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No.36 すたーと その8

 父さんが新しい人になって一週間がたつ。

 新しい家にも少しだけ慣れてきたところだ。


 ちなみに今日は日曜日。だが俺はあるところに向かう。


 そう。あのストリートバスケットだ。部屋にある真新しいバスケットボールを手に俺は勢い良く家をでる。


『いってきま〜す!!』


『はやく帰ってくるのよ』


 母さんがそう言ってきた。新しいと父さんは休みなのでまだ寝ている。


 俺は走って5分くらいの場所にあるコートへと向かった。

 コートは初めは恐い人だらけで正直ビビッたけど、実はみんないい人たちで、俺を歓迎してくれた。


 そうこうしているうちにコートに辿り着く。


「よお!優。おせ〜ぞ」


 純也が話し掛けてきた。


「くそ〜、今日は絶対に俺のほうが早いと思ってたのに!」


「ははは!まだまだだな」


「いつも2番目か……よし、練習しよっと」


 そう言って俺はシュート練習を始める。

 純也はレイアップ、俺は少し離れたところのミドルシュートだ。


 俺はリングに向かってシュートする。


ゴンッ!


 しかしボールはリングの淵に当たり、弾き飛ばされてしまう。


――おかしいな……


 その後もシュートをうってみるが入らない。


『オッス優!』


 俺は突然声のしたほうを見る。声の主はジュンではない。


「お、カズか」


 そこには最近知り合った男、『カズ』の姿があった。


「ああ。みんな来るの早いな」


「おう。早く練習したかったんだよ。って言ってもここに一番最初に来たのはジュンだけどな」


「ははは、アイツはバスケバカだからな。まぁ、俺もだが」


 そう言ってカズはリングに向かってシュートする。 そのボールはリングの淵にあたる事無く、綺麗に吸い込まれた。


 俺も負けずにシュートする。やはり、惜しいところで外れてしまう。


「へぇ〜、優はサウスポーなのか?」


 突然カズか俺にそんなことを言ってきた。


「さうすぽー?」


「左利きのことだよ。ほら、もう一度うってみろ」


「ああ」


 俺再びはシュートをうつが、また外れてしまう。


「肘だな。優はいい線をいっているんだが、肘が明後日の方向を向いてる。肘はこうやるんだ」


 カズは構えてみせる。肘は綺麗にリングの方を向いていた。


「こうか?」


 俺も真似をして構えてみる。何だがぎこちない気がする。


「そうだ。後は肘が横にブレないことを意識して、手首でバックスピンをかけるようにして放つ」


「肘、手首……」


 俺はカズに言われたことを意識してシュートを放つ。


 シュッ!



 ボールは綺麗な弧を描き、リングに向かっていく。



 スパッ!



 今度は綺麗にボールがリングに吸い込まれた。


「は、入った……」


「へぇ〜、筋がいいな。後は膝のバネを使うように意識してみる。手の力より明らかに足の力ほうが強いからな。使わないともったいない」


「膝のバネねぇ」


 カズの言った通りにするとなぜかうまくいく。

 その後も俺はカズにアドバイスをもらい、練習に励むのだった。


――――――


――――


――



「ただいま〜」


 俺は家に帰り、部屋に戻る。今日もたくさん試合をしたので疲れた。

 しかしカズにはまったく歯が立たない。ジュンもさすがにバスケ暦が長いのでうまい。早くみんなに追い付かなければ……。


 そんな考え事をしていた時だった。


 ギュイーン!


 近くにある父さんの部屋から何やら音が聞こえた。


「何だ?うるさいな」


 俺はそんなことを思いつつ、父さんの部屋に向かう。


 コンコン


 ノックをして、一瞬間を置いた後、返事が聞こえたので俺は部屋の中へと入った。


「父さん、何やってんだ?」


『ああ、うるさかったか。悪い悪い。久しぶりにギターを触ってたところだ』


「え!?父さんって、ギターできたの?」


『まあな。これでも昔は夢を追い掛けてバリバリならしたもんだ。結局夢は叶わずに、今では普通の会社員だけどな。ははは』


「はは、何だよそれ」


 父さんは練習を再開する。


――な、なんだこれ?



 俺は目の前の光景に目を奪われる。



――凄い……何だかよくわからないけど凄いぞ……。



 父さんの演奏が終わる。


『いやぁ〜、鈍ったなぁ。恥ずかしくて人前で弾けねぇや、ははは』


 父さんは恥ずかしそうにそう言った。


「凄い……」


『ん?そうかぁ?全盛期はこんなもんじゃなかったんだがなぁ。ブランクってのは怖ぇぜ』


「ギターってそんなことができるんだ」


『そうだろ? まったく、スゲェ玩具だぜ。どうだ? お前もやってみるか?』


「うん。でも俺、左利きだけど関係ないのか?」


 その言葉を聞いて父さんは考え込む。


 そして結論を言い放った。


『安心しろ』


「え?」


『何と偶然にも俺も左利きだ』


「ええ?本当に?」


『ああ。だから俺の使わなくなったギターを貸してやろう。いつか自分のギターを手に入れたら返せよ』


「うん!わかった!」




 この日から俺はバスケとギターに夢中になることとなる。





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