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「……悪運ある子じゃのう」



目覚めて第一声、しゃがれた声が僕にそう言った。

声の割には、目の前にあるのはまだ中年ぐらいの女性の顔。

だが、その女性の耳だけは、僕が良く知るものとは違う形をしていた。


「……えるふ?」

「そうさな、人間の子。エルフの隠里に、ようこそ?」


疑問形で歓迎の意を示した女性は、何でもない事のように――現在地を、僕に告げた。








ということで僕は、エルフの隠里に流れ着いてしまったらしい。

マッピング機能、もう壊滅的だけど僕は知ってる。

ここ、だいぶ森の奥だわ。

だって小説内で出てくるもん。


孤独に森の中でひたすらさまようレスに、もたらされたエルフとの交流。

物語の再開はエルフの隠里から始まる。

怪我をして力尽きたレスを、エルフの長老が拾い――そうして人とまた、彼は向き合うことになるのだ。

人間の世界にあこがれた若きエルフを、人間の世界へ連れていくためにレステリオは人間の街に戻ることになる。


ただし現状から行くと4年後で、拾われるのは僕じゃなくてレスのはずなんだけどね!?

どうしてこうなったんだよ……。


「ふむ、つまり川に足を滑らせて流されたと」

「ええ、まあ」

「王都からきたのかえ? 北には途中に滝もあっただろうに、良く生きて流れ着いたものよなぁ……」


しきりに感心するエルフのばぁちゃんだが、まぁ僕もよく生きていたなと思う。

たぶん11歳にしては軽いし、失神していたことで水も殆ど飲まずに流されたんだと思う。

速攻で気を失ったもんね。

だてにか弱いわけじゃない(威張れることでもないけど)。


それはともかく、だ。

僕はこのままこの里に、しばらく逗留することが自動決定した。

理由?

小説内のことを思い出せばわかることなんだ。

この隠里、基本的に外に出ないんだ。

んで、強い人はちらほらいるけど人の街まで送ってくれる奇特な御仁とかいないし、そもそも人間嫌いばっかりなんだよ。


で、そこに現れたレスに熱心に口説いて街へ出る……って言うのがのちの友だちエルフとの思い出話なわけ。

ということはさ。


「ふぅむ、まあ、すぐに人の街に帰してやりたいのはやまやまなんじゃが、誰も引き受けてくれんじゃろうのう……」

「はあ」

「まあ、拾ってもうたもんは仕方ないし。子供じゃから面倒は見てやるから安心せい」


ってことだった。

でーすーよーねーー!!!!

そして戦闘能力皆無の僕が、一人でこの里を出れるわけがないのであった。


「……せめて、手紙出したいけど……」

「無理じゃなぁ。街に送る鳩は、今はおらんのじゃて」

「はあ……そうですか。すみません。お世話になります……」



いつ戻れるのかなぁ。

と、遠い目になりながら僕は未来を憂いたのだった。



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