No.4 対決
やっとバスケです。
「ふわぁ〜……終わった終わった」
学校が終わり俺は欠伸しながら背伸びをする。
思い返せば今日は最悪な一日だったなぁ。
朝っぱらから久留美に殺害されそうになったり、朝食、昼飯を食べられなかったり先生に怒られて廊下に立たされたり……まあ、授業をサボれたからいいか。
久留美はその後一日中機嫌が悪かった。
学校が終わるとすぐに教室を出ていってしまった。
何処へ行くんだろうか?
「優、お前これからどうするんだ?」
「ん? 俺はバイトがあるから。じゃ〜な」
そう言って優は教室を出ていってしまった。
「…………」
――よし、薫の野郎を倒しに行くか……
そして俺は体育館へと走りだした。
――――――
――――
――
***
ここは朱雀高校の体育館。バスケ部が放課後、いつものように練習していた。 部員たちの掛け声が聞こえる。
そんな中、キャプテンの薫の声が体育館全体に響き渡る。
「もっと声をだせ!! そんなことではいつまでたっても白川第一高校に勝てないぞ!!」
――オッス!!
キャプテンの声により、さらに部員の声が大きくなる。
彼の名前は木ノ下薫〈きのしたかおる〉。
一年生のときからこの朱雀高校のエースの座に君臨している。
弱小だったこの朱雀高校を中堅まで強くした立役者でもある。
ちなみに白川第一高校〈しらかわだいいちこうこう〉とは、ここ12年連続全国出場をはたしている歴史ある名門校だ。
そんな彼だが、ある悩みがあった。
――白川に勝つにはどうしたらいいのか?たしかに朱雀高校はある程度名前を知られるところまできた。
しかし強豪となるには何かが物足りない……。
そんな時だった。
体育館の扉が勢い良く開かれた。
************
バァン!!
俺は体育館をようやく見つけだし勢い良く扉を開いた。
「木ノ下薫はどこだぁ!!?」
俺が叫んだ瞬間、バスケ部は練習を中断して、驚いた顔で俺に注目する。
「ジュ…ジュン!?」
誰かが突然、俺の名前を呼んだ。
俺はその方向に目を向ける。
「久留美!?」
そこには驚いた顔をしている久留美がいた。
「ちょっと……ジュン、なんでここにいるの!?」
「それはこっちのセリフだ!!」
「わ……私はこのバスケ部の――」
『マネージャーだ』
俺たちの会話に薫が入ってきた。さらに話を続ける。
「春風はこのバスケ部のマネージャーだ。お前は昨日、ストリートバスケで俺と戦ったヤツだな?いったい何のようだ?」
「俺の名前は純也だ!! まあいい。木ノ下薫、俺ともう一回勝負しろ!!」
「昨日勝負してみて技術も素質も光るものがあったな」
薫は周りに聞こえない声でそう呟いてから、純也に話し掛ける。
「いいだろう。ただし条件がある」
「あ? 何だよ?」
「うちの一年と勝負してみて勝つことができたならいつでも勝負してやる。ただし、負けてしまったら……」
「負けたら?」
俺は薫の言葉を待ち、唾を飲み込む。
「バスケ部に入部しろ」
!!!!
「はぁぁ? 何で俺が部活なんか――」
「どうした? 負けるのが恐いのか?」
その言葉を聞いて俺はかなり激怒した。
「別に恐くねぇよ!! ただめんどくせぇだけだ。それで、誰と勝負すればいいんだ? 一年だろ? 圧勝してやるぜ」
「よし、決まりだな。おい、亮。ちょっとこい」
『はい』
そして、亮と呼ばれたやつがでてくる。
背は俺よりすこし低い。おそらく168センチくらいだ。
「ははは、コイツと勝負すればいいのか? 薫は冗談がうまいな」
俺の台詞に対し亮と呼ばれた奴が反論してきた。
「おいお前! いい加減にしろよ!? 俺を馬鹿にするのはいいが薫さんを馬鹿にするのはやめろよ!」
「亮、別にいいって。そんなことより純也。亮はなかなか強いぞ。県で白川第一高校の次に名門校の黒沢高校からきたスカウトを蹴ってまでこの朱雀高校にきたほどの実力だ。どうするんだ?」
「へっ、誰が相手でもかわらねぇよ。」
***
「さて、どうなるのか」
薫は一人つぶやいた。
バスケットコートの上にいるのは二人。
純也と亮だ。
その二人を薫とマネージャー、他の部員全員が見ている。
「よっしゃあ! いくぜ!!」
先に口を開いたのは純也だった。
「こいよ、わざわざ薫さんがでるまでもないからな」
やがて、試合が始まった。
純也がオフェンスをして、亮がディフェンスをする。
純也がドリブルでボールを左右に振り、亮をかわそうとする。
「おっと」
亮はそれを体をはって止めた。
亮がスティール(相手のボールを奪い取ること)を狙う。
亮の指先がボールに触れ、純也がボールをとられそうになるが、うまく純也は体勢を立て直す。
「おい、純也とやら。いつでもスティールできそうだぜ?」
「あ? うるせぇチビだな」
さらにお互い一歩も譲らない、激しい攻防が続く。
また亮がスティールを狙った。
――よしっ! 今度こそ盗った!!
「逆だ」
亮が手をだした所にはボールはなかった。
亮は体勢が崩れていた。
その隙に純也はバックターンで一気に抜き去る。
そのままゴール近くで踏み切り、思い切りジャンプした。
「おりゃああ!!」
ドォォン!!
純也がリングにダンクシュートを叩きつけた。
『オオオォオ!!スゲー!』
それを見ていた薫と久留美、意外の観衆は驚いていた。
「はは、ますます面白い奴だな。だが、亮はここからが強いぞ」
薫はこの二人の対決を見ながら、そう呟いた。
「おい薫! 次にコイツのオフェンスを止めたら俺と勝負してくれんだろうな?」
「ああ、止めることができたらな」
純也の言葉に薫ははっきりと、そう答えた。
亮がボールを持ち、純也を睨み付けながら言葉を言い放つ。
「いくぜ?」
「ああ、こいよ」
亮の攻撃が始まった。