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No.37 すたーと その9

時間があいた投稿ですみません。忙しかったのと慎重にいきすぎてボツ作を二個もだしてしまいました。ボツになった話はまたいつか違う形で使用したいです。とりあえず、長い過去編はこれで終わりです。

 時が流れるのは早いもので、気付けば俺は中学生になっていた。




 しかし相変わらず俺の日常の流れは変わらずバスケばかりしてた。


 残念なことに沖さんや他の人たちも大人になりストバスのコートには来なくなってしまった。


『今まで俺は親に迷惑かけっぱなしでよぉ、俺のために毎日馬鹿みてぇに働いてな。俺にはそれがわからなかったんだ。たった一人で俺に食わせるために必死に馬鹿みてぇに……』


『え? 沖さん? どうしたんだよ急に?』


『…なんでもねぇよ。純也にもいずれ社会にでればわかるさ。………今度は俺が母さんに恩返しする番だ』


『ん? よくわからねぇ』


『ふ……じゃあな純也。これでここに来るのは最後だと思うからな。バスケ期待してるぜ!』


『ち、ちょって待てよ! 沖さん? 最後って……』



…………。



 これは一年前の会話。


 沖さんはそれ以来本当にコートには来なくなってしまった。真面目に働いているのか? どうなったのかはわからない



「おいジュン! ぼーっとしてないで準備しろよ。もう時期試合だ」


「ん? ああ、悪い悪い」


 考え事をしていたらカズに突っ込まれた。

 現在俺、カズ、優、久留美の四人はストリートバスケの大会の控え室にいる。

 この大会は自由参加で年齢制限もなし、俺たちの力を試すにはもってこいだ。ちなみに久留美はストバスの仲間と応援に来ている。


「よし!あと二回勝てば優勝だな」


 優が俺とカズに言った。俺は答える。


「ああ、あまりたいしたことねぇな。このままぶっちぎりで優勝だぜ!」


『よっしゃあ!』


 俺たちはそう言って互いの拳を合わせる。


 意外とここまで来るのはあっけなかった。俺たちは最年少にもかかわらず、快進撃を繰り広げ大人達を次々となぎ倒していったのだ。


『試合開始3分前です』


 控え室にスタッフらしき人が入ってきてそう言った。


「がんばってね」


「ああ」


 久留美の言葉に返事をして、俺たちは会場へと向かった。


――――――


――――


――



『Yo! またせたな! 今から待ちに待ったStreet Boys準決勝が始まるぜ!』


『わぁぁぁ!!』


 会場のMCの言葉に観客の声援が勢いを増す。

 小さな大会だと思っていたのだがしっかりとした室内の体育館で行なわれ、観客も驚くほど多い。理由はおそらく県外からも参加者がいるほど大規模な大会だからだろう。

 俺たちがここまで勝ち上がってこれた凄いことだ。


『両者自己紹介が始まるぜ?準備はいいかい?』


『わぁぁぁ!!』


MCが対戦相手のメンバー紹介をはじめた。名前を呼ばれた人は一人ずつコートに出ていく。観客に手を振ったり準備運動をしながらメンバー全員がコートの上にたった。



『さぁ、次は今大会最年少にして準決勝への切符を手にしたチームだぜ!ヨォ!』


『わぁぁぁぁ!』


『いいぞぉぉぉ!』


『待ってました!!』


『カズくぅ〜ん!!』


『キャー!優くん素敵!』



 相手チームの声援より俺たちの声援の方が大きかった。つぅか、俺に対する声援が少ないような……。





 MCが俺たちのメンバー紹介をはじめる。


『コイツがいなかったら準決勝進出はありえなかっただろう! 数々のスーパープレイで観客の視線を釘づけ! アシストではキラーパスを連発したオフェンシブガード…………森村カズキぃぃぃぃ!!!』


『おぉぉぉぉ!!』



 カズは軽いステップをふみながらコートに入る。


『綺麗なのは顔だけじゃないぜぇ!? 美しいフォームから放たれるスリーポイントシュートで数々のピンチを救ってきた男、フォワード………柿崎優!』



『キャー優く〜ん!』



 なんか女の声援が大きいような気がするんだが……。



「今大会、センターの中では最小だが、持ち前のパワーとテクニックで強者達との1ON1に勝利していた男………」



――よし! こい!



『きた男………』



――ん? なんだ? 勿体ぶんなくていいぞ? ドンと来い!



 突然MCの様子がおかしくなる。


『あれ? 何ていう名前だっけ?』



 どかーん!!


 俺は思わず転ける。



『わはははは!』


 会場は笑いでいっぱいになる。つ〜か、マイク通してわざわざそんなこと言うなよ!



『あれ? 君、名前なんだっけ?』


「あ〜!? 俺の名前だぁ〜? 一回しか言わねぇから耳糞かっぽじって聞きやがれ! 俺の名前は――」


――石川純也様だこの野郎!!


 と言おうとしたときだった。


「ガチャピン」



――は?



 突然声のした方を見てみると、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべたカズがいた。



『OKOK! ガチャピンか!悪かったな!会場のみんな聞いてくれ! 彼が強者達を得意の1ON1で粉砕してきた男……』


「おい! ちょっとまて!」


『ガチャピン!!』


『わぁぁぁ!!』


――ちょっとまて! 明らかにおかしいだろ? 気付よな!!


「よし! 頑張るぞ『ガチャピン』」


 と、カズ。


『落ち着いていけよ、『ガチャピン!』』


 と、優。


「カズ! テメー、ぶっ殺す!」


『両者それではジャンケンで先攻後攻決めてくれ!』


 俺が今にもカズにロケットパンチをくらわそうとした時、MCが割り込んできた。くそ! 覚えていろよ!


 会場には大音量のBGMが流れている。


 そんな中、俺たちの試合が開始された。



 先攻は俺たちボール。


 カズはゆったりドリブルしながら辺りを見渡す。


『よしっ!』


 それを相手はチャンスとみたのかスティールの体勢に入る。


「残念」


『何!?』


 カズにはそれが来るのをわかっていたようで、体勢の崩れたディフェンスの逆サイドから抜き去る。


 リングにむかって一直線のカズを他の敵がカバーをした。


 カズがドライブで切り込みシュートを放とうとしたときだった。


『え!?』


 カズは突然自分の右斜め後ろにパスをだす。ディフェンスはかなり驚いた様子だった。


 ボールの向かう先に待機していたのは優。


ノーマークだった。



 綺麗なサウスポーシュートから放たれたボールは綺麗に弧を描きながらリングに一直線に向かっていく。



パスッ!




 そのボールはリングの淵ににあたる事無く綺麗に吸い込まれた。



『わぁぁぁぁ!』


『YES!YES!YES!一輝はいったいどこに目がついているんだぁぁっ! いきなりノールックビハインドパスからのスリーとはやってくれるねぇ!』


 MCもかなり興奮しているようだった。


 カズはディフェンスに向かって一言、


「切り込んでからさばく、基本だぜ?」


『くっ!』


 相手チームは悔しそうな様子だった。


 そして俺たちのディフェンスが始まる。


 相手もなかなかやるようでスピードのある攻撃だった。さすがは準決勝だな。


 カズのきついチェックに耐えかねて、相手チームはシュートを放つ。


「純也! リバウンドだ!」


「おう!」


 カズの言葉を聞く前から俺はリバウンドの体勢に入る。


『なっ! このチビのどこにこんな力が!?』


 相手チームのリバウンダーを力でねじ伏せ、そのまま俺は豪快にリバウンドをかます。


「よっしゃあ! カズ! 行くぜ!」


 俺はカズにボールを渡し、俺たちのオフェンスの番だ。


 カズのボールが俺の手に渡る。


「石川ドライブ!」


 素早いドリブルで俺は相手をかわす。

 しかしゴール付近になって追い付かれてしまった。


『止めてやる!』


 気にせずに俺は今の自分にできる最高のシュートを放つ。


 そう、レイアップシュートだ。



『た、高けぇ!?』



 俺はディフェンスの上からシュートを放った。昔からジャンプ力には自信があった。


 シュートが決まり四点差とリードを広げた。


――ふっ!決まったぜ!


『ガチャピンのスーパーシュートが決まったぁぁっ!なんと、相手の上からのシュートだぁぁっ!』


「おい! ガチャピンじゃねえって!」


 必死に抗議している俺にカズが一言、

「ナイッシュ、ガチャピン!」


「うがぁぁ! 誰のせいでこうなったと思ってんだぁぁっ!」


「まあまあ」


 いつまでも怒っているわけにもいかないのでディフェンスをする。


 その後の展開も俺たちが優勢で何本か相手にシュートを決められるが、フェイントのプロ、カズに翻弄され相手はリズムを崩す。

 シュートと思ったらパス。パスと思ったらシュート。

カズは小さな隙を見つけると確実に点に結び付けてくる。

周りの人の使い方が非常にうまいのだ。


 この試合はカズの才能を観客に存分に見せ付けるゲームとなった。


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