No.47 たこ焼き地獄!? 前編
佐川商業との練習試合が終わり、俺は家に帰宅した。
そのまま部屋に入ると、ベットに倒れこむようにして居眠りを始める。
………………。
――関東大会は、やはりベンチスタートなのか?
今日の試合、あれだけ派手に暴れたのだからしょうがねぇか……。
…………。
まあいいや。寝よ。
今の俺を邪魔するものは無い。一眠りしてから晩ご飯といこうか。
…………。
…………。
だんだん意識が薄れてきた。まるで、ふわふわした雲のうえに寝ているようだ。今の俺の睡眠を邪魔でもするようなら一瞬で抹殺してやる。
…………。
…………。
『チャラララチャララ♪』
――なんだよ? 俺は寝るんだ。邪魔すんな。
突然鳴った携帯電話を無視して俺は眠り続ける。
『チャラララチャララ♪』
…………。
『チャラララチャララ♪』
…………。
『ウフッ♪』
――ウフッ!? なんだよウフッ!? って! また絵梨佳(妹)のヤツ勝手に俺の携帯いじったな!
まぁいいや、寝よ。
…………。
『…………』
やがて携帯も止まったようだ。あとで掛け直すから今は寝かせろ。
…………。
…………。
『チャラララチャララ♪』
再び携帯電話が騒ぎ始めた。
――うるせぇな、静かにしろい!
…………。
…………。
『チャラララチャララ♪』
…………。
…………。
『純也くん? 起きて! エサの時間よ?』
――エサ!? とゆうかなんだこの着信音は?
『本当はいるんでしょ? でてきなさい☆お姉さんがお仕置きしてあげる☆』
桜さん!?
この声は間違いなく桜さんだ!!(NO.11にでてきた久留美の姉)
でも何で着信音が桜さんの声に!?
『絵梨佳ちゃんに協力してもらったのよ☆』
なるほど。どうもご丁寧に……って、
「何で俺の思ったことがわかるんだよ!?」
『純也くん? 電話にでて』
でるもんか。
『そんなに強情ならお姉さんだって考えがあるわよ☆』
考え? つぅか、しかし長い着信音だな。録音にどれだけ時間を費やしたのだろうか?
『純也くんの部屋のエッチな本の隠し場所を久留美に教えちゃいま〜す☆』
絶対にでるもんか。だいたい隠し場所なんてわかるはずがない。
『ベットの下と見せ掛けて押し入れの中の右から2番目の棚のすぐ近くの――』
「はい、もしもし」
「あら? 純也くん、もっと早くでなきゃダメでしょ☆」
電話にでると桜さんの声が聞こえてきた。
「桜さん、いったい何スか! あの着信音は!!」
「ウフフッ、内緒♪」
桜さん、おそるべし……。
「それで、何のようですか?」
「う〜ん………」
「………」
電話の向こうで頭を抱えながら悩んでいる桜さんが想像できる。
「え〜と………」
「………」
「何だっけ?」
ドカッ!!
知るか!!
「用が無いなら俺寝るんで……」
「あ〜! 思い出したわ☆」
急に耳が痛くなるほど声のトーンがあがる。
「何でしょう?」
「考えてる暇は無いわ!! 急いで春風家に集合よ☆遅れたら隠し場所いっちゃうよ〜♪」
ガチャッ!
ツー
ツー
「一刻も早く急がなければ!!」
――――――
――――
――
「おじゃましま〜す」
『はいは〜い☆』
家の中に入ると奥からエプロン姿の桜さんがでてきた。
「あの〜、何ですか、用事って?」
「とりあえず上がって☆」
「あ、はい」
そう言って家のなかに入る。
キッチンに近づくにつれて何やらいい匂いがするのは気のせいか?
そして台所に案内されたときだった。
「……桜さん、何スか? この物体は?」
『えっ? 純也くん、どう見てもたこ焼きじゃない☆』
それはわかる。紛れもないたこ焼きだ。
だが量がハンパじゃない。大きめの皿にこれでもか!! ってくらいたこ焼きが山積みになっていた。
「あっ、ジュン。来てたの」
今度は久留美が現われた。こちらもエプロン姿だった。
「ああ、所で、なぜこんなにたこ焼きが山積みになっているんだ?」
久留美は腰に手を当て、悩ましげな顔で答えた。
「私が今日の試合のスコアを整理していて、少しの間お姉ちゃんから目を離したら、この通りよ」
桜さん、おそるべし……。
「桜さん、何でこんなに作ったんですか?」
無駄だと思うが、一応問い掛けてみる。
「だってぇ〜……たこ焼きがだんだん丸くなって面白かったんだモン☆」
やっぱりな。どうせそんなことだろうと思ったよ。
「それで、食べきれないから俺を呼んだと」
「そうよ☆」
そう言って桜さんは笑ってみせる。とても癒される笑顔だ。
「しょうがない……食べるか」
「うん☆ウフフ、純也くんのエライエライ♪」
「そうね、それじゃあ食べましょうか。ジュン、お姉ちゃん、はい、お皿」
「あ、サンキュ」
「ありがとう☆」
久留美の手から皿が手渡される。
俺は山積みになったたこ焼きから何個か取り、ソースをかけて食べてみる。
………。
………あ
「うまい!」
「ふはひ☆(うまい)」
「おいし〜」
三人ほぼ同時に声をあげた。
確かにうまい。手作りにしてはなかなかの味である。
「桜さん、うまいっすね! これだったら全部食べられるんじゃないんですか?」
「そうね☆これだけの量でも何とかなるかも♪」
『よぉ〜し、食べるぞ〜』
気合いを入れてたこ焼き(山積み)に挑む俺たちだった。