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No.60 まさかの事実

 相手の一人がドリブルして様子をみているようだ。カズがそれに隙の無いディフェンスでついていく。


 ボールが次の人に渡った途端だった。


 シュッ!



パスをもらった人の手から、すぐにシュートが放たれた。


――おいおい……嘘だろ? あんなデタラメシュート入るわけ………。




…………スパ!




 試合開始早々、いきなりスリーを叩きこまれてしまった。


『ないすしゅーと!』


『あんがど』


 シュートを決めた人が仲間に誉められ照れくさそうな様子だった。


「あの独特なシュートフォーム、まさかな………」


「ん? どうしたカズ?」


 俺は一人呟いているカズに話しかける。


「いや、なんでもない」


「そうか?」


「ああ、それより、次は俺たちの攻撃だぜ?」


「ああ」


 俺たちの攻撃が始まった。


 ボールがある程度まわり、俺にボールが渡る。


「いくぜ!」


 俺はディフェンスのデカイヤツをかわし、シュートしようとした。次の瞬間、


パーンッ!



「な!?」


 みごと、相手にブロックされてしまった。

 うそだろ!? 今完璧にかわしたはずなのに………。

ブロックが高い!


 そのままボールが相手に渡り、相手の攻撃。



 ガード対決。カズとのマッチアップだ。


 いくつもフェイントをかけるが、カズにはまったく無意味のようだった。


「ちっ」


 しびれをきらしたのか、相手はさっきのシュート決めたヤツにボールを渡そうとした。


キュッ!



 しかしボールは渡さずに、自らリングに突っ込んできたのだった。


「は、速い!?」


 カズはがんばってついて行こうとしたのだが、ギリギリでかわされてしまった。

 そのままシュートをきめられてしまう。


わぁぁぁ!


いいぞ!


歓声がさらに大きくなった。


「純也、絶対に気を抜くな」


「ん? 抜いてねぇよ。急にどうしたんだ?」


「あいつら、全員現役バスケ部だ。しかも名門のな」


「なんだって!?」


 俺と優の声がハモった。

「間違い無い……」


 カズは相手チームに向かって言った。


「おい、城清高校のやつらじゃないのか?」


「ギクッ!」


 ん? いま『ギクッ!』って言ったぞ。


「そ、そんな、自分達は城清高校なんていう創部24年目、昨年度はベスト4までいった笹岡監督率いる城清高校の部員じゃねんだべよ」


「バカッ! 詳しすぎるだろが!」


 ガードの人がスリーポイントを決めたヤツの頭を叩いた。


「イテッ! 何するべよ!」


「お前のせいで俺たちが城清学園の部員だってバレたらどうすんだよ! 関東大会近いし内緒にしておかないと!……………はっ!」



じ〜………。


 俺たちは冷めた目付きでガードの人をみる。


「ちっ、ちがう! 今のは冗談だ!」


じ〜…………。



俺は一応問掛けてみた。


「じゃあ聞くけどさ、なんでチーム名が城清なの?」


「そ、それはぁ……コイツ! コイツが勝手にきめたんだよ!」


 ガードのヤツがさっきスリーポイントを決めたヤツを指差す。


「んなごど言ってもよぉ、先輩が名前なんて適当につけれってわぁだぢさ言ってきたがら、つけたんだべよ。全部わぁだぢさまがせっきりにした先輩がわりんだべさ」


 もの凄いなまりだが、どうやらガードの人に訴えかけているようだ。


「アホッ! だからって、実際に自分達の高校名にするやつがいるか!…………はっ!」



じ〜…………。



「へ〜、実際に自分達の高校名にしたんだぁ」


 優がそうつぶやいた。


ギクッ!



「あ〜もう! ばれちまったものは仕方がねぇ!」


 そう言って帽子とマスク、サングラスを脱ぎ捨てた。

 そこにはスキンヘッドでいい感じのガタイの人がいた。

 スキンヘッドにあわせて、他の人たちも脱ぎ捨てる。


 そして、ガードのやつが言った。


「俺が城清高校7番、三年の石塚哲平いしづかてっぺいだ!」


 次にとなりの方言がすごい人が喋り始めた。


「城清の12番やってます、二年の杉山健祐っていいます。どうがよろしぐしてけろ」


 どこか『のべら〜』っとした様子で杉山は自己紹介を終えた。本当にコイツがさっきもの凄いシュートを決めたやつなのか?


 最後にでかいやつ。


「オ〜! みなサンハジメマシテ〜! ジョウセイガクエンの六番の大蔵・ソニン・裕康デ〜ス。三年デツヨ〜!」



「おい、外国人かよ!?」


「イイエ〜、ハーフデスノ〜!アンタタちイショよ〜ナカヨクしまショ〜!」


「よ、よろしく。こちらけそ………」


 何故かしらんが、腰が低くなってしまう優。


「おい、注意しろよ……」

 カズがそっと耳元で俺たちにいってきた。


「ガードの石塚はドライブの速さで有名な選手だ。気を抜くとすぐにとられるぞ……」


「さっきはやかったもんな……」


 優がカズの言葉を聞いてそう呟いた。


「ああ。それと、シューターの杉山は危険だ。速いモーションから繰り出されるシュートは木ノ下薫に匹敵するほどのレベルだ。速さなら木ノ下以上だな」


「そんなに凄いのか!?」

「ああ、デタラメに見えるフォームだが何故か決定率がたかい。狙った獲物は逃がさないスタイルから『ハンター杉山』と呼ばれているほどだ」



 真面目に言ってるのか?カズなら本気かな。




「最後に大蔵だ。彼はハーフということもあり、日本人離れしたバネをもっている動ける大型選手だ。2メートル相手でも十分マッチアップできる。」



 俺たちの会話を聞いた石塚が、語りかけてくる。


「へぇ〜、随分と俺たちに詳しいんだな。さすがは名門白川第一高校キャプテン、森村一輝だぜ」



「ポイントガードっていう仕事柄上こうなんだよ。わりいな」







……………………え?







…………………今なんて言った?







カズが……………







………………白川のキャプテン!?





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