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気まずい。

沈黙がすんごい気まずい。


「……」


レスが僕をどうこうするとは思っていないので身を任せたのだが、肩に担ぎあげられたまま疾走されるとは思わなかった。

そりゃあ、僕はたいして成長してませんよ?

そりゃあ、レス君は小説内再登場時のように筋肉も程よくついた細マッチョになってるよ?


荷物運びってどうなんだろ。

いや、お姫様抱っことかされてたらその場でしばき倒していただろうけど。

むしろその方がレスの暴走を止められて良かったかもしれない。


僕の体重なんてものともしなかったのはわかるけど、なんで逃避行しちゃったかなぁ。

自分でもなんでそんな行動したんだかわかりませんみたいな顔するの止めてくれる?

気まずすぎて次の言葉が続かないよ。


「……えっと……コタ?」

「何?」

「……幽霊?」

「死んで無いよ!!!!!」


あ、良かったとか呟くなよ。

お前の成長っぷりからしたら微々たるものだけど、僕だってちゃんと身長伸びてるからね……!

だって目線があんまり、とかぼそぼそいうな。

目線があんまり変わらないならそれなりに伸びてるだろうがそれは!


「……そっか、俺がコタ以上に伸びてるのか」

「結論としてはあってるけど腹立たしいから殴っていい?」

「いいよ」

「……いや、そこは断ろうよ」


その手があったか! みたいに納得しないでくれよ。

殴らなくても現実と気付け。


「そういえばさっき……エルフと一緒にいた?」

「ファルのこと? うん。僕一人じゃ神殿までの道のりはきついからついてきてもらってたんだ」


そこからなんでエルフと一緒にいるのか、から始まりようやく僕は事情を説明することが出来た。

連絡が何故取れなかったのかも、レスに会いに神殿に来たことも。

レスは最低限しか言葉を発さなかったが、ようやく僕が人間の世界に復帰したばかりだと分かったらしく、ようやく溜飲を下げたらしい。

別に僕は君を好きで放置していたわけじゃないからね?

だからファルに対して闇討ちしようみたいな目で見るの止めてね?


ってかファルいつの間に追いついてきてたの!?


「コタ、説明終わったー?」

「終わったけどいつからいたの?」

「ん~……ちゃんと後ろから追ってたよー? だから結構前からいたー!」


そういえばこいつ、いつも騒がしすぎて忘れるけど狩人だったっけ……。

狩人は名前から連想できる通り、追いかけるのに関しては他に追随を許さない。

恐らくかっさらわれた時点でマーカーか何かを僕につけていたんだろう。

……ファルのことだから常時つけているかもしれないが。

コタは抜けてるから心配だし~とか言いながらやっていそうな気がしないでもない……。


「さっきからいるのは気付いてたけど、コタの知り合いだって話の途中でわかったから放ってた」

「あ、そう……」


気付かないのは僕くらいなんですね知ってた。

まあ、狩人だから気配も殺せるし、仕方ないと言えば仕方ないんだけどね……。

それに気づけてしまうレスも、騎士だってことだろう。

騎士は防御特化だし、不意打ちに関しては確実に迎撃できるスキルを持っている。

スキル的にはこの二人、水と油なのだ。


「ところでさっきの王女様? とかが探してるっぽいけど、ここでずっと話す気ー?」

「えぇー……そうなんだ。めんどくさいなぁ……」


あの王女、ってきっとマウレーネ王女だよねぇ。

今調べた限りではまだ2,3kmはありそうだから見つからないとは思うんだけど……正直あの土下座タイムを見た上で、諍いの当事者らしき僕登場とかやりたくない。

むしろ会いたくない。

全力で色々拒否したい。


「会いたくないし……神殿が開くまではまだ数日あるから、1回帰ってもいい?」

「わかった。道に出ると面倒だから森から行くぞ」

「え、ちょっと待って? レスは彼女放置したらまずいんじゃないの?」

「そもそも俺は来いなんて言ってない。早目に行って人がいないうちにクラスチェンジして帰ろうと思ってたのに、読まれてたのか待ち伏せされてただけだ」


それもどうなんだろうか。

騎士は確かに王族にとって貴重な職業ではあるけど、クラリーネ王女もいたからそれだけじゃない気はする。

レスは待った方がいいのではと提案してみるが、レスはついてくる気満々のようでさっさと森へ行くことが決定してしまった。

ファルを振り向けば、オッケーとばかりに弓に手をかけている。

あれ? おかしいよね?

道に行かないのもおかしいけど、提案が決定になってる気がするのは気のせいかな?

ってかエルフで人とかかわりはないといえども、王族総無視する僕らってどうなの?


「アンタ獲物は弓か?」

「うん、狩人だよ~。コタと連携は出来るからきっと君とも問題ないと思うけど、何か嫌なことがあるなら言ってねー!」

「コタと? いや、それなら俺も問題はない。道は知ってるから俺が先行する」


問題ないんだ!?

何が通じているのかさっぱりわからないけどそれで問題ないんだ!?

僕との連携ってそもそも存在しない気がするんだけど気のせい?


「はいコタは真ん中ねー」

「コタ、疲れたら言えよ?」


前衛レス、中衛僕、後衛ファル。

あっさりと決められた即席のPTは、明らかに僕を守る布陣である。

そして彼らは特に呼びかけもなく各個撃破で魔物を斬り、射し、さくさくと森の中を進んでいくのであった。



……あれ? やっぱりなんか僕の位置おかしくない?




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