No.58 油断
第三試合。
『フレー! フレー! skybomb!』
『まだいけるぞ〜!』
ちつ…何か急に周りが騒がしくなってきたな。俺はスコアに目をやった。
「くそっ、負けてんじゃねぇか!? 何やってんだよ!?」
『お前が原因だ』
この試合、敵のトラッシュトークにまんまと引っかかった俺が我を忘れて暴走してしまった。そして気がついたら試合も終盤だったという訳である。
カズと優の声がほぼシンクロしていた。ったく、イラつくぜ。
まぁ、俺に期待する後輩のためにも頑張らないとな…!
「いくぜ? ついてこいよ!」
『ああ』
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やや不調と思われた純也だったが、一度歯車が噛み合ったskybombの勢いは止まることを知らず、みるみるうちに敵チームとの点差を縮めていく。
そして、
「これで逆転だぁぁっ!」
純也のダンクが決まり、リングが揺れる。
『わぁぁぁっ!』
『いいぞぉっ!』
『ヒューヒュー!』
実力でも観客を味方につけたskybombだった。
アウトサイドからは優、インサイドからは純也、そして、それをアシストしつつどこからでも点をとれるカズ。
もはや、力の差は歴然であった。
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「危なかったな……」
カズが控室にてそう呟いた。
結局、俺たちの逆転勝利だった。負けたチームは納得のいかない顔をしていた。まぁ当たり前だろうが。色々と考え事をしちまったせいで調子が狂っちまった。
「まったく、一時はどうなるかと思ったぜ……」
「まぁ優。そう言うなって。前半は敵にハンデを与えてやったのさ」
「まったく……どこまで本気なんだか……」
微笑する優であった。
またもや快勝? で一日目の日程を終えた俺たちだった。
俺たちは明日にも試合を控えているので、寄り道などせずに家に真っ直ぐ帰ることにしたのだった。
明日、運命の時が始まる………。