No.56 LAINBOW
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午前の日程を終えた俺たちは昼食を食べに二階の観客席に向かっていた。そう、他の奴らの試合を見ながら飯を食べるためだ。
俺たちは午前の日程が詰まっていたぶん、午後の試合までにはまだまだ余裕があるとみての行動である。 二階席についた俺、優、カズ、久留美の四人はそれぞれ持ってきた弁当をひろげた。
ちなみに俺は久留美が来ることをしらなかったので、弁当は適当にコンビニで買い揃えてきた。沢山買ったのでスタミナがつきそうである。
久留美を見てみると、いつものように自分で作った手作り弁当を持ってきていた。カズも自分では作ってはいないだろうが、手作り弁当を持ってきていた。
そして優を見る。
バナナ、プリン、ポカリ、そしてお約束のカロリーメイト!!
「なぁ、優」
「ん?」
優は手に取っていたものをいったん食べるのをやめ、こちらをみる。
「お前、そんなもん食って足りるのかよ?」
「足りるとか足りないとかじゃなく、俺たちは午後からも試合があるんだぞ? これくらいが丁度いいのさ」
う〜ん……、そうかなぁ? 俺だったら試合中腹が減って倒れちまいそうなんだが。
そんなことを考えていると、久留美が俺の弁当を覗きこみながら言った。
「牛丼、オニギリ、カレー、牛乳…………ジュン、アンタは馬鹿なの? これから試合を控えてるっていうのに……見てるこっちが気持悪くなるわ」
「いやいや、俺はお前らみたいにヒョロくないんでね」
「もう………試合中調子が悪くなっても知らないんだから!」
「はいはい、わかってますよ」
まったく、久留美の心配症には困ったものだぜ。
やっと邪魔がいなくなったところで俺は待ちに待った昼飯を食べようとしたときだった。
『あ、あの………SkyBombのみなさんですよね!?』
「うん? そうだけど」
突然聞こえてきた男の声に優が反応する。俺はどうせまた優かカズのファンだろうと思い、気にせずに飯を食べ続ける。う〜ん、うまい!
『一回戦、二回戦とSkyBombの試合をみて感動しました! カズさんのキラーパス並のアシスト! 優さんの精度の高いスリーポイントシュート! 参考になりました!』
そらきた! どうしてこう優、カズファンが多いのだろうか? 俺が危険なイメージがあるからか?
俺は飯を中断して話しかけてきた男の方をみる。
短めのさっぱりした髪をしていて、背はそんなに大きくない。目はパッチリしていてキラキラ輝かせていた。優やカズのプレーをみて参考になったと言っているのだから、ガード系のポジションだろう。
「おう、サンキュ」
「あ、ありがとう」
カズと優は照れながらもその少年に答えた。
『それと、純也さん!』
ん? 何か用か? という顔で少年をみた。
『純也さんのプレーには本当に感動しました! 激しさの中にもテクニカルなドリブル、相手選手二人を吹っ飛ばしてしまうほどのパワー、小さいながらも豪快に決めるバリエーション豊富なダンクシュート!』
「おお!? そうかそうか! 俺に憧れたか。良いことだぞ、はっはっは」
俺のことを理解してくれるヤツがいたのか………。まだまだ捨てたもんじゃないな。
「ねぇ君、ジュンに影響されて危険な真似をしちゃだめよ?」
久留美がそんなことを少年に言っていた。
「しっしっ、久留美は引っ込んでろ、邪魔するな」
「もう、すぐに調子に乗るんだから……」
邪魔者を排除した俺は再び少年に話しかけた。
「そんで、お前もこの大会に参加してんのか?」
『はい、これから試合があるんですよ。試合前に是非とも挨拶をしておきたくて。他のメンバーは純也さんが怖くてくるのを嫌がってるんですけど、全然そんなことないですよね! 思ったとおりいい人でしたよ』
「ははは、そうかそうか! 理解のあるやつじゃ。くるしゅーない、くるしゅーない」
俺のテンションはどんどんあがっていた。
『同じフォワードとして憧れますね』
「ん?」
今何て? 同じフォワードがどうとか。
「お前フォワードなのか? そう言えば名前は?」
少年は慌てた様子で自己紹介を始めた。
『は、はい、小さいながらもフォワードやってます。名前は遅れましたが、玄武中学校三年の服部卓郎です。この大会にはlainbowというチームで参加してます』
「へぇ〜、中学生だったのか。まぁ予想はついたけど」
何の捻りもない、予想通りの展開だったな。実は三年生だった! とかいうオチを期待しちまったぜ。
『だから同じフォワードとして純也さんの動きは参考になります。まぁ真似はできませんけど』
「簡単に俺の真似が出来てたまるかっつ〜の」
『はは、そうですよね。だから僕はSkyBombとは勝敗関係なしに一度対戦してみたいです! 間近でみるとどんなものか楽しみですよ』
「おう、いいぜ。ただし容赦はしねぇけどな。俺たちは負けられねぇんだ。」
そう、俺たちはどんな相手でも負けることは出来ない。俺たちにはストバスのコートの命運がかかってるからな。
『僕たちがSkyBombと戦うには決勝まで行かないといけないんですよね。反対がわブロックですし』
卓郎はとても残念そうに言った。この大会はAブロック、Bブロックの二つに分かれており、決勝でA、Bのそれぞれのブロックを制覇したもの同士戦うことが出来るのだ。
「そうか……。まぁ、お前らの実力がどんなもんかは知らねぇけどなんとかなるだろ。頑張れよ」
そう言うと卓郎はまた目をキラキラさせた。
『ありがとうこざいます! 頑張りますよ! そろそろアップがあるので失礼します』
「おう」
卓郎はそう言って手を振りながら去っていった。
「ふふ、なかなか良いやつじゃのう」
「あんな真面目そうなやつがお前に近付いてくるなんて珍しいな」
今まで無言で弁当を食べていたカズがそう言ってきた。確に、俺に話しかけてくるヤツといえばストバスのコートにいるような野郎ばっかだ。
「ああ、どんなもんかねぇ〜」
俺は腕を頭の後ろに組み、天井を見上げた。
そして飯を食いながら、次に行われる服部卓郎たちの試合を待っていた。
――――――
――――
――
やがて卓郎率いるlainbowの試合が始まった。
服部のチームは服部以外はそれなりの身長があった。ただ服部が小さいだけかもしれないが。
服部たちのオフェンスでボールが何人かの手に渡った後、服部に渡った。
そして、
――はやい!
俺はそう思った。一気に二人抜いたかと思うとアッサリとシュート決めてしまった。
「へぇ〜、なかなかやるじゃん」
カズが隣で呟いた。スピードに関しては合格点のようだ。
相手のオフェンスにそなえ今度は服部たちがディフェンスをする。
相手のやみくもに放ったシュートは外れて外に弾き出された。そのボールに服部は物凄い勢いで飛び付いた。
「高いな」
今度は優がそう呟いた。背が低いわりには高く飛ぶようだ。ダンクはまだまた出来ないようであるが。
オフェンスに関しても、服部は、ミドルからなども決めチームのほとんどの点数をとっていた。
俺のプレーが参考になると言っていたので、どんなタイプかと思っていたのだが、俺とは全くの違うタイプのようだった。それはそれで面白いけどな。
結局、服部率いるlainbowは圧勝だった。
――――――
――――
――
『勝ちました〜』
試合が終り服部が駆け寄ってきた。
「おう、お疲れさん。楽勝だったな」
俺も返事をかえす。
『SkyBombのみなさんが見てると思うと緊張して大変でしたよ』
「その割にはいい動きだったな。決勝までこれるんじゃないのか?」
『う〜ん、頑張りますよ。とりあえず次の試合を頑張ります』
「俺たちも負けられねぇか」
俺は優、カズの方をみた。
「よし、そろそろ試合だし、アップでもしに行くか!」
『ああ』
カズの一声に俺たちは続いた。
そしてコートへと向かっていった。