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No.51 開幕

 ストリートバスケ大会当日――


 俺、優、そしてカズの三人は大会に参加するべく、市の体育館に集合していた。

 休日と言うこともあって、かなりの人が集まっている。

 年齢は高校生から20代前半くらいまで。有名な大会なので、実力者が多く集まる。

 実は今日、関東カップが近いということで当然のように朱雀高校バスケ部は大会に向けて練習があった。 その件については、キャプテンの薫には風邪をひいたと言って仮病を使った。


 これで俺の関東カップベンチスタートは決まったようなものだな。


 俺、優、カズは大会にエントリーするべく、市民体育館の中へと入った。

 玄関からすこし歩いたところに、受付がある。

受付の人は、二十歳前後の女。俺たちが目の前に立つと、笑顔で話しかけてきた。




『ようこそ! Street boysへ。エントリーの方ですか!?』


 受付の女はとてもキラキラさせた目で俺たちを見た。

 いや、俺たちと言うより『優』と『カズ』だろう。イケメンコンビに囲まれて喜んでるってか?

 ちっ! くだらねぇ!



 「え……ええ」



 優が受付に対応する。どうやら迫力負けしているようだ。


『本当に!? じゃあエントリーしますので、チーム名を教えてください。ついでに名前も聞いちゃおうかしら。ウフッ』


 その言葉に対して優は軽く笑いながら答える。


「え〜と………チーム名は『Sky Bomb』でお願いします。名前は…………柿崎優です。一応フォワードかな?」


 ちなみに『Sky Bomb』とは、俺たちが考えた名前だ。

 優はそう言って俺たちを見た。おそらく、次はお前たちが名前を言え、と言うことだろう。

 優の合図を悟ったカズが自己紹介した。


「カズです。ガードっす」 よし、俺の出番だな。この大会のヒーローになる男だからな。名前くらいは覚えていてくれないとこまる。


 俺は口を開いて自己紹介する。


「どうも、センターの石川――」


『へぇ〜、優くんにカズくんかぁ。お姉さん応援しちゃおっかな?頑張ってね!』


 ………………。




 ………………ん?




 ………………ナニコレ?




『試合絶対に見に行くからね!』




 ………………。




 ………………。




 ………………うん。






「こぉらぁぁ!! このクソアマ!!」



「おい純也! よせって!」


 暴走する俺を慌てて優が引き止める。


「うがぁぁぁぁ!」



「う、受付のお姉さん!! 控室はどっち!?」



『え………あ、あっちです』


 受付の女はそう言って控室の方向を指差す。



「ありがとうございます!」


 優は俺を引き連れその方向へ走った。


「うがぁぁぁ!」



 取り残されたカズはただ一人、


「やれやれ………」


 と言って控室に歩いて向かった。




 ………………。




『な、何だったんだろう?』


 状況を飲み込めない受付であった。



――――――



――――



――



「あの受付、許さん!」


「まぁまぁ落ち着けって」


 優が俺に向かって言った。


「んなこと言ってもよぉ」


ここは控室。


 エントリーを終えた選手たちが集まって、色々雑談をしているようだ。

 高校生らしき人も何人かいるが、大人の方が多い。


 開会式とか訳のわからんようなものを終え、ひとまず休憩ってところだ。

 参加チームは全部で29チーム。強そうなやつらもいたなぁ……。まぁ勝つけど。

 この大会は二日に渡って行われる。俺たちはシードでは無いので、五回勝てば優勝という事になる。今日は三試合、明日は二試合やる予定。

 第一試合のやつらが終われば、次は俺たちの番。つまり第二試合が俺たちの試合だ。



「そろそろ体あっためておこーぜ?」


 そう言ったのはカズだった。


「おう」


 俺と優は同時に返事をしてアップを開始する。

 軽いランニングからのストレッチ。ボールを触れるのは試合直前のシューティングだけなので、今はこれを念入りにやっておくことにする。


 しばらくして、体があったまってきた頃だった。



『それでは、第二試合の方、準備をお願いします!』


 この大会のスタッフの人が広い控室に響きわたるような声で言った。俺は二人に向かって叫ぶ。



「よっしゃ! 行くか!」


『おう!』


 俺たち三人は気合いを入れ、会場へと向かった。




 長い廊下を歩いて、一番奥の扉を開ければ、会場がある。声援がここまで聞こえるってことは、第一試合も終わりそうで最後の白熱した展開だからであろう。


 俺たちは廊下の一番奥の扉を開けた。



『ワァァァァァッッ!』



『オォォォォォッッ!』



物凄い声援だった。スーリートの大会は普段大音量のBGMが流れているのだが、その音量に負けないくらい凄い声援だった。

 やがて試合が終わり、声援が先程より低くなった。


『第二試合の選手はシューティングを開始してください』



「おっしゃ!」


 俺たちは三人は声をそろえ、コートに飛び出していた。

 そして、すぐさまシューティングを開始する。



『キャー優く〜ん!!』


『カズく〜ん! 頑張って〜!』


 あ〜、また始まったよ………。俺にも少しくらい応援してくれよ!



『純也〜! 頑張れよ! ギャハハハ!』


 はぁ、あんな野郎ばっかだぜ………。なんだかムカついてきたぞ?


『ジュン〜! 応援してくあげるんだから、頑張りなさいよ〜』


 ん?


 俺はそう声のした方向を見てみる。

 そこには久留美がいた。


「久留美! お前部活はどうしたんだ?」


『休んじゃった。コートが無くなるかもしれないのに落ち着いていられないわ!』


 ああ、なるほどね。


「おう、まかせろ! 絶対に優勝してやる」


『負けたらゆるさないわよ?』


「わかったって!」


 俺はそう言ってシューティングに戻る。応援してくれているヤツがいるとわかれば、随分と気合いの入りかたも違ってくる。


 俺はフリースロー付近に立ち、観客に向かって手をあげアピールする。


『ん? 何だあいつ?』


『なにをする気だ?』



「ジュンったら………バカ」


 久留美が呆れた様子でこちらを見ていた。

 俺はアピールを終えたあと、カズにアイコンタクトを送った。


「ふっ、いいぜ。やってみろよ」


 カズは俺のアイコンタクトが通じたのか、シュート体勢に入った。


 俺もゴール向かって走り出して。



 カズの手からシュートが放たれる。



 そのシュートは決してリングに入ることは無い。



 なぜなら、俺へのパスなのだから。



 俺はおもいっきりリングに向かってジャンプした。


 そのまま空中で、カズの放ったボールをキャッチする。



 そして、ボールをリングに叩き込んだ。




 ゴォォン!!



 凄まじい音がコートになり響く。



『……………』



 一瞬の静寂のあと、一気に歓声が膨れ上がった。



『ワァァァァッ!』


『アリウープかよ! やってくれるぜぇ!』



「へっ、こんなことも出来るんだぜ?」


 俺はフリースローラインに戻った。

 そして、再びリングに向かってドリブルをしながら走り出す。


 一定の距離に近付き、俺はまたジャンプした。



 ボールを空中で一回転させる。大きい円を意識しながら。



 ドォォン!



『ヒュー! いいぞ〜!』


『今度はウィンドミルかよ!』



「お前らよく聞け!」


『ん? 今度は何だ?』


 歓声収まったのを確認して、俺は叫んだ。


「俺がこのSky Bombの爆弾、石川純也だ!! 覚えてろ!」


 特に、受付の女!


『オォォォォォッッ!』


『いいぞ〜、爆弾! 応援してやる!!』



********




 え〜、どうも柿崎優です。

 突然ですが、今のダンクはウィンドミルですね。

 なぜ、今日は純也君がハイレベルなダンクを連発出来るかと言いますと、ストリートのリングは公式のリングより10Cmほど低くなっています。

 これは、派手なプレイを多くするためであり、だからこそ純也君はハイレベルなダンクが出来たのでしょう。

 これは、期待できそうですね。


 それでは、失礼しました。


********



「純也、完全に観客を味方につけたな」


 カズが俺に近づき、そう言った。


「よしっ、これで頑張らないわけにはいかねぇぞ?」


 その後の一回戦は楽勝で勝利だった。


 完全に観客を味方につけた俺たちは、びびって小さくなっている相手を楽勝で倒した。

 どうやら今日は優の調子も良いらしく、スリーポイントも結構決まるみたいだ。



 あと、四回勝てば優勝だな。


 この調子でがんばらないとな。


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