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No.89 スリーポイント

 

 第二ピリオドの開始を告げる笛が鳴り響く。第一クォーター同様、朱雀高校の博司と佐川商業の松岡がセンターサークルで向かい合った。審判により上空へと投げられたボールに、2人一斉に跳びついた。

 

 松岡が弾いたボールを、佐川商業の高橋がキャッチした。そして、リングに向かってドリブルで移動する。

 

「高橋!」

 

 ポストに入った松岡に、高橋はパスをだす。それに博司がピタリとマークした。

 

「博司! 持ちこたえるんだ!」

 

 亮が高橋をマークしながら、肩越しに博司を見てそう叫んだ。その言葉を聞いた博司は、腰を落とす。

 

 不格好ながらもしつこい博司のディフェンスに、松岡は加藤へとパスを返した。そこに薫がマークをする。

 

 キュキュ!

 

 フェイントをかけ、中へと切り込んだ。そして、シュートを放つ。

 

 ボールはリングに当たり、外に飛び出た。そのボールを松岡がリバウンドする。そして、そのままシュートを決めた。

 

『ワァァアア!』

 

 これで8-20と点差は広がってしまった。薫は素早くボールを拾い、亮にパスを出す。そのままボールを運んでいき、セットのポジションになる。佐川商業のディフェンスは相変わらずゾーンのままだ。

 

 ポストにあがった永瀬にパスをまわし、今度は90度のスリーポイントラインに立った薫へボールが渡る。それに反応し、佐川のディフェンスは薫をマークする。

 

 そして、そのままシュートモーションに入った。ディフェンスの武田がブロックのためジャンプする。

 

 シュッ!

 

 しかし、ボールはリングに放たれることは無く、我利勉にパスを出した。

 

 パスを受け取った我利勉はスリーポイントシュートを放つ。

 

 ゴンッ!

 

 惜しくも外れたボールがリングの輪に当たりバウンドした。外にこぼれるボールを永瀬がリバウンドする。地面に着くと同時に亮にパスを出した。

 

 パスを受け取った亮はすぐにスリーを放つ。

 

 

 パスッ!

 

 

 今度は綺麗にリングに吸い込まれたのであった。

 

「ナイスシュート! さあ守るぞ!」

 

「はい!」

 

 薫は亮にそう話しかけると、すぐにディフェンスに戻った。佐川商業のオフェンスが始まる。いつものように高橋が指令をだす。ポストに入った松岡にパスを出した。

 

 そして、そのまま佐川の隠れエースの佐田にパスがまわる。そのままスリーポイントが放たれた。外れたボールを博司が奪い取る。

 

「博司! こっちだ!」

 

 亮が前方に走りながら言った。博司は慌ててパスをだす。

 敵にカットされそうになりながらも、なんとかボールを守りきる。そして薫にボールが渡った。速攻で走る薫に加藤が着いていく。

 

「絶対にとめてやるよ!」

 

 薫は右手上げシュートモーションに入った。それにあわせて加藤も跳ぶ。

 

 

 タイミングはドンピシャリだった。

 

 しかし薫はボールを持っていた右腕をいったん引き下げ、リングを通過する。

 

 「なっ!?」

 

 そしてボールを左手に持ち替えバックショットを放った。

 

 ボードを使い、確実にシュートを決める。

 

『ウォォオオ!』

 

 歓声が沸き起こった。薫は表情1つ変えずにディフェンスに戻った。見事にかわされた加藤は悔しそうな表情だった。

 

 やがて加藤はボールを拾い、高橋にパスを出した。

 

 エンドラインからボールを貰った高橋がボールを運ぶ。

 

「気を抜くな!」

 

『オッス!』

 

 薫の掛け声にメンバー全員が叫んだ。それだけで佐川にプレッシャーをかけるには十分なほどだった。しかし、黙っている佐川ではない。

 

「俺が決める!」

 

 松岡がパスをくれ、とアピールする。高橋はすぐにパスを出した。さすがはキャプテン、と思わせるような気合の入ったプレーで、博司と勇希をかわし、意地のシュートを決めた。そのまますぐにディフェンスに戻る。

 

 朱雀高校もすぐにプレーを開始する。薫にボールが渡ったかと思うと、そのまま中へと切り込んだ。

 

 シュッ!

 

 ノールックで我利勉にパスがまわる。来る、と予感していたのかすぐにシュート体勢に入った。ディフェンスがブロックをしに跳んでいたのだが、わずかに我利勉のシュートの方が早かった。そして…。

 

パスッ!

 

『ワァァァア!』

 

 観客の声援の中でも目立つくらい大きな声が朱雀高校ベンチから聞こえる。

 

「っしゃぁ! でかしたぞメガネ! 4点プレーだぜ!」

 

 純也である。言ってることは謎だったのだが、我利勉は特に深く考えずに軽くガッツポーズをして返した。再びディフェンスになり、朱雀高校の部員は一斉に腰を落とす。

 

 『クッ…』

 

 一瞬の気の緩みか、高橋のドリブルにできた隙を亮は見逃さなかった。亮の差し出した手が高橋のボールに触れる。そして転がったルーズボールを拾い、亮はゴールに向かって一直線にドリブルをした。

 

「く…コイツ、はえぇ…」

 

 高橋はドリブルをしている亮についていくのがやっとな状況だった。そしてゴール手前で突然レッグスルーをして、急ブレーキをかける。

 

「なにっ!?」

 

 亮はすぐに、そのまま後方に飛びながらシュートを放った。亮が後ろへ跳んでいるため、高橋のブロックが遅れる。

 

 パスッ!

 

 身長差をまったく感じさせないプレーに会場からは歓声が沸いていた。

 

『ワァァアア!』

 

 少しずつではあったが朱雀高校にゲームの流れがきているようだった。そしてその流れは佐川のディフェンスにも影響が出始める。

 

 亮、我利勉のスリーを警戒するあまり、ゾーンの陣形が外に広がっていたのだった。そこへ容赦なく勇希と薫がカットインする。そして次第に佐川のゾーンがうまく機能しなくなっていったのである。

 

 しかし相手はあの県内でも優秀なセンター松岡。俺が点を取る、と言わんばかりにアピールをし、得点を次々に重ねる。その姿はまさに県内三大センターの名にふさわしい働きであった。

 

 一進一退の攻防が続き、やがて第二ピリオド終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。

 

 37対42という、第一ピリオドのロースコアからは、とても予想ができないようなスコアで第二ピリオドを終えたのであった。

 

 朱雀高校は5点リードされてはいるが、確実に流れを変えたピリオドだった。純也と我利勉を交代した作戦が見事に的中したと言える。

 


 


あれれ? と思う方もいらっしゃると思いますが、各ピリオドのゲームの始まり方が、新ルールの『オルタネイティング・ポゼション・ルール』と呼ばれるものではなく、旧ルールを使って書いています。これは私自身、公式で新ルールを使ってプレイした経験が無く、あまり慣れ親しんでいない、ということもあるのですが、決して今のルールを否定しているわけではなく、単に新ルールを混乱しないように上手に描写する力が私には無いと思ったからです(ただでさえ描写がヘタなのに 泣)。 混乱してしまった方、申し訳ございませんでした。

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