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場面で振り分けたので1話の文字数がバラバラですが、ご了承ください。



「まずかったかなぁ……」

「ん? 何が?」

「何でもないよ。ほら、まだまだ順番先なんだから座る!」

「えー……落ち着けねーよーぅ……」


うろちょろと歩き回ろうとする親友レスを押しとどめつつ、僕は物思いにふける。

あの後帰宅し、すぐ寝てしまったので結局神殿に来るまでろくに考え事は出来なかったのだが……。

ここにきて、僕は不安に駆られてしまった。


僕が就く職業に関しては正直どうでもいい。

この身体はあまりにも小さいし、せいぜい内職系か、上手くすれば職業人系だろう。

間違っても騎士にはならないだろうから、この先レスと一緒の道は断たれる。

だから、そのあたりは心配していない。


問題は、むしろこの親友の方なのだ。

本来、この男はこれから5年森に篭って強くなってから世間に現れるのだ。

血の吐くような努力と孤独の末に手に入れた強さで、王女を守る騎士になる。

ある意味正規の手順を踏まなかったからこその強さで、彼は伴侶に出会う訳だ。


……めっちゃ邪魔したよね。

むしろ、やっちゃいけないレベルでフラグ折ったよね!!!


原作ファン(?)としては親友の苦悩部分も含め人間味あふれるそのキャラが好きではあった。

だが、これからわざわざ裏切るとかして親友を追い詰めろと言われても……正直出来る気がしない。

親友は鈍いけど、ここぞという時には見誤らないような直感の持ち主だ。

僕が挙動不審なことをすればすぐ気付くだろうし、ましてや嫌いだとかそういう話になったら……それはもう暑苦しいほどにかまわれるのは目に見えている。

そんな無駄なことをする気がまず起きない。

後、殺しに行くとかふりをするとかももう無理だ。嫉妬心で殺せるとか、それこそ子供だから出来るのだ。

僕は身体こそ10歳だけど、生前は一応成人近くまで生きている。挫折だってしたし、叶わないことがあるってことだって知っている。


無理なのだ早い話が。

嫉妬で人を殺せるって、それ、どんな殺人狂なんだよ!

ってレベルなのだ。

人間、理性は大切。マジで。


「まーだーかーなー」

「まだ3人しか進んでないよ……」


コタとして生きている10年間が消えたわけじゃないから、嫉妬心だって消えているわけじゃない。

でも、僕の親友は良くも悪くもまだ子供だ。

そして今の僕は知っているのだ。

親友は僕が大好きである事を。


小説の中でも、よく陰りを出すシーンがある。

『よく川で魚を取ったんだ』

『悪戯ね……よくしたよ。あの頃が一番楽しかったかな……』

『よく怒られたなぁ。お前は一言多い! って』

本心から寂しそうに告げるその心は、それがとても楽しかった思い出ということ。

で、この内容はガチで僕との思い出なのである。さもありなん。

ガキ大将だけど、常に親友の僕がいないと遊ばない子だからな、こいつ。まぁ同い年の子は尊敬してるのか怖がっているのかわからないけど同列に見ないから、まともに目を見て友だちとして話すのが僕だけだってのもあるんだけど。

ちなみに舎弟は老若男女問わずいる。


「お、あの子戦士だって。いいなーいいなー」

「……」


最初の職業は生まれた時から決まっているという。

だからお前の職業は間違いなく騎士で、僕はそれ以外なのだ。

能天気に戦士にあこがれる彼を見ながら、僕は考えることを止めた。


だってついていけるわけじゃないし、考えても仕方ないじゃないか。

親友として、僕は彼を見送る事しか出来ない。

これからの人生、前世を思い出す前の僕に狂わされる筈だった人生より結果としてはしょぼいものになるのかもしれないけれど、こいつは実際を知ったらきっとこういうのだと思う。

選べるのなら、僕と仲が良かったままの人生を選ぶ――と。


「……よし、次だ!」

「はいはい、いってらっしゃい」


少しぼんやりしすぎたのか、気づけば親友の番だった。

光の中に歩いていく親友がいる。

もうすぐ歓声をあげるだろう彼を見守りながら、僕は別の神官に職業を告げてもらうべくすぐ横に歩き出したのだった。





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