No.45 ファール王
佐川商業との試合。
俺たち朱雀高校は、相手の長身センター松岡と、調子に乗らせると得点力が増す、フォワード加藤の二人によって前半戦終了45ー28と苦戦をしいられた。
そこで、流れをかえるべく、期待の超大物新人の俺、石川純也とウドの大木、こと大山博司が投入された。
後半のメンバーは
4番 木ノ下薫 SG
5番 永瀬勇希 SF
6番 石川純也 PF
8番 長谷川亮 PG
11番 大山博司 C
となった。以前から少しだけ練習していた、薫がフォワードからガード、永瀬勇希がセンターからフォワードにポジション変更するという作戦だ。
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朱雀高校のスローイングから試合が再開される。
亮は薫からボールを受け取り、ハーフコートまでボールを運んだ。
「ゆっくり、一本いこう」
亮が焦らずに指示を出す。そしてみんながポジションに着いた。
『な!?』
相手チームの顔が驚きの顔となる。
おそらく、ポジション変更のことだろう。
相手の松岡より身長が大きい博司は、さりげなく相手にプレッシャーを与えているようだ。
相手チームの監督が焦り気味の部員に声をかける。
薫にディフェンスについた加藤は、苦笑いをしながら薫に話し掛けた。
「はは、おいおい……永瀬って言うヤツがシューターはありえないからお前がシューターか? チーム1の得点力をガードにするとはヤケクソか?」
その言葉を聞いた薫は、笑みを浮かべながら、
「なるほど、ヤケクソ……か」
そう言って、薫にボールが渡った。
薫がドリブルをはじめる。
「何が来てもとめてやるぜ、MVPさんよ!?」
薫が変速をつけて切り込む。
それに負けじと加藤が薫に付いていく。
(右か!? いや、左だ!!)
加藤が来るべきドライブに備え、構えたときだった。
(何ぃ!? ブレーキ!? クローズか!?)
薫はトップスピードに近いスピードから急にブレーキをかける。
そのまま少しもブレずに完璧なフォームをからシュートが放たれた。
一瞬、時がとまったような錯覚に陥る。 そして、
スパッ!
ボールがリング中の網を外へ弾きながら、中へ吸い込まれていく音だけが鳴り響いた。
唖然とする加藤に薫は話し掛けた。
「こんなものさ」
その言葉を聞いた加藤の顔が、怒りの顔へと変化する。
(くそ……薫め!!)
加藤は仲間からボールをもらうとすぐに、相手のゴールに向かってドリブルしていく。
(なめやがって……)
加藤がそのまま、中へ切り込みシュートをしようとした時だった。
「博司!」
純也が突然叫んだ。それに気付いた博司はブロックのために、切り込んできた加藤に迎え撃つ。
「邪魔なんだよ!!」
「うわぁぁ!」
加藤の手からボールが放たれようとした時だった。その瞬間、ビビリながらも博司がブロックに跳んだ。
(何!? コイツ、高けぇ!)
博司は加藤の更に上に行っていた。
ドン!!
ボールは博司の手にあたり、弾き飛ばされる。
そのボールをすかさず純也が拾った。
「よくやったぞ! 博司!」
「え? う、うん!」
純也はそのままボールを亮にパスする。
そのボールを亮と永瀬が即効で繋ぎ得点する。
これで33ー45と12点差まで近づいた。
その後は相手の松岡が意地を見せ、博司を振り切り得点し、更に点差を広げた。
相手の監督が佐川のレギュラーたちに大声で話し掛けた。
『そうだ! まだまだウチが勝っているから焦らなくていい。ポジション変更は付け焼き刃にすぎん!』
「ほぉ、付け焼き刃かどうか見せてやろうじゃんかよ?」
亮が再びボールを運び、セットからのオフェンスとなった。
薫にボールが渡る。それに加藤がディフェンスをする。
薫は加藤に真剣な表情で話し掛けた。
「さっき、俺がチーム1の得点力とか言ったよな?」
薫はボールを自分の懐に引き込み構える。
「ポイントゲッターは俺じゃない、永瀬勇希、そして……石川純也! アイツ等がやってくれる!」
「何!?」
薫のボールが純也へと渡る。そのボールが渡った途端、純也は不気味な笑顔を浮かべた。
「やっと出番かよ……待ちくたびれたぜ!」
キュッ!
『は、速ぇ!?』
純也は必殺の一歩目からのトップスピードバックターンで、一気にディフェンスを抜き去る。
相手はその動きにまったく付いていけないようだった。
そして、純也がドリブルをする先には、
「来い! 絶対に決めさせない!」
195センチのセンター、松岡がゴール付近で仁王立ちをしていた。
「松岡! そんなチビ、叩き落としちまえ!!」
そう加藤は叫んだ。
「はぁ? チビだぁ?」
純也はそう言って松岡の前で思いっきり地面を蹴り、宙に浮かんだ。
「止める!」
「うぉりゃあっ!!」
松岡もそれに合わせて飛び跳ねる。
「な、なにぃ!?」
松岡はジャンプの最高到達点に達し、体が地面に向かって落ちはじめる。
しかし純也はまだ飛んでいた。
「雑魚は引っ込んでろ!!」
そして、松岡の上からリングにボールを叩きつけた。
ダァァァァン!!
少しの間、純也はリングにつかまり、ぶらさがる。
会場全体が静寂に包まれた。
そろそろ、この試合が終わったら第一の山場です。関東大会は本当に、思いもよらぬ結果です笑。これからも、まだまだ続くと思いますがよろしくお願いします。