No.33 すたーと その5
「ふふふ、子供♪」
放課後の帰り道、久留美はからかうような目で俺に言った。
「うるせ〜ぞ!俺は大人だ!」
「純也ちゃん」
「くっ………」
――最近の久留美は性格が悪くなってきたな。
「そういえばカズ君はどうなったのかな?」
「ん?ああ、そう言えば今年から中学生だったな」
俺たちはそんな会話をしながらストバスのコートへと向かう。
商店街へと入り、裏路地へと向かう。だんだん目的地に近づくにつれ、大きな歓声が聞こえてくる。
「おっ、今日もやってるな」
コートを見渡すといつものように、試合が行なわれていた。
『いけ〜!』
『ははは、殺すぞ!』
『痛ぇ〜……』
俺はとりあえず、マイボールを取出しドリブル練習をする。もうこのコートにきてから二年になる。ドリブルもかなりできるようになった。今では高校生たちにまじって試合もしている。
自分が出場する試合をドリブルでもしながら待っていたときだった。
「オッス純也!」
「あっ!沖さん、久しぶり!」
俺は声のした方向を見る。するとそこには沖さんがいた。
「沖さん!最近見なかったな。どうしたんだよ?」
「いや、今まで学校をサボりすぎた分いかなきゃならね〜んだよ。卒業できねぇ」
「ええ!?沖さん本当に高校生だったの?」
「あたりまえだろうが!!だからこんなに苦労してんだろ!」
「へぇ〜、高校って大変なんだな」
「ああ、俺ももう卒業さ……そしたら今までみたいにここにはこれなくなるかもな」
沖さんは悲しい顔をして言った。さらに続ける。
「ホント、俺みたいなのが大人になったらどうなっちまうのかな?最近考えるんだ」
「どうしてだ?」
「不思議でしょうがねぇよ。ガキの頃は大人になったら何かが変わると思ってたんだけど実際はガキの頃のままさ」
「ふ〜ん、そんなもんかぁ?」
「いつになったら変わんのかな?まぁ純也に言ってもしかたがないか」
「なっ!バカにすんなよ!俺は大人だぞ!」
怒る俺に久留美が一言、
「純也ちゃん♪」
「くっ、久留美!それは言うなって!」
それに沖さんがくいつく
「ん?どうしたんだ?」
「えへへ、沖さん!今日ジュンが先生にね……」
「バカヤロォ!言うんじゃねぇ!」
俺は久留美の口をふさいだ。
「む〜、む〜!!」
「おい純也、どうしたんだよ?久留美ちゃんをイジメるなよな」
「ははは、沖さん。なんでもねぇから気にするな!」
「む〜!」
「そうか?じゃあ俺はもう行くから」
そう言って沖さんはコートからでていこうとする。
「え?沖さんバスケやらねぇのか!?」
「はは、言ったろ?わりぃけど忙しいんだ。またな」
そしてどこかへ行ってしまった。
――沖さん……何か淋しそうだったな。
ボーっと考え事をしていてあることに気付く。
「む〜〜〜!!!」
「あっ!わりぃ」
久留美を捕獲していたことをすっかりと忘れていた。
「ちょっと!苦しいじゃない!!死んじゃったらどうする気!?」
「ははは、わりぃわりぃ」
「『わりぃ』じゃないでしょ!まったく……」
そうこうしているとき、不意に声が聞こえた。
『よう!相変わらず仲がいいな』
俺たちは声のしたほうに振り向く。
「カッ、カズ!?」
「カズ君!!」
俺たちが驚くのも無理はない。何せ急にカズの髪型がドレットヘアーになっていたからだ。
「どうしたんだよその頭!!」
「ん?あ、これか?アイバーソンみてぇで格好いいだろ?」
「何か妙に似合ってるぜ!強そうだな!」
「ふっ、まあな。これで俺は無敵だ」
「意味がわからん!そう言えば中学校はどうだ?」
俺はカズに聞いてみた。これはずっと気になっていたことだ。
「普通だよ。人が増えたくらいじゃねぇのか?あと色々あってめんどくさい」
「部活は?バスケやるって言ってただろ?」
「追い出された」
「は?」
固まる俺と久留美。
カズは話を続ける。
「いやぁ、何かこの髪型で部活の見学に行ったらよぉ、『なんだその髪型は!ふざけてるのか!』ってクソ監督がいいやがったんだよ」
「ふむふむ」
俺と久留美はその話をコクリコクリと頷きながら聞く。
「だから言ってやったぜ!『俺の魂をなめんじゃねぇよ!』ってな」
「ははは!カズらしいな!でもいいのかよ?」
「問題ねぇさ。あんなヤツにバスケは教わりたくねぇよ」
「そうか。じゃあ今まで通りだな。よしっ!1ON1やろうぜ!今日こそ倒してやるぜ!」
「ああ、いいぜ!」
そして俺たちの1ON1は夜遅くまで続いたのだった。
ちなみに俺は今日もカズに負けてしまった。いつかかならず倒してやるぜ!