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僕はスキルの欄をじっと見つめる。

ここ数か月、表示は変わっていないはずだった。

筈だったんだけど、なんか見慣れないものがある。


『コマンダー特殊スキルLv1』

-戦闘経験数累積100件によりlv1解放

-戦闘力付与―パッシブ(OFF可能)・条件付き・範囲:自分以外・1㎞平方


『条件付き

 -コマンダーに忠誠を誓っている者

 -レベルにより上昇、忠義心の度合いにより距離・強度変化

 -騎士・レステリオ(忠義100(MAX)) 1割増・範囲3km平方 範囲外

 -治療師・マウレーネ(忠義40) 範囲3km平方 範囲外

 -狩人・ファルストに能力発動中 (忠義20) 範囲2㎞平方』


「はぁ?」


思わず声を出して見つめてしまう。

なんか二人、範囲増えてるんですけど?

今一緒に狩りをしてるファルはともかく、なんかありえない名前が見えるんですけど?


「なんで王女が忠義対象に入ってるの……」


さすがに100ではないけど、40って結構数値高いんじゃないだろうか。

というか数値が問題なわけではない。

何で僕、王女に忠誠を誓われてるのさ……。


忠義って、意味合いが実は少し違うのかな?

信頼とか、信用とかその辺であれば何とかわかるような気はする。

分かるような気はするけど……何故あの話し合いでそうなったのか。解せぬ。


「コター? 何かあったのー?」

「あ。何でもないよ、ファル」


罠を仕掛けながら振り向いたエルフの青年に、僕は身振りで何でもないことを伝える。

なんとなく、なんとなくだよ。

コタと一緒にいると身体軽い気がするんだー、というエルフの青年の発言を聞いてもしかしてと思ってステータスを確認しただけだったんだ。

王女の名前があるのは想定外だった。


ちなみに現在、僕の目の前にいるおっとりした青年は、ファルストという。

そう、小説内でレスに無理を言って街へ出かける相手となるはずのこの青年は、人間に対して超友好的だった。

相手が11歳の僕でも、人間ってちっさいんだねぇ! とか言いながら、狩や遊びに付き合ってくれる程度には。

そしてその友好的な態度は普通に嘘偽りないものだったらしく、友達だよねー! という彼には何気に僕のパッシブスキルが働いていたのであった。


まあ、別に僕にデメリットがあるわけじゃないからいいんだけど。

20ってことは、それなりに友好的って事だと思うんだ。

それ以上の忠義数値をたたき出している王女のことが気になって仕方ないけどね!?


「罠かけ終わったよー」

「了解。罠これで全部?」

「うん。後は昨日掛けたのを見回りに行くぐらいかなー」

「何かかかってるといいね」


エルフの隠里は、基本的に人が来れない森の奥にある。

ある程度のところまでは年長のエルフが魔物や動物を間引いているので危険はない。

街へ向かおうとすると魔物の巣窟へ突っ込む羽目になるので、それこそ川ぞいを上るだけでも戦力が必要になるわけだが、僕はそんな無謀なことをチャレンジする気は全くなかった。


結果、子供のお手伝い程度のことをする毎日である。

ま、実際子供だからいいんだけどさ。

よっぽどのことをしない限りは怒られないし。


僕が出来る事と言えば水汲みのお手伝いとか、ファルストの罠にひっかかった獲物を運ぶお手伝いとかその程度であるわけだが、子供が殆どいないエルフの里ではちまちました僕が珍しいらしく、結構いろいろお手伝いに声がかかる。

まぁ、大人じゃないしね。

僕、年齢の割に身体が小さいから、小さい人間と大人は別って扱いになったみたいで、なんだかんだ村にいたころと同じように遊べる快適な日々を過ごしていた。






僕はステータス欄を見つめる。

1か月に1度は見ることにしているステータスは、相変わらず発動中の文字が一つしかないからレスが探しに来ていないことだけはわかる。

まあ、探そうと思ったって13歳の子供じゃあ無理な距離なんだけどね。

あいつなら不可能を可能にしそうなんだよな、と思ってしまうのはなんでなんだろうね。


そんなわけで僕のステータスのある文字は、今はこんな感じ。


『条件付き

 -コマンダーに忠誠を誓っている者

 -レベルにより上昇、忠義心の度合いにより距離・強度変化

 -騎士・レステリオ(忠義100(MAX)) 1割増・範囲3km平方 範囲外

 -治療師・マウレーネ(忠義55) 0.5割増範囲3km平方 範囲外

 -狩人・ファルストに能力発動中 (忠義40) 範囲2㎞平方

 -聖女・クラリーネ(忠義10)

 その他 若干名』


うん、ちょっと待とうか。

レスが布教してるのか何なのか知らないけど、王女の忠義が微妙に上がってるの気になるんだけど!?

そしてなんで会ったことがない名前があるのかなー!?


しかもクラリーネって。

ヒロインじゃん!

むしろ世継ぎの王女じゃん!

何で僕は忠誠を誓われてるのかなー!?

レステリオ君は一体何をやってるのかなぁああ!?


ちなみに10以上になると表示されるみたいで、その他ってのも気になる。

若干名、ってバイトの募集じゃないんだから変な表示しないでよ……。

潜在的に、ってことなのかなぁ。

ホント何をしてるのレス……。


「ああ、でも王女に会ったってことなのかなあ、これは」


レスのことだから、僕がいない=機関から抜け出すとかあるかもと考えていたから、それは良かったのかなと思う。

僕が川に落ちて早2年。

13歳になったレスは、機関内できっと王女に出会ったのだろう。

1年もしないうちに何を布教したんだろうとそっちの方が気になっちゃうけど……。

案外マウレーネ王女がヒロインに話したとかそういう感じだったりするのかな?

とりあえず僕に悪感情がないってことは、仲が極端に悪くなったとかそういう事はないと信じよう。


……恋愛に発展しているのか、まずそこが疑問だが。


そしてエルフの狩人のファルだが、まぁ順調に忠義は育っている。

というかこの人、いい人過ぎてぶっちゃけ頭弱いんだよね……。

考えるの苦手でごめんねっ! って言いながら僕に罠を仕掛ける場所とかまで最近決めさせてるもんね。

駄目な脳筋が増えたとしか思えない……。


獲物は分けてもらえるし、成長期ということで僕も結構食べるから持ちつ持たれつということで見ないふりしてるけど……そのうちレス並にうっとおしくなったりする気がひしひしする。

そりゃあ、レスとも相性いいよこの人。

裏表なさ過ぎるもん。人間不信なんてものともせずレスと仲良くなる姿が好青年な容姿と相まって人気だったけど、実際付き合ってみるとただの脳筋族だよ。能天気族でもいい。

腕は確かな事だけが救いだね。


まあいっか。

ファルはちゃっかりしっかり者の彼女をいつの間にか手に入れてたような覚えがあるし。

興味がなかったし途中からエルフって事で物語の中心からはフェードアウトしちゃうから詳しくは書かれていなかったけど、彼はきっと面白おかしく人生を歩むはずなので、ここを出るときまで普通にお世話になろうと思う。


ところで僕、いつ帰れるのかな……。

5年に1度くらいは冒険者が迷い込むこともあるらしいので、それに期待してるんだけど2年たっても影も形もないし。

はあ。

レス、本当に迎えに来てくれないかなぁ……。

この感じだと、本来レスが迷いこむ日時になっても誰も来ないんじゃないかなという思いすらするよ、僕……。




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