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No.6 空腹

「うう……」


「ジュン、気がついた?」


 目が覚めると久留美がこっちを見ながら話し掛けてくる。


 俺は何とかバスケ部に殴り込んで試合をしたことを思い出した。


「ここは?」


「バスケ部の部室よ。ジュンがいきなり倒れて大変だったんだから。どうして倒れたのよ?」


――あれ? 何でだっけ?


その時だった。


『グゥゥゥゥッッ』


 俺の腹が鳴った。そうだ! 思い出したぞ!思い出したら余計に腹が減って…


「朝から何も食ってなかったから空腹で倒れた。久留美が弁当をくれないからだぞ?」


「なっ…何よぉ? 私だってジュンのせいで弁当食べる時間がなかったうえに先生に廊下に出されたんだから!」


――よく考えたら俺が悪いかな?


「ああ、悪かったな。スマン」


 突然の俺の謝罪が意外だったらしく久留美は驚いた顔をしている。


「え? ……も、もう別にいいわよ。過ぎたことだし」


 そして部室にいる二人は沈黙する。



「………」



…………



「お弁当食べていいわよ」


 先に沈黙を破ったのは久留美のほうだった。


「え?」


――何言ってんだコイツ?


「だからぁ、私のお弁当食べていいわよ」


「え? お前はどうするんだよ? 昼飯食ってねぇだろ?」

「私は朝食べたから大丈夫。どうするの!? いる? いらない?」


「いただきます」


 即決だった。


 とりあえず今は緊急事態だ。ありがたくもらっておこう。

 そして、久留美から渡された弁当をあけてみるとおいしそうな匂いがしてきた。

 腹が減っていた俺は一気にそれを口に運ぶ。


「う……うまい!」


「……本当?」


「ああ、母さんとは大違いだ」


「……そう」


 そして俺はまた食べるのを再開する。

 久留美が俺の顔を微笑みながら見ていたので顔に何かついていると思い、手をやってみるが何もない。


「なんだよ? ニヤニヤして気持ち悪いな」


「ち…違うわよバカ! 早く食べなさいよ。早く学校を出ないと閉められるんだから」


「閉められる? 今何時だ?」


 久留美は携帯を見る。


「……8時55分、大変!後5分で学校が閉まるわ」


「他のバスケ部員はどうしたんだよ!?」


「とっくに部活が終わって帰ったわよ」


「お前は? まさか俺を待って――」


「馬鹿なこと言ってると置いてくわよ!!」


 そう言って久留美は部室を出ていってしまった。


「お、お〜い! 弁当弁当!」


 残っていた弁当をしっかり食べてから俺は久留美の後を追い掛けた。


――――――


――――


――



「弁当ありがとうな」


「うん」


学校から自宅へ十五分の道を俺と久留美は歩いて帰っていた。


「なんでバスケはシャイニングウィーザードやっちゃあいけねぇんだよ?」


「当たり前でしょ? 退場になっちゃうわよ………あ!」


 そこで久留美は急に何かを思い出したように声をあげた。


「え〜、石川純也くん」


「あ? 何急に改まってんだよ」


 久留美はフフフと笑って話を続ける。


「今日はアナタに重大な発表があります!」


「ん? 何だ?」


「バスケ部入部おめでとうございまぁ〜す!! わぁ〜パチパチパチ」


「………」


「パチパチパチぃ〜」


――ん? ナニコレ?


「わぁ〜! ほら、ジュンもわぁ〜!」


――わぁ〜〜!!


……って


「何だよソレ!? 聞いてないぞ!?」


「ジュン、亮君に負けたじゃない?」


「負けてねぇ! それに入部届けだしてねぇし」


「それなら大丈夫。キャプテンがジュンが寝ている間にだしておいたから」


――あのキャプテン、やること早ぇ……



 そうな話をしているうちに家の前についてしまった。


「あ、久留美、弁当返すよ。うまかったぞ」


 俺は久留美に弁当箱を返した。


「……ありがとう」


「いいな久留美は。毎日こんな弁当を食うことができて。家は弁当無しだからなぁ」


「どうして?」

「そりゃあ俺、あまり学校に行かないだろ? だから母さんも妹の分しかつくらねぇんだよ」


 まったく、困った話だ。


「私、持ってきてあげようか? お弁当」


「え? お前の……」


――母さんに悪い


 そう言おうとしたときに、あることを思い出した。

 久留美は母さんがいなかった。小さい頃に亡くなってしまったのだ。

 父親はいるが仕事の都合で海外にいるのでほとんど家にいない。久留美は姉と二人暮しなのだ。

「誰が弁当を作ってんだ?」


「私……姉さんは料理まったくダメだもの」


「お、お前!?」


 意外だった。久留美にこんな才能があったんだなぁ。


「でも三人分作るのは大変じゃないのか?」


「大丈夫よ。量を多く作るだけだから。それに料理好きだし」


「じゃあお願いしますわ。毎日パンじゃなくてすむぜ」


「そんなもの食べる気だったの!? 部活中に倒れたらどうするのよ?」

「え〜? 本当に入部するのかよ?」


「あたりまえでしょ? 条件は条件よ」


 めんどくせぇ…まあ、コイツには恩があるしな。


「わかったよ。弁当のこともあるしよ」


「わかればよ〜し」


 そう言って久留美は家の玄関に向かって歩きだす。

 そして一言、


「じゃあね」


 と言って家の中に入っていった。


「じゃあな」


 俺も家の中に入ろうとする。そのときに何処からか声が聞こえてきた。

お兄ちゃん!


「絵梨佳!」


 そこにはニヤニヤしながらこっちをみている妹の絵梨佳がいた。


「ニヤァ………」


「………」



「ママ〜!! お兄ちゃんが久留美お姉ちゃんに――」


 そう叫びながら家の中へ走って入っていく。


「こら絵梨佳! まちやがれ!」


 すると今度は母さんが出てきた。


「本当なの!!? 純也!!ねぇ、アナタ、アナタァ!!」


「どうしたぁ? ママ!?」


 ち…近!! いつのまに親父、こんなに近くに?


「ねえ純也! どうなの? 久留美ちゃんとはどうなの?」


「ママみたいな人じゃなきゃだめだぞ!」


「アナタ……」


「愛してるよ……」


イチャイチャ…



 また始まったよ、コイツら。


 はぁ、長い一日だったなぁ。明日から部活かよ。



俺が部活ねぇ……


 



やっと1日が終わりです。テンポが悪くてすみません。

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