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「いやあ。愛されてるねぇコタは」

「うっさいよ」


結局オットーさんが帰る頃になっても離れてくれなかった母は、今は夕飯を作りに台所にいる。

父は父でファルにエルフの里の話を聞きながら、時々僕を撫でていた。

基本的に寡黙な父は対話にならないので、おしゃべりなファルがいて助かった、と思う。

台所から時々母の茶々が飛んでくるので、母は母でちゃんと聴いているのだろう。


なお、レスを探しにはいっていない。

何故ならレスは森の奥に行ったまま帰ってきていないからだ。

レスを母があまりに気にするので、近くに来たらスキルでわかるんだよと言って納得させた。

本来ならなんでわかるのとか聞いてきそうなものだが、昔からわかりやすいレスの位置はスキルがなくても大体想像ついてたからな……あっさりと納得されてしまった。それもどうなんだ、という話だが。


「しかし夜になっても森の中とか、何してんだろレス……」


どうせ数日中には神殿内で会うだろうとはいえ、できれば帰ってきたことを伝えたい。

あの後いったいどうなったのか。

そしてマウレーネ王女とはどうなったのか。

後本音で言えばヒロインとはどうなっちゃってるのか詳しく教えてもらいたい。

暗い顔をしていたというわりに、僕への忠義があがってる謎現象が何由来なのかが気になって仕方ないんだよ!


「レス君、帰って来そうにないのかい?」

「うん、動いてはいるみたいだけど村には戻ってきてない」

「そう。じゃあ仕方ないねぇ」


レスのことは気にしつつも、客人がいる手前それ以上のお小言はない。

僕は久しぶりの実家の夕食に舌鼓を撃ちつつ、のんびりと夕飯を食べたのだった。







「あ。神殿に移動してるっぽい……?」



2日後。

相変わらず森から帰ってきていなかったらしきレスの位置が変わったので確認してみたら、どうやら神殿へ移動を開始したようだ。

今はもうパッシブスキルの範囲内だからオンにすれば僕がいることを伝えられる、と思うが……。

どうかなぁ……。

移動だけだと魔物と戦う訳でもないし、気づかないかもしれないんだよな。


そんなことを思いつつステータスを見ると、表示が変わっているところがあった。


「? 王女が二人とも範囲内だ」

「王女様? ああ、レス君が騎士として正式叙式とかで、確か王族の方々も来てらっしゃるよ」

「え? そうなの?」


割と田舎に近い神殿だというのに、騎士という職業は王族を呼んでしまうくらいのレア職らしい。

まぁ、知ってたけど。

15才は成人と一緒だから、機関の卒業後を含め、正式に叙任式を行うって事なのかなぁ。

神殿で行うのは万が一にも職業ダウンがないかを確かめる意があるってことだろう。


本当にごくまれだけれど、職業はく奪になる場合ってのもなくはないんだ。

殆どが犯罪者か、何かしらの理由で職業を放棄したいと考えたい場合だけで、通常はありえない。

ありえないけれど……。


「……何でかいやな予感がするんだけど、気のせい、かなぁ?」


ずっと村に帰ってこないレス。

何故か二人も来ている王族。

繋がる線は全くないけれど、なんとなく僕の勘が告げている。

急いだ方がいいと。


「ファル」

「なんだーい?」

「落ち着かないところ悪いんだけどさ、ちょっと早めに神殿に行きたいから付き合ってもらえない?」


神殿までの行程は、この時期は人通りが多いので危険なことは特にない。

腐っても戦闘訓練をそれなりにやっているので僕だけでも多少の荒事は問題ないはずなのだが、人が多いが故によわっちい旅人がいたりすると声を掛けられたりすることもあって勧誘などは断るのが面倒なのだ。

人通りが多いというのは別意味でめんどくさいモノである。


その点一応成人しているように見えるファルがいれば大体問題なく済むはずである。

エルフで美形だが、まぁ戦闘力は僕の比じゃないし基本的に器用だから人と争うこともないしね。

言葉はあれだが、騙してくるようなタイプは僕が何とかすればいいだけだ。


「ん~? ああ、コタ、クラスチェンジの時期だっけ?」

「うん」

「おっけ~。いいよ~。おかーさーん、ちょっとコタ連れて神殿まで行って帰って来ますね~!」


何故か2日で僕の家になじんでしまったファルは、何故か普通に母をお母さんと呼んでいる。

そしてそう呼ばれるのがまんざらでもないらしき母は二つ返事で了承してくれ、手厚いお見送りを受けながら僕はファルと神殿へ出発した。

なんでか実の息子が毎回蔑ろな気がするんだけど、気のせいかなぁ。

微妙な顔をしてると父が撫でてくるようになったので、何か理由はあるのかもしれないとようやくわかったけど、納得は行かずに僕は膨れたまま歩き出したのだった。



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