりにもうならないはずだったのが、どうしてこうなった!!!



そんな嘆きの僕を乗せて、馬車は一路王都へ向かうのであった。

不本意だ……。



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