No.49 ピンチ!?
事件は関東大会まで残すところあと5日というときに起きた。
今日は水曜日。来週の月曜から四日間の日程で関東大会が開かれる。
俺はいつも通り、部活を終え久留美と自宅への道を帰っていた。
「関東大会、私たちどうなるかな?」
久留美が歩きながら俺に話し掛ける。
「ま、優勝だろ。楽勝で」
「はあ、アナタのその自信はどこからわいてくるのよ?」
「知らん」
俺はきっぱりと答えるた。この会話は今回の話には直接関係ない。
このようなどうでもよい話がしばらく続いた。
やがて、家に辿り着く。
「じゃあね、ジュン」
「おう! じゃあな」
いつものように久留美と別れてから俺は自宅へと入る。
「ただいま」
『あ、お兄ちゃんお帰り〜』
玄関に入ると、まず、妹の絵梨佳が出迎えてくれた。
「おう、腹へったから飯食うわ」
『うん』
俺はそう言って台所に向かう。
いつも部活で遅くに帰るので、俺が飯を食う頃にはもう既に、親父以外の奴らは飯をすませていた。
親父はまだ仕事だろう。帰る時間が固定されていないので『家族全員がそろうまでご飯は食べない』などというルールは我が家にはない。
「いただきます! モグムグ」
……………。
……………。
「ゴチソウサマデシタ!!」
あっと言う間にご飯をたいらげた俺は風呂に入るべく、風呂場へと向かったのだった。
脱衣所のドアを開けようとしたのだが…………。
ガチャ
「ん?」
どうやら鍵がかかっているようだ。試しにノックをしてみる。
コンコンコン!
『あ! 私入ってるから!』
「あ! スマンね」
どうやら先客がいたらしい。声からして妹の絵梨佳だろう。
俺はこの間の暇を潰すために部屋に向かおうとした。
この時、事態は突然にやってきた。
ピンポーン!
「ん? 誰だ?」
突然、家のインターホンが鳴り響いた。
ピンポーン!
ピンポーン!
ピンポーン!
客は何やら焦っているようだった。俺はめんどくさそうに玄関に向かう。
ピンポーン!
ピンポーン!
「わかったって! 今出るから!」
ガチャ!
俺は鍵をあけ、玄関の扉を開けた。
そこにいたのは何とも意外に……。
「優? どうしたんだよ。こんな夜になってから」
「ジュン! 大変だ!」
優にはめずらしい大声だった。きっと何かあるに違いない。
「どうしたんだよ? 大声なんかだして」
俺は優を落ち着かせるように言った。
だが、優は相変わらず調子をかえずにしゃべり続けた。
「とにかく大変なんだ!! 落ち着いて聞いてくれ!」
うん。この状況なら間違いなく誰でも『お前が落ち着けよ』って言うだろうね。ベタなツッコミパターンさ。
だが、そんなコメディーチックな雰囲気ではないことを察し、俺は優に真面目な顔で話し掛ける。
「ああ、どうしたんだ? 言ってみろ」
「ああ」
次の瞬間、優の話した内容を聞き、理解した俺は驚きの顔となる。
「なんだって!?」
――――――
――――
――
ここは商店街裏のストリートバスケットのコート。
そう、いつものお馴染みの場所である。
時刻は既に九時を回っている。太陽が隠れて現われた闇を、コート専用のライトが辺りを照らす。
そのライトが照らしだした先に俺たちがいた。
人数は九時を回ったと言うのに二十人近くは居る。
全員が円の中心を向くようにして座っている。
「今日みんなにここに集まってもらったのは、大事な話をするためだ」
俺は語りはじめた。
「驚かないで聞いてほしい、いいか?」
ゴクリ
周囲がみな、唾をのんだ。
静寂だけがこの場を支配していた。
俺が次の言葉を言うまでは――。
「このコートが……正確に言うとこの空き地だった土地が買われるらしい」
『?』
クエスチョンマークがみんなの頭に浮かんだ。まだ理解していないのだろう。
「要するに、このコートが無くなるってことだ」
…………。
…………。
『え〜!!!???』
一瞬の沈黙のあと、予想どおり驚きの声があがった。