表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/152

No.46 ライバル心

そして、


『わぁ!!』


『す、すげぇ! ダンクだぜ?』


『トマホークかよ!?』


 的味方関係なく声援が純也に向けられた。

 それに調子にのった純也は、リングにぶらさがったままピースサインなどをしている。


「イエーイ! みたか野郎共!」


ピィー!


「ん?」


 突然審判の笛が鳴り響く。そして、


『ファール!』


「はぁ!? 何でだよ?」


 その純也の頭を亮は叩いた。


「イテ!? なんだよ!?」


「ぶらさがりすぎだ。ちゃんと手を上げろ」


「なんじゃそりゃあ? そんなルール知らねぇよ。ダンクの特権は敗北者を見下ろすことだろうが!?」


 薫が純也に近付き、呆れた様子で注意した。


「はぁ……途中までは良かったんだが、まだまだだったな」


「今のは完璧だろうが!!」


『青、6番、手を挙げて』


 審判が純也に向かって注意した。


「ちぇ、しょうがねぇな」


 渋々手を挙げたのだった。



 その後も、永瀬のドライブ、純也のゴール下、さらに駄目押しの木ノ下薫のスリーポイントにより、朱雀高校は爆発的な得点力を見せる。

 博司は少々相手が悪く、少しばかり失点がみられたが、練習の成果がでて、最小失点に抑えることに成功する。


 相手チームの加藤は、リズムが崩れてしまいまったくシュートが決まらなくなったのだった。


 朱雀の欠点がみられたと言えば純也のファールだ。


 純也はダンクによるチャージング、荒々しいディフェンスによるファールが積み重なり、試合時間残り約一分と言うところで5個目のファールをし、試合初出場でわずか20分の間に初退場という、ある意味偉業を成し遂げた。


 試合が終わってみれば、83ー64という、前半の結果が嘘のような快勝だった。


石川純也の初出場(18分52秒)

合計16得点

ファール 5(退場)


 という結果に終わった。


――――――


――――


――



************


 ふぅ、勝った勝った。楽勝だったな。


 控え室に戻り、勝利の余韻に浸っていたときだった。


『しつれい』


 控え室のドアが開き、人が入ってきた。あれは確か……佐川商業の監督じゃねぇか?


『薫くんは居るかね?』


「はい? 何でしょう?」


 いきなり入るなり薫を指名してきやがった。


 佐川の監督は握手を求め、薫の前に手をだす。

 それに薫がてを重ね、握手をする。薫! チャンスじゃねぇか! 相手のボディがガラ空きじゃんかよ!!


『いい試合をさせてもらったよ』


 佐川の監督は薫に話し掛けた。それに薫が答える。


「いえ、こちらこそ、あのセンターはいい経験になりましたよ」


『はは、松岡か。ヤツはまだまだだったな。また1から鍛え直しだよ』


「そうですか……それじゃあ、ますますこれからの試合が厳しくなりますね。僕達も負けないように頑張りますよ」


『ははは、そうだな。お互いに頑張ろう! それと……』


 佐川の監督の顔が真面目な顔になる。


『後半からでてきた子何だが……あの坊主頭の6番』


 え!? 俺かよ?


「ああ、純也ですか。ヤツはまだまだですよ。試合では色々とご迷惑をおかけしました。なにせ、純也は公式バスケ初めてまだ一ヵ月なので、まだルールは完全に覚えてないんです」


『いっ、一ヵ月だって!?』


 監督の顔が驚愕の顔となる。

 いや、俺、一ヵ月って言ったって、小学三年生からバスケをやっていた訳で、ヘタをすりゃ、今の高校三年の奴らよりはバスケ暦は長い訳で……。


「ええ、ですから今日もわずか19分で退場という結果に……」



『ということは彼はまだ一年生か……いい部員が入ったな』


「はは、手はかかりますけどね」


 殺すぞ、薫! 俺はじゃが芋並みに手が掛からずに育つんだぞ!!



『これからの努力次第で、とんでもない化け物になるな。それと、薫くん。君に加藤からの伝言があるんだが……』


「加藤から、伝言?」


『ああ、今度会ったときは絶対に倒してやる、覚悟しな! ってね。ははは、とんだ恐れ知らずでして……加藤はなぜか薫くんにライバル心を持ってるんですよ』


「ライバル心……ですか。じゃあ俺からも伝えて下さい。『じゃあまず、不安定な精神をしっかりと治してからこい』と」


 佐川の監督は笑いながら答える。


『ははは、こりゃあヤツにいい薬になるな。ヤツは精神的にムラがありまして、今日から猛特訓をはじめるに違いない。それじゃあ、忙しいとこ、失礼したね』


「はい、ありがとうございました」


 パタン、とドアが締まり、監督の姿が見えなくなる。



 俺は薫に近づいて話し掛ける。


「ったく……最初から俺を試合に出していれば圧勝だったのによ」


「いや、まだまだお前は課題だらけだ。第一、スタメンで出場していたとしても、どっちにしろ19分で退場だから変わらないだろ」


「審判がファールを大げさに取りすぎなんだよ。どいつもポンポン吹っ飛びやがって……ちゃんと飯食ってんのかよ」


「お前のは荒々しすぎるんだ」


「公式ってのはメンドクセェぜ」


「やれやれ……」


 呆れた顔をする、薫だった。


 ころで来週の関東大会もベンチスタートかな?


 困ったものだぜ……。




************



 このとき、純也は来週の関東大会に思いもしない結果が待っていることは、まだまだ当然のように気付きもしなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ