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No.71 赤髪の男

 純也と優がまだ中学2年生のときの話である。

 

その歳ですでにストバスのコートの顔となりつつあった2人は、いつものようにコート内で賭けバスケをしながら休日を楽しんでいた。もう普通に高校生相手でも勝てるようになっていた2人に、とある人物が訪れる。

 

 

『ちょっと俺にもやらしてくんねーかな?』

 

「ん?」

 

 純也と優は見知らぬ人物を不信な人物に首をかしげた。髪の色は真っ赤で眼つきはとても鋭い。そして取り巻きの人物も同じにおいがしてた。純也はそんな奴等に免疫があり、あったく恐れていない様子で返事をかえす。

 

「ああ、いいけどここのルールは知ってんのか?」

 

『まぁな』

 

 その男はにやけながら答える。他のやつらもニヤニヤしながら見ていた。そんな中で純也と赤髪の男の試合が始まった。

 

純也がマークをかわしシュートに行こうとしたときであった。

 

ガスッ!

 

赤髪の男の蹴りが純也の背中にヒットする。行き場をなくした体はそのまま地面に倒れた。

 

「……ってぇ」

 

『なんでもアリなんだろ?ここのストリートってのは』

 

そういって不気味な笑みをうかべた。純也はゆっくりと起き上がる。

 

「あぁ、まちがっちゃいねぇよ。続けようぜ」

 

 純也は赤髪の男にボールを渡した。そしてディフェンスにまわる。

 

京介はボールを持ったまま動かない。そればかりか純也を見て再び不気味な笑みをうかべている。

 

「どうした? はやくこいよ」

 

『フフ…そうか』

 

 そういってボールを純也に向かって蹴り飛ばす。その隙に赤髪の男は純也に接近し再び蹴りをぶち込んだ。

 

『!?』

 

しかし、純也はその行動が読めていたようで、相手の足を持つようにして止めたのだった。

 

「ワンパターンが何回も通じるかよエリマキトカゲ野郎!」

 

そういって足を持ったままブン投げた。相手は地面に激しく衝突する。それを見た京介の取り巻きの数人が暴れだした。

 


『野郎!』

 

 一般の人たちにもお構い無しに喧嘩をふっかける。まさにコートは大乱闘の場と化した。しばらくもめた後、純也が口を開く。

 

「このままじゃあラチがあかねぇ。サシで勝負しようぜ」

 

『あぁ、かまわねぇよ』

 

 赤髪の男はコートの中央へと歩み寄る。純也もコート中央へと歩み寄り、お互いが向き合った。そして壮絶な喧嘩が始まったのであった。

 

純也が殴りかかる。それをいとも簡単にかわしボディにカウンターを入れた。

 

純也の体が九の字に曲がる。そこに今度は顔面めがけて蹴りを入れた。

さっきとは逆方向に体が飛んで行き、純也は地面に倒れたまたピクリとも動かなくなった。

 

『なんだ…つまらねぇ。帰るぞ』

 

赤髪の男は他の連中にそう言うと純也に背を向けコートから出て行こうとする。そのときだった。赤髪の男の肩に手が置かれる。

 

「おい」

 

赤髪の男はその方向を見て驚いた。先ほど完璧に蹴りが決まって倒れたはずの純也がおきあがっていたからだ。純也は無防備になっている赤髪の男の頬を殴り返す。

 


 

今度は赤髪の男が軽く吹っ飛びながら地面に倒れた。さらに純也は歩み寄る。そして胸座をつかみ相手を睨んだ。そして再び顔面めがけて拳を振り下ろした。その瞬間、赤髪の男は額を拳にあわせてぶつける。人の骨、というものは予想以上に固く、純也の拳にもダメージを負わせたのだった。

 

『バーカ』

 

怯んだ純也に向かって下から殴りかかる。直撃をくらい今度こそは倒れたと誰もが思っていた。しかし純也は起き上がる。

 

『しつけぇ野郎だ』

 

赤髪の男はトドメをさしに再び歩み寄る。赤髪の男はストレートを繰り出すが、純也と相打ちになってしまい、ぐらつく。

 

『くそが…』

 

「お前のパンチなんてこれっぽっちも効きやしねぇんだよ」

 

純也はそういって、手でアルファベットのCの文字をつくる。余裕をみせている純也であったが、足は小刻みに震え、誰が見ても大きなダメージを負っているようにみえた。それをみた赤髪の男は不気味ににやけて起き上がる。

 

『そうかい……じゃあ何度もぶん殴るだけだ!』

 

そう言って純也に向かって走り出す。

 


 

------

 

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--

 

 

 

「ハァハァ」

 

 

『くそ……この俺が』

 

すでに戦闘のペースが落ち、2時間以上が経過しようとしていた。赤髪の男は前傾姿勢で苦しそうな顔をしていた。赤髪の男が口元の血を腕でふき取り再び純也に襲い掛かる。純也もそれにあわせて力をふりしぼり起き上がった。

 

『こんなザコに負けるかよ!』

 

「うがぁぁっ!」

 

 

 勢いあまって突進してきた赤髪の男に、純也の会心の一撃の頭つきがヒットした。あまりの威力に赤髪の男は宙を舞った。

 

『くそ……こんなやつに……俺が……』

 

 手で杖をつくり、赤髪の男は起き上がる。その目はまだ生きており、見るものをすべて振るいあがらせるように鋭い。純也はもう相手が起きられないと思っていただけに、驚きを隠せなかった。もうすでの体中のガゾリンを使い果し、立っているのもやっとな状況だったからだ。

 

「まだきやがるのか……」 

 

しかし状況は純也の意思とは反していた。赤髪の男は1、2歩あるいたかと思うとその場に倒れてしまったのだ。

 

『京介!』

 

周りの取り巻きたちがあわてて赤髪の男にかけよる。そして純也に向けて一言、おぼえてろよ、といってからその赤髪の男を肩で抱え立ち去ったのであった。

 

 

 そして、純也も意識がなくなりその場に倒れこんだのだった。それをみたストバスのみんなはあわてて駆け寄った。

 

『純也!』

 

『ジュン!』

 

 

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--

 

 

 

純也が目覚めるとそこは病院の一室だった。コートでの出来事を思い出し、今の状況を呑み込むことができた。ふと突然隣のベットでねていた人物が目を覚ましたようだった。

 

『ん……んん?』

 

どうやら寝起きで状況がまったくつかめていないようだった。そして純也とその男の顔が合う。

 

『………』

 

「………」

 

『てめーは!!?』

 

「お前は!?」

 

ほぼ同時に声をあげた。2人が驚くのも無理はない。昨日大喧嘩した相手が隣のベットにいたからだ。

 

「なんでお前がここに!?」

 

『それはこっちのセリフだ!』

 

再び大喧嘩がはじまった。お互い体が動かせないので病室は壮絶な口喧嘩の場となっていた。そこにタイミング悪く優が現れる。その背中にはこれからスタジオで使うであろうエレキギターが入ったケースが背負われていた。

 

「おいおいおい、いったいどうしたんだ?」

 

目の前で繰り広げられている低レベルな口喧嘩に苦笑いをしながら優は言った。純也がそれに勢い欲答えた。

 

「どうもこうもねぇよ!昨日のあの赤髪やろうが隣に入院してたんだぜ!?」

 

その言葉をきいた優は特にとどろいた様子も無く、サラリと答える。

 

「うん。そうみたいだね。一晩共にした仲だし、仲良くしようじゃないか、ははは」

 

つまらないギャグに病室の空気が凍った。

 

「はは……はは…は」

 

 優の笑い声だけが鳴り響く。それを2人は悲しい人を見るような目で見ていた。そして赤髪の男は呆れたように言った。

 

『ケッ、てめぇらを見てると何もかもがバカバカしくなってくるぜ』

 

そう言って、純也たちとは反対側の窓側をみる。そんな日々が何日か続いた。

 

そしてある日、また病室を訪れていた優に、赤髪の男からとつぜん優に話しかける。

 

『なぁ、お前いつもギターもってるが、バンドでもやってんのか?』

 

突然話しかけられた優はすこし驚きながらも答える。

 

「いや、バンドはやってないよ。メンバーが集まらないし、趣味が合う人もいないしね…」

 

『へぇ、どんな音楽が好きなんだ?』

 

「えーと」

 

優はカバンの中にある何かを探し始める。そしてあるものを見つけたらしく、カバンの中から取り出した。とある洋楽のバンドのCDである。それをみた赤髪の男は優に興味を示したらしかった。

 

『それなら俺も聞いてるぜ』

 

「ほんとうか!?」

 

『あぁ、他に聞いてるやつは……』

 

 2人は音楽性がかなり似ていたらしく、尽きることのない会話にしばらくは病室内はにぎわっていた。そして、純也が退院して何日かした後だった。ストバスのコートに再び赤髪の男が現れる。コートにいた人々は再びやってきた男に罵声を浴びせる。そこに純也もやってきた。コートのみんなは再びものすごい喧嘩になると思っていた。だがしかし、予想していた事態とは異なっていた。

 

「よう京介、お前も退院したのか!」

 

『まぁな』

 

そういって赤髪の男は照れくさそうに頭を掻いた。そう、この2人性格には優を含めた3人は優の音楽の話がきっかけに普通に友達になっていたのだった。そしてコートに赤髪の男が来るようになってから何日も過ぎた。そのころになるともうコート内ではだれも赤髪の男のことを悪く言うものは1人もおらず、むしろ普通に試合などをするようになっていた。赤髪の男も昔ほど、意味も無く暴れたりすることもなくなっていた。

 

そして、優の音楽の道へのキッカケとなる言葉が赤髪の男から告げられる。

 

『なぁ、一緒にバンドやらねぇか?』

 

 


 


 



 


 


 







 


 


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