表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/152

No.43 スタメン!?

「スターティングメンバーを発表する!」


『オス!』


 キャプテンの薫の言葉に、並んでいた部員たちは一斉に返事をした。いつもとは違う、部員たちの気合いの入った表情がうかがえる。

 それもそのハズ、今日は練習試合なのだ。会場も朱雀高校体育館なので普段の練習試合より少しだけ、早起きしなくていい。

 ちなみに、相手の高校はまだ来てない。



「まず、4番スモールフォワード、俺」


 そう言って薫は自分の胸に手を当てる。

 ん?薫がフォワード?なんか引っ掛かる……


「5番、センター、永瀬勇希」


「はい」


 永瀬は返事をし、マネージャーからユニフォームを受け取る。


「7番、パワーフォワード、小田原君」


「はい!」


 はぁ? 俺じゃねぇのかよ!?


 特に顔に特徴もない、なんとも言い表わしがたい小田原君は、元気良く返事をしてマネージャーからユニフォームをもらう。


「8番、長谷川亮」


「はい」


 くそ〜……何であいつが!


「9番、我利勉翔太、以上!!」


「ちょっとまった!!」


「ん? どうしたんだ純也」


「俺、レギュラーじゃねぇのかよ?」


 俺は必死に薫に抗議する。


「ああ」


 たった二文字で返されてしまった。


「冗談じゃねぇ! 後悔するぜ?」


「純也、良く聞け」


「あ? なんだよ?」


 真面目な顔をして薫は話しはじめた。


「確かにお前はなかなかの実力を持っている。しかし、技術があってもそれを試合で発揮する技能が無くては意味が無い」


「俺は技能MAXだっつーの!」


「だから少しずつ試合慣れをしていくんだ。だから、後半……」


 薫はひとまず間を置き、再び語りはじめる。


「後半はお前を試合に出すから、しっかりと体を温めておけ!」


「!!」



 や………………




 やったぜぇ!! 俺の試合初デビューかよ!!


「よっしゃあ! 薫! その言葉、絶対に忘れんじゃねえぞ?」


 薫は軽く微笑んでから、


「ああ」


 と、再び2文字で答えた。



――――――


――――


――



 そしてレギュラーの奴らはアップをはじめる。

 補欠の俺たちはムカつくことに、モップがけ、オフィシャルの準備など、かなりコキを使われていた。


「あ〜、マジダリィ……俺も試合に出るんだったらアップさせろよな」


「こら、つべこべ言わずに働きなさい。ほら、ボールカゴ持ってきて」


 俺の横にはスコアブックを持った久留美の姿があった。


「はぁ、なんだ、お前かよ。ビビらせやがって」


「ちょ、ちょっと! 何よその態度は!?」


「しらね」


 俺はそう言って鼻糞をほじる真似をする。あくまでも『真似』だからな。


「ム、ムカつくわね」


 久留美の表情がだんだん曇ってくるのがわかる。

 俺は人差し指で久留美の額を突いた。


「きゃっ! ちょっとぉ! 何すんのよ!?」


「そんなに怒ってばかりだとシワだらけの顔になっちゃうよ、エヘ☆」


 その言葉を聞いた久留美は一気に爆発した。


「もぉ〜怒ったわよ! 覚悟しなさい!!」


「うわっ!」


 俺は追い掛けてくる久留美からひたすら逃げ回る。トムとジェリーのように。


 ゴン!


「いてぇ!」


 急に頭に衝撃が走った。何かが当たったのだろう。 足元を確認するとなぜかホウキが転がっていた。


「いてぇな! 飛び道具は卑怯だろ!?」


「アンタが悪いんでしょうが!」


「しらねぇよ!!」


『ジリジリジリ』


 お互いの目線に火花が散る。花火に点火できそうなくらいだ。


 そんなときだった。


『ねぇ純也くん』


「ん?」


 俺は突然声のしたほうを見る。


「す、純麗さん!」


 そこには何と、三年生のマネージャー、赤川純麗さんの姿があった。


「はい、何でしょうか!?」


「相手チームさんにだす麦茶を準備してくれる?」


「はい、喜んで!!」


「それじゃあお願いね」


「はい! わかりました!」


 そう言って純麗先輩は他の仕事に取り掛かる。雑用も悪くないかもしれん。


 そんなことを考えてると不意に後ろから冷たい視線を感じる。


『じ〜〜』


 やはり案の定、久留美だった。


『じ〜〜』


「どうした?」


「アナタずいぶんと私と純麗先輩と話すときの態度が違うわね」


「当たり前じゃん。俺とお前の仲だぜ? 昔からのダチみてぇなもんじゃん。気使わなくてもいい仲じゃないか」


「ジュン……」



 久留美はうれしそうな笑顔をする。


「それに、純麗さんは可愛いから特別なんだよ☆お前と一緒にすんな」


「…………アンタは」



 久留美の背後から物凄い気炎がみえる。錯覚か!?


「アンタは……」


「お、おい……どうした?」


「いつも一言多いのよ!!」


 またホウキを持った久留美が追い掛けてくる。


「わっ! じ、冗談だって! 早まるなぁ〜!」


「うるさぁ〜い!」



 こうして、俺たちの熾烈な追い駆けっこは、キャプテンの薫がとめるまで続いたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ