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No.72 博司の武器は?

 

 黒沢との敗戦を告げられた日から二日後、無事に退院した俺は、軽い調整もかねてさっそく部活に参加していた。やることと言えば機械見たいに基礎を繰り返すだけなのだが……。病み上がりだからしょうがねぇか。


『よし、今の形式でもう一度やってみよう』


『オス!』


 木ノ下薫の言葉に部員たちも続く。Aチーム対Bチームの実戦形式での練習みたいだ。

そんなやつらを見ていたとき、ふと不審な人物に気がついた。



『ブツブツ……』


 あの2m近いウドの大木の大山博司である。薫たちの練習を見ながら、なにやらぶつくさ言っている。


「オメー何してんだよ」


『わっ!?』


急に俺に話しかけられてビックリしたようで、大きな体が上下に揺れた。







「純也くん!? ビックリしたぁ……」


「お前の方こそ、ぶつくさ怪しいことこの上ないぞ」 

 博司はとても困った様子で俺に話す。


「昨日からキャプテンに次のフォーメーション練習に加われって言われて……。頑張って覚えてたところなんだ」


 へぇ、博司もそれなりに期待されてんのかな? まぁ、黒沢とのミスマッチはシャレにならないからな。

「ま、頑張ってこいよ。無理だと思うがな。ケケケ」 

「ひどいよぉ!」


 そう言って博司は悲しい顔をした。その時、木ノ下薫の声が体育館中に響き渡った。


『よし博司! 加われ! 永瀬はフォワードでな』


「ああ」


「ふぁい!」


永瀬の声と、博司の情けない声が薫に返って行く。すかさず俺も返事をした。


「おう! まかせろ!」


さりげなくコートに出てみる。


「………」



「いやぁ、俺もやっといた方がいいかなと……はは」

 皆からの視線が冷たい。負けるかよっ!

 そんな俺に、亮がすぐさま飛びげりをかました。


ドカッ!


「ぐおっ!?」


「勝手に出てくんじゃねぇサル助! 病人は黙って休んでろ!」


「コノヤロ!」


ドカッ!


ガス!


ボコッ!



 低レベルな争いが始まった。いつものことなので、特に誰も止めには来ない。やがて、薫がしゃべりはじめる。


「黙ってストバスの大会に出た罰だ。今は頭を冷やせ!」


 亮が口元を押さえながら笑う。


「プププ」


「この犬野郎め!」


「まぁまぁまぁまぁ」


 そんな俺を我利勉が苦笑いをしながら、コート外へと連れていく。


「純也はいつか必ず出番があるから、今はおさえようね?」


「あぁ、わかってるよ」


 我利勉に返事を返した後、俺は、コートの外にでて練習を再会した。ときどきフォーメーション練習を見てみるが、博司はやはりついて行けないようだった。 


「博司!そこはもっと早くもどれ!」


「ふぁい!」


 情けない声が響いていた。俺は、それを楽しく観戦している。


「博司はディフェンスは見れる位にはなったけど、オフェンスがまったくダメだなぁ」


 シュート力と言うものは短時間で身につくものではないと、俺自身が実感していた。名シューターと言われる奴らは何千、何万と機械のようにシュート繰り返すことにより、シュート力を身に付けている。カズや優のシュート力はまさに努力の賜物だ。


いっそのこと、ディフェンス一本に絞ってもいんじゃねぇかなぁ。三年間でシュート力を身に付けるなら分かるが、インターハイ予選で使うとなると正直厳しいと思う。


 そんなことを考えているうちに、フォーメーション練習は終わった様だった。


 博司はヘロヘロになりながら俺の近くに帰って来た。


「ぜぇぜぇ……」


「まったく……、相変わらずウドの大木だなぁ」


 博司はムッとした表情をして言う。


「もう、しょうがないじゃない! 動きが難しくて…」


 正直そんなに難しいとは思えないようものだったが、何もかもが初めての博司だから、そう感じのだろう。


「お前の武器はまさに身長だろ? それは才能だ。努力で得られるものじゃないしな。その才能を活かせる方法を考えたらいいんじゃねぇの?」


「身長を活かせる方法……」


 博司は少しなやんだ後に言った。


「なにかなぁ……。わからないや」


「知らね」


「えぇぇ!?」


博司よ、悩むがよい。そういうものは悩んで身につくものなのだ。


************

『よし、じゃあクールダウンしたら今日の練習は終りだ。』


薫の指示により、練習後の後始末が行われる。



 それぞれ掃除などの役割を終え、薫の所に部員たちが集合した。皆が集まったのを確認して、薫が語り始める。


「今日もお疲れ様。いきなりだが、明後日の連休に秋田県の稲川工業が主催する稲川カップを観戦しにいくことになった」


『おおぉ〜』


一瞬にして部員達がざわつき始めた。稲川カップといえば全国の強豪が集う、有名な大会である。

 その大会を主催しているのが、過去に全国大会での優勝経験43回という名門稲川工業だ。

 選手たちが驚くのも無理はないだろう。


「全国のプレーは、とても参考になるところが多いと思う。何かを掴むきっかけになればいいな。では、今日はこれで解散だ。」


部員達はみんな立ち上がる。そして薫が頭を下げながら叫んだ。


『おつかれさまでした!』 

『あっしたぁっっ!』


 周りも薫に続き、今日の練習は終わった。


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