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No.65 危機一髪

 審判が時計を見てから、優、カズの2人にむけて言った。


「んー、あと1分だな。それまでに来なかったら不戦勝とさせてもらうよ」

 

「アイツいったい何してんだよ・・・」


優がそう思うのも無理は無い。いくらなんでもトイレにしては長すぎる。会場もいつまでたっても始まらない試合に苛立ちを感じ始めていた。


 審判が2人の前に立ち、何かをしゃべろうとしたまさにそのときだった。


「ちょっと待った・・・」


突然した声に、会場中が静まり返った。


「純也!」

「ジュン!」

 

 カズと優の2人は会場に現れた純也に向かって走り出す。


「ばかやろう、いったい何をしてたんだよ?」

 

優が苦笑いをしながら純也にそう問いかけた。


「あぁ、ちょっとあってな。それよりすまない、もう試合はおわっちまったのか?」

 

「いや、お前を待ってたんだよ」

 

「そうか・・・間に合ってよかった・・・」

 

『くそ・・・なぜきやがった!』

 

 ケルベロスのメンバーが何かを言っているようだったが、3人の耳には入らなかった。


「くっ・・・」


 突然純也がよろめいた。優があわてて体を支えた。そして純也から流れでた額のを見て驚愕する。


「おっ・・・おい、いったいどうしたんだ!?」


「隠せ・・・」

 

「え?」

 

「審判から俺が見えないように隠してくれ」


 優はその言葉に戸惑いながらも、さりげなく純也が審判から見えないように隠した。


「くそ・・・もう血は止まったと思ったんだがな・・・」


純也はそうつぶやくと、ボロボロになっていた上着を脱ぎ、細長く破いた後頭に巻いた。

おそらく血を止める意味のほかに、誰にも気づかれないようにする意味もあっただろう。


「大丈夫かよ?」


カズもとても心配そうにしていたが純也は特に動揺した様子も無くアッサリこたえる。

「詳しいことは後で話す。俺は大丈夫だから今は試合だ」

 

『きみたち、まだかね?』

 

 審判も苛立っているようだった。3人はコートの中に入り審判に謝った後、先攻後攻を決めるジャンケンをする。


お互いのメンバーが向き合い、会場中も次第に盛り上がってくる。

ケルベロスの1人のメンバーが純也にしか聞こえない声で語りかけた。

 

『おい、どうやってあいつらから逃れたかはしらねぇが、もう限界なんだろ?あきらめろよ』

 

純也は話しかけられた方向も見ずに、周りには聞こえないような声で返す。

 

「死にたくなかったら今、俺に話しかけるなよ・・・」

 

その言葉をきいたケルベロスのメンバーは笑いながら答えた。


『死にそうなのはどっちだよ、ははは、頭の中までおかしくなっちまったってか?こりゃあいいや』


 やがて純也たちの後攻がきまり、コートの運命を決める一戦が始まった。


 ケルベロスが素早くボールをまわす。その動きはかなりの統一感がある。今までの苦戦が嘘のようにコートを自由に走り回る。

 

「やはり隠していやがったか」

 

カズはディフェンスをしながらつぶやいていた。ボールが純也の相手にまわる。

いとも簡単に抜き去られ、最初のゴールはケルベロスが決めたのであった。


「本当に大丈夫なのかよ?」

 

さすがに簡単に抜かれたのが心配におもったカズが純也に声をかけるが、純也は大丈夫を言ってきかなかった。

 

Skybombの攻撃。

 

カズが辺りを見回しながら、ドリブルをする。純也はまともに使えない状態ではPGとしてはかなりの厳しい状況を強いられていた。

 

「よこせ!」

 

 突然純也がポストに入り叫ぶ。


 カズは迷いも無く純也にボールを渡す。純也はドリブルせずにガッシリと構えて、相手を睨んだ。そして、一瞬の隙をみて抜き去った。

 

『くそっ』

 

ゴール手前でよろめいた純也であったが。気合でねじ込んだのであった。

 

ワァァァ!

 

会場からの声援がケルベロスがゴールを決めたときより大きかった。ケルベロスがおかしいことは会場中が気づいていた。





 ケルベロスのオフェンス。わざとらしく純也に向かっていき軽く接触した。軽い接触でも純也はふらついてしまう。


『ヘッ、チョロいもんだ』

 

ケルベロスは純也のところから次々と得点を重ねていった。気合で何本か止めるが次第にその点差が広がっていく。優とカズがドライブ、スリーポイントなどで粘るも1人がなかなか機能しないようでは限界が見え始めていた。

 

そして、前半終了のブザーが会場に鳴り響いた。13対22という大差でケルベロスがリードしていた。


 

お互いの選手たちはベンチに戻る。Skybombのメンバーもベンチにもどり腰をおろしていた。


純也が肩で息をし、下を向いたまま動かなかった。

「なぁ純也? ケルベロスのやつらか?」


 カズは何か気づいたようだった。洞察能力は非常に優れている選手なのである。


「……ああ」


 純也は顔を下げたままそれに答える。優がその先を聞こうとした時だった。


『なんだ負けてるじゃねぇかよ』


 突然ベンチのすぐ横から聞き覚えのある声が聞こえた。3人とも声のした方を見る。


 そこには優のバンドのボーカルの京介と久留美がいた。


「京介! 無事だったのか!?」


 純也が驚きながら叫んでいた。


『まぁな、さすがにちょっと手強かったけどな』


そう言って京介は笑った。


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