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No.8 デカ男

ここは朱雀高校体育館。



放課後、バスケ部が練習に励んでいた。

キャプテンの木ノ下薫を中心に体育館中に掛け声が響き渡る。

そんな部員達とは別に、二年生のメガネ小僧『我利勉翔太』に一年生の猿跳び野郎『石川純也』がバスケットのルールを教えこまれていた。


――――――


――――

 

――

 




「じゃあ純也くん、ディフェンスで抜かれそうなときはどこを使って止めるんだっけ?」


「いやぁ〜、体で止めるのはわかってるんだけど、男ならやっぱりパンチだろ!!百歩譲って足掛けだね!!」


「わかっているなら体で止めようよ!!男はとかじゃなく!!それに百歩譲らなくていいから。いい?パンチは使ってはダメなんだ。腰を下ろして体で止める」


「なるほどねぇ〜」


なかなか奥が深いなぁ。知ってるけど。


「よし、今日はそれじゃあこれぐらいにしようか」


「ウッス」


その時、キャプテン『木ノ下薫』の声が響き渡る。


「それじゃあ次は5対5だ。フォーメーションの確認をするぞ。チームはレギュラー陣対Bチームだ」


「よっしゃあ!やってやるぜ!!」


と言って、俺はさり気なくコートに出てみる。すると


「おい純也」


と、キャプテンの木ノ下薫に見事に呼び止められてしまった。


「ああ? なんだよ?」


「お前は試合を見てフォーメーションを覚えろ。大会も近いし一つ一つ教えている暇はない。そのかわり俺たちは繰り返しフォーメーション練習をするからそれを見て覚えるんだ」


「フォーメーションなんて我利勉メガネ君に教えてもらえばいいだろ!?」


「我利勉はシューティングガードで大事なレギュラーなんだ」


「ええ!?」


まじかよ!?あんなヒョロヒョロしたヤツが?体が当たってしまっただけで骨が折れそうなメガネ君が!?


「ま、そんなとこだ」


そう言って木ノ下薫はコートに向かっていった。


「ふぅ〜……ん?」


俺はコートの方に目をやる。

さり気なく亮もコートに向かっているような気がした。

俺は目をこすってからもう一度コートに目をやる。


やはり、亮がレギュラー陣に混ざっていた。


「コノヤロォ!!」


ドカ!!


俺の跳び蹴りは見事、亮に命中した。

当然亮は怒る。


「痛ってぇな!!いきなり何すんだよ!」


「うるせー!なんでお前がレギュラーで俺が無料観戦チケットなんだよ!!?」


「無料観戦チケット!!?そんな理不尽なことが通用するか!!」


くっそぉ、薫の野郎に聞いてみるべし。


「おい薫、どういうことだ?」


俺のことばに薫が答える。


「ん?亮は朱雀のレギュラーだ。」


「なんで!?」


「それは、うまいからな」


「全然うまくないですよ!!俺のほうが凄いッス」


さり気なく敬語になる俺。


「どこがだ!?俺の方が強いって!」


亮が俺に反論してくる。


「うるせぇ負け犬チビ助!!黙って引っ込んでろ!」


「なんだとこの日光猿軍団の隊長!!俺が猿まわししてやろうか??」


ドコ!


ボカ!


ガス!


そんな二人の争いを見ていた木ノ下薫が朱雀高校マネージャーの春風久留美を呼ぶ。


「春風」


それを聞いて久留美は返事をする。


「はい?なんでしょうか?」


「純也をなんとかしてくれ」


久留美はため息をついてから


「……はい、わかりました」


と言った。


そしてトコトコと俺と亮が争っている現場へ直行する。


「ねぇ?ジュン」


「ああ?久留美か?悪いが邪魔をしないでくれ。今から俺はこの犬被り男に――」


「だれが犬被りだ!つぅか犬被りってなんだよ!!」


ここで久留美は爆弾を投下した。


「もうお弁当作ってあげないよ」


「え?」


…………


――まじかよ!?ここで亮の野郎に口喧嘩で負けるのは嫌だが久留美の弁当を食えないのはもっと嫌だ。コイツの弁当うまいし。また昼飯がパンの生活に戻ってしまう。



「ちっ……しょうがねぇな」


「わかればよ〜し」


俺がコートに戻ろうとしたときだった。


「え?久留美ちゃん、純也に弁当作っているの?」


亮だった。亮が食い付いてきた。


「ええ、そうよ」


ガーン


「そんなぁ〜」


そして亮はガックリしてしまった。

ふっ、ザマみやがれ。ん?これは亮を負かすチャンスじゃないのか?


「いやぁ〜、久留美の弁当は本当に美味くてよ、口に含んだ瞬間――」


「うわぁぁぁ」


亮はおたけびをあげながら頭を抱えている。まったく、いい眺めだなぁ。


「よし、久留美。一緒にレギュラー陣のフォーメーションを見て勉強しようか。」


そう言って俺は久留美の肩に手をまわす。


「え?………うん」


久留美はコクりとうなずいた。


「それじゃあレギュラーの亮くん。頑張ってくれたまえ。応援しているぞ」


俺は亮にクルリと背をむけコートから出ていく。

この時俺の頭の中を、


『圧勝』


の二文字が支配していた。


俺はしばらくレギュラー陣のフォーメーションを見ていた。亮はやはりミスを連発していた。いい眺めだなぁ。ふふふ、圧勝。


そんなことを考えていたときだった。


『キミ、凄いね。気が強いしキャプテンに敬語じゃないし』


突然横から話かけられた。


「ふふふ、俺は無敵だからな」


と言って話し掛けられた方に目をやる。


「で、デカ〜!!」


俺の横にいたのは身長が2メートルもあろうかと言う男だった。

 

 

 

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