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No.82 何かの気持ち

短めです。次回からいよいよインターハイ予選になります。

 朱雀高校体育館――。


 インターハイ予選まで残りわずかと言うこともあり、普段よりも選手たちの気合いの入った声が体育館中に響きわたる。



県内で最後まで勝ち抜いたチームのみが出場することの出来る大会――。


どの高校の誰もが夢をみる有名な大会である。


その、たった一つの切符をかけて戦うのだから、選手たちの気合いが入らない訳が無かった。


更に、この群馬県は、12年連続で白川第一高校がインターハイ出場を決めている場所でもあり、その歴史を塗り替えるが如く、県内の強豪達も皆『打倒白川』を目標に日々の練習に励んでいた。


朱雀高校もその一つである。


激しい練習の中、周りよりも少しだけ元気のない亮に、キャプテンの木ノ下薫が話しかける。


「どうしたんだ? 元気がないぞ」


 遠い目をしていた亮は、ふと我に帰り薫の声がした方向に顔を向ける。


「あ、いや……。ちょっと…」


一瞬言葉が詰まり、少し間を置いてから、再び語り始めた。


「俺、本当に朱雀のポイントガードが勤まるんでしょうか?」


急に弱気な発言をした亮に薫は驚きつつも答える。

「どうしてそう思うんだ?お前らしくないな」


「この前の関東大会で、俺は進藤に手足も出なかったんです…」


更に、暗い声で続ける。

「ガードの俺が壊れたら試合も壊れるってのに…」


その言葉を聞いた薫は、顎に折り曲げた人指し指を当て、考える。


確かに、関東大会での黒沢高校との試合はここ最近の朱雀には珍しいほどの、圧倒的実力差を見せ付けられた試合だった。


「まぁ、今年の黒沢高校は白川並の実力があると言われてるしな。」


練習に戻るように亮に背を向け、肩越しに顔を向けながら話しかける。


「俺は、そこまで勝敗をひっくり返せないほどの実力差があったとは思ってない。もちろん、亮と進藤の差もだ。もし差があったとしたなら…」



そして、完全に亮に背を向けて、コートに向かいながら呟いた。


「それは何かの気持ちだろうな」


そう呟くと、コートにいる全員に向かって指示を出していた。


『次はセット形式での最終チェックだ!』



取り残された亮はその場で立ち尽くしていた。


――何かの気持ち?


あのときの進藤にはあって、自分には無かったもの…。



「負けたくない…」


今度は絶対な負けたくない。

 こう、怒りとは違った不思議な気持ちが自分の中から溢れでてくるのがわかった。


その後、亮の顔付きが変わったことは、チームの誰もがわかるほどであった。


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