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No.94 第三試合

 インターハイ予選三日目。

 

 朱雀高校の体育館でアップを終えた選手たちは、会場へと移動する。移動手段は稲川カップに行くときもお世話になったバスである。

 

「よし、みんないるな。では、運転手さん、今日もお願いします」

 

『おねがいしゃーっす』

 

木ノ下薫がメンバーの出席を確認した後、運転手さんに挨拶をする。運転手さんはそれに笑顔で答えていた。

 今日勝てばベスト8進出となる。準々決勝からは来週になるので、今日見事に勝ち抜くことが出来れば選手たちには一週間の時間が与えられることになるのだ。

 

「今日の相手って強いのかよ?」

 

 純也が前列に座る薫に話しかけた。薫は飲んでいたジュースのキャップを閉め、後ろを振り向いて答える。

 

「まぁ、ベスト16だからな。それなりの力はあるだろう」

 

 そして再び前を向いてから言った。

 

「しかし、昨日ほど苦戦することはない相手だ」

 

 昨日、とは佐川商業戦である。昨日はまさに激戦だった。二回戦とはいえ、ベスト8と言ってもおかしくはない試合だっただろう。

 

「昨日? なら楽勝じゃねぇか」

 

 純也はそう言って背もたれにグッタリと肩をおろした。

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

 

 今日でベスト8が決まる試合というだけあって、会場はかなり混雑していた。近くに貼られていたトーナメント表を見て、亮が呟いた。

 

「白川、黒沢、城清…。予想通りといえば予想通りなんですが…。白川の点差がひどいですね…」

 

 一回戦156対22、二回戦133対38、3回戦144対49。白川第一高校は早くもベスト8進出を決めていた。黒沢高校も白川同様、すべて100点以上の得点でベスト8進出を決めている。

 

「それでも、途中から全部二軍なんだぜ」

 

 永瀬が亮に言った。そのセリフから強豪校の選手層の厚さが伺える。そして薫がトーナメント表を見て選手たちに語りかける。

 

「城清は確実にベスト8を決めてくるだろうな。俺たちも一足先に決めていこう」

 

『オッス!』

 

 薫の言葉に選手たちも続いた。

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

『朱雀高校対藤岡高校の試合を始めます。礼!』

 

『おねがいします!』

 

 選手たちがお互いに向き合って礼をした。朱雀高校は昨日と同じスターティングメンバーだ。博司がセンターサークルで相手と向き合う。相手の選手は180cm前半といったところだろう。審判の手により、ボールが上空へと放たれる。

 

パシィッ!

 

 博司がボールを手で弾き、亮にボールが渡った。そのまま物凄いスピードでディフェンスをかわし、あっという間にシュートを決めたのだった。

 

「よし、ディフェンスだ!」

 

「はい!」

 

 薫が亮に声をかけ、すぐにハーフコートマンツーマンに戻る。味方コートに入ってきたディフェンスを朱雀高校の選手たちが厳しくマークする。

 

『くっ』

 

 ボールが何度かまわり、苦し紛れのシュートが放たれた。ボールはボードに当たり外に弾かれる。そのボールを永瀬がリバウンドした。そして、ドリブルをあまりせずに前を走る亮にパスを出す。

 亮はボールをしっかりとキャッチして選手たちに声をかけた。

 

「1本大事にいこう!」

 

 そのセリフを言ったそばから純也がハイポストへと上がった。そこへ純也よりも10センチほど大きい選手がマークする。

 その時亮の周辺視野に青のユニフォームが映った。亮は純也の右方面を通過させるようにして鋭いパスを出した。純也はおいおい、と言った様子で通過したボールを振り返る。

 

 なんと、そのボールを永瀬がタイミングよくキャッチし、そのままレイアップシュートを決めたのだ。

 

「ナイスパス」

 

 永瀬が亮にそうささやくと、そのままディフェンスに戻った。

 

「ちぇ」

 

 純也は不満げな顔をしつつも、亮のパスがあまりにも絶妙なパスだったために、実力を認めざるをえない、と言った様子だった。そして再び朱雀高校のディフェンスとなる。

 

 ドリブルをしている相手に薫がマークする。フェイントを何度かかけてみるが、まったく通用しなかった。そして諦めた様子でパスをまわそうと辺りを見渡した瞬間―。

 

 薫が一瞬の隙をついてスティールに成功したのだ。転がったボールをすぐに拾い上げゴールに向って行った。ディフェンスも必死に着いていくのだが、あっさりとかわされてしまう。

 

 そしてそのままレイアップシュートを決めた。

 

 薫はすぐにディフェンスに戻る。確実なプレーで次々に得点を積み重ねていく。本当にこれが三回戦の試合なのかも疑ってしまうような試合展開だった。朱雀高校の一方的な試合となっていた。

 

 トップに上がった薫が亮にパスをだす。亮は自らゴールに向って切り込んだ。ゴール付近でカバーに入ったディフェンスが現れる。

 亮は急に自分の後方にむかってノールックでパスを出した。

 

 薫がそのボールをキャッチし、素早いモーションで、高い打点のスリーポイントを放った。

 

 

スパッ!

 


 そのボールは綺麗に吸い込まれる。

 

『ワァァァ!』

 

『すげ~!』

 

 あっという間に得点していく朱雀高校に大歓声が沸いた。その後も一方的な展開が続き、そのまま前半戦終了のブザーが鳴り響いた。

 

 56対27という朱雀高校のダブルスコアで前半戦を終えたのだった。


 


 

 

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