No.99 我利勉危機!?
「よし、集合だ!」
『オスッ!』
一通り練習して、クールダウンを終える。すると薫から部員全員に集合がかかった。
部員達が薫の周りに集まる。
「大会の後半戦まで後四日だ。そこで簡単な合宿をしようかと思う」
『え!?』
『合宿!?』
部員たちがざわめいた。このタイミングで合宿がくるとは思いもしなかったのだろう。
「合宿ってどこに行くんだ!? ハワイか!? 沖縄か? いいねぇっ!」
純也が騒ぎ始めた。呆れた様子で薫は純也に言った。
「お前はプロ野球か何かと勘違いしてないか?」
部員たちから笑いがおこった。純也は「え!? 違うの?」と言いながらキョロキョロしていた。薫が話を続ける。
「……学校だ。授業もあるしな。顧問の先生にも話をつけてある」
つまり、少しでも空いた時間を練習時間にしようと言う計画だ。
「やりましょう!! 課題は沢山あるんです!」
「ぼ、僕は野菜を持ってくるよ」
亮と博司が楽しそうに言った。彼らだけではない。他の部員もどこかそんな雰囲気だった。
ただ一人を除いては…。
「あの、キャプテン…」
我利勉が申し訳無さそうに手を上げた。
「どうした?」
「練習には参加できますが、泊まれるかどうかは保留でお願いします……」
薫は何か事情があると察し、この場では深くつっこまなかった。
「なんだなんだ? みんな楽しそうにしちゃって。ガキだなぁ…はっは」
そう言いながらも一番嬉しそうな純也であった。
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――
「実は…この前のテストの成績が…」
他の部員達がいなくなった体育館で我利勉と薫が会話をしていた。
「なるほどな…」
我利勉曰く、この前のテストで成績が少し落ちてしまい、親にバスケをやめるよう、言われているそうだ。
それでも我利勉の成績は学年でもかなり上位である。普段から我利勉が部活をしていることが気に入らない母親は少しでも成績が下がると、すぐに部活のせいにしていた。
それでも今までなんとかやって来たのだ。さすがの我利勉も今回の怒り方は普通ではないと感じたらしい。
「なんとかやってみます!僕だって朱雀高校バスケ部員ですから! 最後まで一緒に戦いたい!」
我利勉は薫に言った。目には少し涙が浮かんでいた。薫は我利勉の目を見て、
「そうだな…。待っているぞ」
と肩に手を置いた。さすがに薫だけで解決できる問題では無かった。
やがて体育館の照明が落とされた。
――――――
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――
***
「合宿だってさ。ガキみてぇだな」
学校からの帰り道を俺は久留美と二人で歩いていた。
「そんなこと言っちゃって……。本当は楽しみなんじゃないの?」
「ふん。くだらんな」
「もう…」
そう言って久留美は溜め息をついた。別にそんなに楽しみな訳じゃないからな。皆がやるっつってたから、しょうがなくだな…。
いや、でも部活とかやってなかったから合宿は初めてだ。
うん、だから少しだけ楽しみなんだな。うん、少しだけ。
そんなことを考えていたときだった。久留美が心配そうな声で言った。
「我利勉さん、どうしたのかな…」
「あー、なんか保留とか言ってたな」
そして久留美がこちらを見る。
「親になんとか無理を言ってバスケ部にいるって聞いたときがあるわ。なにかあったのかな…」
「それは初耳なんだが、イメージは出来るな。厳しそうな感じ」
ザマスザマス! なんちって。
「だよね…」
そして久留美が下を向く。
「あのなぁ、小さい時からお前はそうだったが、他人の問題に首をつっこないほうがいいぜ?本人たちにしか解決出来ないこともあるかもしれないしな」
その言葉を聞いた久留美は俺の顔を覗き込んだ。
「フフ」
「な、なんだよ」
「そんなこと言って、一番心配してるのは誰かな〜?」
「あーうるさいうるさい。はいはい」
そして、もう一度笑いながら前方を向いた。
***
『あのなぁ、小さい時からお前はそうだったが――』
『あーうるさいうるさい。はいはい』
優君の時もそうだった。
私の時もそうだった。
私にはわかるんだ。
「フフ」
私は前を向いた。街灯の光に照らされ、道が幻想的に映る。
少しだけ昔を思い出した。
ジュンはもう忘れちゃったかもしれないけど、古びた一枚のカード、まだ持ってる。
さすがに、なんだか恥ずかしいから言わないけどね。
私に何かあったら約束通り、ちゃんと守ってね。
――私のメガトラマン
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――
「あははは」
「いきなりなんだお前は。気持わりぃ」