No.30 すたーと その2
『さようなら〜』
ここは朱雀小学校3年2組の教室。すべての授業が終わり、生徒達は下校する。まだ部活などに入っている人はいなく、ほとんどが家に帰る。
ただし俺は違った。ある目的地へと向かう。
学校をでて俺は走る。一刻も早くつきたい。
俺の名前は純也。小学3年生だ。今とても夢中なことがある。
それは『ばすけっと』と言う名前らしい。
商店街に入り、そのままストリートのコートへと向かう。
『わあぁぁ!』
『いいぞ〜!!』
やってるやってる!!
コートの中から歓声が聞こえる。
ここには毎日沢山の人が来る。学校をサボっている人も沢山いて、その人たちはとても怖そうな格好をしている。年令はだいたい中学生くらいから高校生くらいまで。
初めは少し怖かったけど、実はみんないい人だった。
とくに『沖さん』と言う人はかなり派手な頭をしていて、ぴあすも一体何個してるんだ?と言うくらいあるが、いつも冗談ばかり言っていておもしろい。みんなにも慕われている。人は見かけで判断してはいけないなぁ。
本人曰く、高校生らしい。
ここのみんなはとても仲がいい。いつも楽しそうだし、一緒にいておもしろい。中には、バカげたことをやりだす人もいる(金魚を踊り喰いなどその他)。
俺がコートに入ると、沖さんが寄ってきた。
「よお純也!!今日も来たな!未来のスター!」
相変わらずテンションが高い。
「おう。早くバスケがして〜!」
そう言って俺はマイボールを取り出す。いつも学校に持っていっている奴だ。お小遣いをためてやっと買ったんだ。そのおかげで、メガトラマングッツは買えなくなったけど……
「どうだ純也?うまくなったか?」
「そうだ!見てくれよ沖さん!昨日ドリブルすこしうまくなったぞ!」
「ほう、見せてみろ」
俺はドリブルを披露する。まだまだボールから目を離すことはできない。
「スキあり!」
沖さんは俺のボールを素早くカットした。
「まだまだあまいな純也!スキだらけだぞ」
「ず、ずるいぞ?!いきなり卑怯な!」
「ストリートにずるいもクソもねぇよ。ホラ、俺からボールをとってみろ」
沖さんはドリブルを始める。
「よしっ!」
俺はカットを狙うが軽くかわされてしまう。
「どうした?」
「くそ〜」
突然沖さんはドリブルをミスし、ボールが地面に転がる。
チャンスだ!とばかり俺はそのボールに飛び付く。
俺が飛び付いた途端、沖さんは足のつまさきでボールをすくい上げた。突然目標を失った俺は、地面にダイブする。
「いてぇ!沖さん、卑怯だぞ!」
「ははは、そんなんじゃ生き残れないぜ?」
「ちくしょう!練習するからボール返せ」
「わかったよ。ホラ」
俺は沖さんからボールを受け取り、練習を始める。
しばらくして沖さんが俺に話し掛けてきた。
「なぁ純也。右手じゃなく左手でも練習しないとダメだぞ」
「わかってるよ」
そう言って俺は左手にドリブルする手を移し替える。
なんだか慣れなくて気持ち悪い。ドリブルをしているボールが爪先などに当たってしまう。とっても難しい。
俺は必死に練習した。みんなに早く追い付きたいから。そして、カズに勝ちたかったから。
「そう言えば沖さん。カズは?」
沖さんはタバコを取出し、火をつける。
「ふぅ〜、知らねぇ。学校じゃねえのか?」
「ふ〜ん。アイツ今日は俺より一時間授業が多い日だな。大変だな、五年生って」
「まあ、俺はほとんど行ってねぇけど」
「ふ〜ん。楽でいいなぁ。俺は母さんが厳しいからなぁ」
「そうだな」
そう言って沖さんはまたタバコを吸い始める。
「なぁ、タバコってうまいのか?」
「ふぅ〜……ん?知らねぇ。吸ってみるか?」
「いやだ。煙い」
「ははは、嘘だって。お前は吸うなよ。まあ、その心配はなさそうだな」
「何で?」
「俺の場合最初は親に反抗が目的だったからな。まあお前にはまだよくわからねぇ話だよ」
「へぇ〜だったら別にいいや。俺なんかが吸ったか母さんに殺されそうだしな」
「ははは、お前んちは楽しそうでいいな。」
「そうかぁ?母さん鬼だぞ?」
沖さんは軽く微笑む。
「ふふ、うらやまし〜よ」
羨ましい?あの鬼のどこがいいんだ?
「まあタバコはバスケもまともにできなくなるからやめろよな」
「え?じゃあ絶対に吸わねぇ」
「約束だぜ?お前の将来が楽しみだ。どんだけバスケがうまくなってんだろうなぁ。だからタバコは吸わないほうがいい」
「わかった吸わない。バスケは沖さんよりはうまくなるよ」
「はは、言ったな、コイツめ。そう言えばあの娘はどうしたんだ?」
「あの娘?」
「久留美ちゃんだよ」
「母さんのお見舞いに行くって行ってたぞ。アイツの母さん病気なんだ」
「そうか……」
沖さんは一瞬暗い顔をしてから俺に言った。
「そういやぁ純也」
「ん?」
「あの娘はお前の『コレ』か?」
そう言って沖さんは小指をたてる。
「ナニソレ?」
「彼女だよカノジョ」
「ち、ちげーよ!」
「照れるなって。久留美ちゃんは可愛くなるぞ〜。今からでもわかる」
「照れてね〜よ!」
俺は沖さんを追い掛け回す。
「ははは!捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ!!」
「まて〜!!」
そして俺たちの追い駆けっこは続いた。
サクサク進むように、過去の話は短めにしています。これから少し過去編が続くと思いますが、お付き合いくださいませm(__)m




