No.5 ゲーム終了?
「純也、いくぜ?」
「ああ、こいよ」
今度は亮がオフェンスだ。
亮がドリブルをして純也を抜き去ろうとする。
「……はえぇっ!!?」
!!
純也は苦し紛れにもなんとか止める。
「おい純也。俺からボールがとれるか?」
「へっ、楽勝だぜ!」
そう言って純也はスティールを狙う。
しかし、亮のボールキープ力が凄まじくボールに触れることすらできなかった。
「くそっ!!コイツ、なんちゅう低いドリブルなんだよ!」
そんな二人の勝負をみながら久留美は薫に話し掛ける。
「凄いですね。亮さんは」
「ああ、よく朱雀に来てくれたものだ。間違いなくレギュラーだろう」
「やはりレギュラーですか……。そういえばなぜジュンにあの条件を?」
薫はかるく微笑んでから答える。
「ああ、ヤツは朱雀に足りない何かをもっている気がするんだ。アイツは何か凄いことをやってくれそうな気がする………そう思わないか?」
「そうですかぁ? 私はチームワークを乱しそうな気がするんですが」
「ははは、そうかもな。まあ見ててくれ。今にきっと何かをやってくれるさ」
そんな薫の台詞に疑問を感じながらも久留美は二人の試合を見る。
「どうしたぁ!? ドリブルが遅くなってきたぜ?」
「ふ、これは止められるか」
亮がドリブルでつっこんできた。「クロスオーバー(ドリブルする手を左右切り替える動作)か!? 速ぇ!!」
亮は純也を抜いた。そしてゴールに向かって行く。
――しまった! 抜かれた!これでは薫との勝負が…
薫は久留美に向かって言った。
「見ていろ。ここできっとヤツは何かをやってくれる」
「………」
久留美は薫の言葉を信じて二人の試合を見つめる。
――くそ! ブロックに飛んでも間に合わねぇ!こうなったら……
亮はシュートフォームに入っていた。
「これで終わりだ!!」
そのときだった。
「シャイニングウィーザード!!」
ドス!!
「ぐおっ!」
純也の放ったヒザげりが亮にクリーンヒットする。
亮はそのまま床に倒れてしまった。
…………
「や……やらかしてくれたわね」
久留美はそう言い薫のほうを見る。
『プシュー〜パショー』
明後日の方向を見ながら口笛を吹いていた。
――吹けてないし!! キャプテン、実はこんなキャラなのかしら?
純也が薫に駆け寄ってくる。
「おい薫! 亮っていうヤツを倒したぞ!」
「………」
薫はこのときこう思っていただろう。
――どこからつっこめば良いのかわからん……
「どうした薫? 約束だろ? 勝負しろ」
薫は純也の顔を見る。
純粋な少年のように目をキラキラ輝かせていた。
きっと薫が勝負してくれると思っているのだろう。
「純也……」
「あ? 何だよ? 早くしてくれよ」
薫は本当に言いずらそうだが、なんとか純也の言葉に答える。
「……反則負けだ」
「はぁ!? なんでだよ! 亮に勝ったじゃねえか!」
その純也の言葉を聞いて亮は怒りながら純也に向かって走って行く。
「勝ってねぇよ!! 俺は負けてねぇ」
「うるせぇ負け犬チビ」
「お前とたいして身長かわらねーよ」
純也と亮が喧嘩を始めてしまった。
その喧嘩を止めるように薫が言った。
「純也、バスケットはパンチやキック、頭つきはもちろん、シャイニングウィーザードもやってはいけないんだ」
「はぁ? なんでだよ!? ストバスでは普通によかったぞ」
「それはお前達のルールだぞ。とにかくお前は反則負けだ」
「はぁ? 納得いか――」
グゥゥゥゥッッ!
突然、純也の腹が鳴る。
「ぐおぉっ……今日一日なにも食ってなかった」
――そう考えると急に力が抜けて意識が……
バタッ
そして純也は倒れてしまった。
「ジュン!!」
「純也!! どうした!?」
体育館に久留美と薫の声が響き渡った。