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No.54 ファール?

『それでは、次の試合の方、それぞれ準備に入ってください!』


 控室中にスタッフの声がなり響いた。


「よし、行くか」


『おう!』


 カズの掛け声に、俺たち二人が続く。

 次はいよいよ俺たちの試合だ。

 長い廊下を三人ならんで歩いていく。

 体育館からまだ少し離れているにもかかわらず、大音量のBGMが、俺たちの耳になり響いていた。


 そして、大きな扉の前に立ち、その扉を開けた。




………………。




『ワァァァァァッッ!』



 二回戦というのに、凄い歓声だった。


「凄いな……」


 優がそう呟いていた。

 まぁ、一回戦あれだけハデにやったんだから、しょうがねぇか……。



 『それでは、SkyBombの皆さんはシューティングを開始してください』


 どこからか聞こえたアナウンスに従い、俺たちは練習を開始した。

 前試合の用にハデにやるのはやめておこうか………。


俺たちは黙々とシューティングをこなす。

そして、


『シューティングを終了してください』


 再びアナウンスが聞こえた。

 俺たちは試合開始を待ちベンチに座った。


「なぁ、ジュン。俺たちの次の相手って誰なんだ?」


 優が話しかけてくる。確に俺たちは次の敵がどんな奴らかわからなかった。


『ヤンキーズの入場です』


 アナウンスが終了すると同時に、対戦相手が入場してくる。

 ヤンキーズとはまたまたベタな………。


 そして、ヤンキーズと呼ばれたやつらが姿を現したのだった。


「あ!!」


『あ!!』


 俺はヤンキーズに見覚えのあるヤツがいて、思わず声をあげてしまった。相手も俺に気づき声をあげた。

『お前は………』


「ん? 純也、知り合いなのか?」


 カズが不思議そうに俺に問いかける。優も同じ様子だった。


「コイツがさっちトイレで俺にからんできやがったクソガキだ」


 まさか、次の対戦相手がクソガキだったとは……。


『なんだと!?』


 俺の言葉を聞いたクソガキは怒ってとびかかってきた。 


『やめろって! 退場になるぞ!』


 それを、他の仲間が必死に止める。これはチャンスだな!


「おい、テメー」


『あ!?』


 クソガキは仲間に取り押さえられている状態で俺をにらみつけてくる。


「や〜い、クソガキ〜! トイレのモップ〜! 負け犬!」


『こ、このやろ!!』


『やめろって!』


『うるせぇ! アイツは俺が殺す!』


「や〜いや〜い! トイレモップに俺が殺せるかな? トイレにダイブしてたクセによぉ〜、ケラケラ」


『ぬぉぉぉ』


 クソガキの怒りは頂点に達している様子だった。


『コラッ! 君たち!』


 ん? 何だ? 誰なんだ俺の邪魔をするヤツは?


 俺は新たに声をしたほうを振り向く。

 そこには、この大会の審判みたいなやつがいた。


『なにをしているんだ? これ以上ヒドイようなら両者退場にするぞ?』


『ちっ』


 その言葉を聞いたクソガキは渋々自分のベンチに向かった。いい気味だな。


「おい純也、ほどほどにしとけよ、退場にされたらかなわん」


「まぁまぁカズ、そう言うなよ。かるくからかってやっただけだ」


「まったく……」


 カズは軽く笑みを浮かべ、ヤンキーズの方をみた。俺もしかたがなく見てみる。

 どうやらシューティングをしているようだった。

 特にめだったヤツはいなく、そこそこと言う感じだ。

へっ、これなら楽勝だな!


 俺たちはシューティングを見ながら、静かに試合開始を待った。


――――――


――――


――




『両者、コートに入り並んでください』


 やっとシューティングが終わったようだな。

 俺たちは軽く体を動かしながらコートに入る。


 クソガキの方を見てみると案の定俺を睨みつけていた。


「そんなに怒るなって。モップ」


『俺の名前はサエジマだ! 俺らとあたったことを後悔させてやる!』


「へいへい」


 どうやって後悔させるんだか……。


 そして試合が始まった。

 先攻はジャンケンで勝った俺たちだ。

 カズがドリブルをしながら辺りを見渡す。


『キョロキョロよそ見してんじゃねぇ!』


 サエジマがスティールを狙いに飛び出した。


 ヒョイッ!


「ハズレ」


『!?』


 カズは逆をつき、サエジマを抜き去る。


 そしてそのままシュートを決めて2―0とした。


『ちくしょう!』


 サエジマたちの攻撃が始まった。

 ボールがある程度回り、サエジマが強引に突っ込んできた。


 バシッ!


 俺はうまくタイミングを合わせてブロックした。


「その程度で俺を殺せるのかい?」


『くそ……』


 その後、カズのアシストにより、優がスリーポイントを決める。


 スパッ!


「優! ナイス!」


「お、おう! なんとか腕は鈍っていないようだ」


 俺が声をかけると優は照れくさそうに反応した。

 優はしばらくのブランクがあるのにもかかわらず、完璧に近いフォームで決めていた。さすがだな。

 そのあとも、カズと優が目立つ試合展開となり、確実に点を決めていった。俺はハデなことはせず、それなりに決めたのだった。

 そして前半の終了。


 21―6で俺たちの圧勝だった。その後の展開も分かりきった様なものだな。

「よし! 優、カズ、よくやった!」


「おう!」


「ああ」


 優とカズがそれぞれ答える。おれはサエジマ率いるヤンキーズに聞こえる声で二人に言った。


「今回の敵もあまりたいしたことねぇな。このまま楽勝だぜ!」


『あ、ああ』


 複雑そうに応答する優とカズだった。


************



『くっ………クソが!』


 サエジマが怒りをあらわにする。とても悔しそうな顔をしながら地面を蹴った。

そして他のメンバーに言った。


『よし………こうなったら負けてもかまわねぇ。アイツらを生きて帰すな! アイツらに本当のストリートってのを見せてやろうぜ!』


 サエジマの言葉にうなずく他のメンバーだった。



************


 そして、残りの10分の後半戦が始まった。


 ヤンキーズのオフェンス。

 ヤンキーズはボールを回し、ポストに入った選手にボールが回った。

 その選手はそのままシュートにいこうとする。

 俺はすかさずブロックに飛ぼうとしたのだが、


「な!?」


 シューターが俺のつま先に乗り、シュートをしてきたのだ。これでは跳べない。

 ボールはそのまま選手の手から放たれ、リングの中を通過した。


『ナイスシュート!』


『ああ』


 相手チームは挑発するかのように喜んでいた。


「ヤロウ………」


 俺が怒っていることに気付いたのか、カズが慌てて俺に話し掛けた。


「純也、落ち着け。退場したら元も子もないぞ」


 確に………。商店街裏のストバスのコートが無くなっちまう。


「ちっ……しょうがねぇ」


 再び試合を再会する。

 今度は俺たちのオフェンスだ。先程の借りを返さなくてはな。


 カズがドリブルをして、優にボールを渡す。

 そして中に切り込んだカズは優からボールをもらい、そのままシュートにいく。


『させるか!!』


ドスッ!


 ヤンキーズのサエジマの肘打ちがカズにヒットした。ボールは反動でリングから外れてしまった。


 そのボールをヤンキーズがリバウンドした。


「今のファールだろ!」


 優がたまらず審判にどなった。その優に対し、ヤンキーズのメンバーたちは罵声を浴びせる。


『おいおい、審判にケチつけんじゃねぇよ!』


『ストリートバスケではこのくらいの接触はあたりまえだっつ〜の!』


『ははははは!』


 確に奴らのいってることは正しい。ここは生温いバスケをする場所ではない。俺たちメンバーも黙ってディフェンスにまわった。


 ヤンキーズのオフェンスが始まる。

 一度中に入ったボールが外にいる選手に出される。その選手はそのままスリーポイントを狙った。

 優がそれにあわせてブロックに跳ぶ。


『へっ!』


 シューターは後ろに跳びながらシュートを放つ。

そう、フェイドアウェイだ。後ろに倒れこむと同時に優の腹にケリを入れた。


「ぐっ……」


 『く』の字に折れ曲がる優だった。

「今のは………ファールだろ……」


 苦しみながらも訴える優。しかし、審判の出した答えはNOであった。偶然と判断されたらしい。


「なぁ、カズ。どうする?」


 俺はカズに近寄っていき話し掛ける。


「これ以上調子に乗らせるとマズイな」


 そして、カズは笑いながら俺に向かって喋った。


「よし、純也。容赦しなくていいからおもいっきりやれ。ただし『バスケット』でな」



 バスケット?



 ああ、なるほどね。


『おい、早くしろよ!』


 ヤンキーズのクソヤロウどもが煽る。


「優、大丈夫か?」


「ああ、純也。大丈夫だ」


「俺、ちょっと頑張っちゃうから、アシストよろしくな」


 その言葉を聞いた優は少し考えてから、笑いながら、


「ああ、容赦するな」


と答えた。




 俺たちのオフェンスの番。

 変に燃え上がる俺たちだった。





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