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先日、振られました。

作者: しずく

「わぁ〜、雪が降ってる!!

積もるかなぁ?」


「ったくお前はガキだな」


「そんなことないもん!」


「....まあ、そんなとこが可愛いんだけどな」


「えっ、何か言った?」


「なんでもねえよ。さっさと行くぞ。」


「もぉ〜、待ってよぉ」




なんだこの茶番は。少女漫画か。

昼休みに何やってんだよ。

おいそこの男。自分で言って照れてんじゃねーよ。

てかそこの女。聞こえてんだろ。

顔がニヤついてるんですけどー。


...ごほん、ごほん。

嫌だわ、私ったら。

西園寺家の令嬢であるこの私が

少々取り乱してしまったようね。


「失礼ですがお嬢さま。

婚約者さまに振られて感情が荒ぶっているのは

わかりますが、そんなに強く握られては

箸がかわいそうですよ。」


あらやだ、本当。右手で掴んでいる箸が

ギシギシ言ってるわ。って...


「振られたは余計よ!!振られたは!!!

大体、私から振ろうと思っていたのよ!!

あんな男。何処の馬の骨かもわからない女に

現をぬかしちゃってぇ!!!」


「うわあ、悪役令嬢さながらのセリフですね。

涙目で言われても説得力がありませんよ。」


「うるさいわよぉ...グスッ初恋だったのにぃ。」


「...私のですが、ハンカチ、どうぞ。」


「ううっ。優しさが逆に辛いのよー!!!

この無駄にイケメンの無表情冷酷男ー!!!」





そう、私こと西園寺美夜子は先日、

振られたんですの。婚約者さまに。


私の元婚約者さまは我が西園寺家と同様に

高い位の貴族であり、小さい頃からの

お付き合いでした。

俗に言う、幼馴染というものですわね。

だから私たちが婚約をするのはごく自然な流れで

...お互い自分の立場を理解し、良きパートナーと

なるよう今日まで頑張ってきたのですが...。


ええ、それはもう頑張りましたわ。

元婚約者さまは見目麗しく、まさに文武両道の御方。

横に並んでも恥ずかしくないように、

日々精進しておりましたの。


それが昨日。放課後呼び出されたのです。

そして言われましたわ。


「俺と別れてくれ。もう限界なんだ。

お前は本当の俺を見てくれなかった。

いつも家柄でしか俺を見てくれなかった。

だが、あいつは違う。あいつは本当の

俺を愛してくれているんだ。」


...は?お前、家の後継ぐんじゃねーの?

大人になって苦労しないように、

大変な目に遭わないように頑張ってんじゃねーの?

それにあいつってアレだろ?

最近転校してきた妙にイケメンと

エンカウントするっていう女のことだろ?

いやいや、学校中の女子があの子が逆ハー

狙ってるって知ってるよー。

てか、ちょろいな。うそん、今までの私の努力...。


ごほん、ごほん。また取り乱してしまいましたわ。

しかし、お互いに理解しあえていると思っていたのに

残念ですわ。お父様にも報告しないと。

お父様は一人娘である私には甘いので、

暴走しないといいのだけれど。

...まあ、別にどうでもいいけどね!!

本当よ!!本当に本当なんだから!!!!


...くっそー!!!絶対に見返してやるぅぅ!!!!!



*****


己の胸で泣きつかれて寝ている自分の主人を見て、

無表情を常時装備している執事は頬を緩める。


「俺以外見えないようにしてあげる。

俺のお嬢さま。」


そう言って額に口付るのだった。

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