No.85 主役は俺だ
お知らせ:話数もだいぶ増えてきて、探しにくくなると考え、キャラの設定資料を他の小説に移しました。高校別にまとめてますので、キャラがわからなくなったときなどに是非、ご活用してみてください。作者のマイページからリンクが貼られています。
『1on1 高校別設定資料』
インターハイ予選第一回戦、朱雀高校は大田高校に圧勝した。そして現在控え室へと帰る真っ最中であった。
『おいおい、あいつじゃねえの?』
『ああ、あの6番の…』
『ヒソヒソ』
すれ違う他チームの人が純也を見てはヒソヒソと話をしていた。
「あぁ? てめぇら何見てんだよ」
「こら、やめとけ」
睨み返す純也に木ノ下薫は止めに入った。睨まれた他チームの部員はコソコソとどこかへ消えていった。観客が少なかったとはいえ、先ほどの試合で若干有名人になったようだ。
「これで明日からの試合はマークがきつくなるだろうな」
副キャプテンの永瀬勇希がふとそう言った。それを聞いた純也は得意げな顔で言い放つ。
「へへ、上等だぜ! 少しは手ごたえが無いと俺がつまらねぇからな!ハハハ!」
「だまれ! まずファール数4って言うのを何とかしろ」
天狗になる純也に、すかさず亮がツッコミを入れた。
「アレは相手が簡単に吹っ飛んだんだよ! 演技だ演技!!」
「まったく…」
その様子を薫は呆れた様子で見ているのであった。
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―――――
――
――朱雀高校体育館。
会場から戻った部員たちは薫の前に集合する。そして、全員集まったのを確認してから薫が語り始めた。
「とりあえず、おつかれさん」
『おつかれさまーっす』
「今日はいい感じでスタートをきれたと思う。この調子で明日からも頑張っていこう」
『オッス!』
「まぁ、所々危なっかしいプレイが多く見られたが、自覚するとしてないとでは大きく違うからな。まだ5試合もあるので、気は抜けないぞ」
「う…うるせぇ」
純也はそのまま何も言えなくなってしまったようだ。強がってはいるが、やはり自分でもルール的に危なげなプレーは自覚しているらしい。それを見抜いた薫は特にこの話題には触れずに話を続けた。
「よし、明日も試合だ。今日はゆっくり休んでくれ。特に明日の試合はこの前に練習試合で戦った佐川商業だ。松岡や加藤もレベルアップしていると思う。気を引き締めていこう」
『オッス!』
「それじゃあ、解散だ。あと、純也と博司は終わったら残ってくれ」
『おつかれさんっした!』
挨拶が終わり、部員達が帰りの準備をしに部室へと移動する。呼ばれた純也と博司は薫の下へと向かった。
「なんだよ! どうせまたファールがどーとかだろ?」
やれやれ、といった様子で純也は薫に言った。それに薫は落ち着いて答える。
「それについては後は本人次第だと思うからな。俺が今言いたいのは別だ。明日の試合、俺がエースの加藤を抑える。博司は松岡をマークだ。おそらく向こうも同じマッチアップだろう」
更に薫は続ける。
「予想ではお前をマークするのは6番の浅井四郎。特に目立たない普通の選手だ。言いたいことがわかるか?」
「ああ。よーくわかったぜ」
そして純也は不気味な笑みを浮かべながら言った。
「つまり俺が主役っていうことだろ?」
少し考えた後、薫は答える。
「まぁ、そういうことだ。明日は点をとれるだけとれ」
「まかせろまかせろ! 明日は大船に乗った気分でいるんだな!」
体育館には純也の笑い声が鳴り響いていた。それを呆れた様子で薫が見ていたのは、言うまでも無い。
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――
その頃、佐川商業にて。
「みんなの知ってる通り、次の試合は朱雀高校だ」
監督が選手たちに向かって言った。
「最近練習試合をして負けている相手だが、そんなに差があるとは思わない。あちらも新メンバーを加え、大幅に進化したようだがそれはこちらも同じことだ」
『はい!』
「松岡、加藤…そして武田!」
「はい!」
以前の練習試合では出場してなかった『武田』と言う選手が呼ばれた。
「明日の作戦では武田のディフェンス無しでは勝てない。ここ数日間で身につけたことを頑張って発揮してくれ!」
「はい!頑張ります!」
最後に監督は言った。
「作戦通りにいけば、最後に笑っているのは君たちだ!」
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「フフフ」
「何よ、ニヤニヤして気持ち悪いわね」
朱雀高校から帰る途中の道で、突然久留美につっこまれる。
「明日は俺が主役なんだぜ! ヒャハ!」
この感動は俺にしかわかるまい!
「はぁ…。そうやって調子に乗ってると痛い目にあうわよ?」
久留美が呆れ顔でこっちを見る。
「佐川商業だぜ? 前に一度勝ってるっつーの。楽勝楽勝」
「まったく…」
こんな調子でインターハイ予選初日は終わったのだった。やっぱ試合は楽しいなぁ。はやく試合がしたくて待ちきれねぇぜ。