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No.26 秘密特訓2

「ここが昔から俺がバスケをしていたところだ」


「へぇ〜」


七時を過ぎ、空き地には俺と博司以外誰もいなかった。ここのコートの広さは普通のコートの半分。リングも一つ。

みんなでお金を出しあって照明も買ってある。

なので夜でも普通に練習ができる。


「さ、博司。練習するか!」


「うん。でも、何を?」


「俺がジャンプシュートをする。外れたボールをリバウンドしてくれ」


「う、うん」


そして俺たちの練習が始まる。

俺がシュートしたボールは悔しいが外れてしまった。そのボールを博司がとる。


「っと」


博司は得意気な表情だっただった。


「違う!違うぞ博司!」


「え?」


「今日の練習でお前より小さい小田原にリバウンドとられただろ?何でかわかるか?」


「え?わからないよ」


「場所だ場所」


「場所?」


「ああ、あらかじめ場所をとっておくんだ。するとボールをとりやすい」


「ふ〜ん」


「しかし!そんなことは誰でも思っていることだ。だからゴール下はいつも戦場になるんだ!」


「戦場?」


「だから死んでも相手に場所をとられるな!死んだら俺が殺す!」


「ええ!?意味がわからないよぉ」


その後、俺は博司にリバウンドの基本を教え、ひたすら同じことを繰り返した。


「違う!肩をもっと張れ!」


「うん!」



………………。



「跳ぶタイミングが遅い!!」


「う、うん」



………………。



「今度は跳ぶのが早すぎる!」


「……う、うん」



………………。



「跳び方がおかしいぞ!」


「……う」



………………。



「違う!顔が変だぞ!!」


「ええ!?」


――――――


――――


――


「はぁ、はぁ、疲れた〜」


博司は地面に座り込む。


「そうだな、今日はこれくらいにするか。しっかしお前は上達が驚くほど遅いな」


「もう、それはほっといてよ」


――まあ、根性はあるけどな。


「よし、帰るか!」


「う、うん」


そう言って俺たちは帰ろうとした時だった。


『オッス、ジュン!頑張ってるか?』


『ジュン、差し入れもってきたよぉ〜』


優と久留美が突然やってきた。


「ん?おまえらどうしたんだ?」


優が答える。


「バイトが終わって帰ろうとしていたら久留美ちゃんと会ったんだ。それでジュンたちに差し入れに行くって言ったからついてきたんだ」


「そ〜よ。わざわざ差し入れに来てあげたわよ。有り難くもらいなさい」


そう言って久留美はジュースを取り出す。


「お、サンキュ」


「あ、ありがとう」


それを俺と博司は一気に飲み干した。


「どうして久留美は俺たちがここで練習していることがわかったんだ?」


俺は疑問に思ったことを久留美に聞く。


「え?それは……ジュンが練習って言ったらここしかないじゃない?」


「そうだな。まあ、ジュースありがとな」


「練習しすぎで倒れないようにしてね」


「ああ、それと優。さっき久しぶりに京介にあったぞ」


「へぇ〜、まあ俺は毎回会ってるけどな。まさか喧嘩しなかっただろうな?」


「しねぇって。京介はどっかに遊びに行くって言ってたぞ。お前はいいのか?」

「ん?遊び?」


そう言って優は自分の携帯電話を確認する。


「あ!電源切ってたから気付かなかった。わりぃジュン!俺行くわ!京介に誘われてた!」


「おう!じゃあな」


優は急いでどこかへ行ってしまった。


「さ、久留美。俺たちも帰るか」


「うん、そうね」


俺たちは博司を見る。


「………ん、むにゃ…」


見事に爆睡中だった。

「おい、ウド。おきやがれ」


俺はウドを揺さ振る。


「……ん、ん……」


相変わらず気持ち良さそうに寝ていた。

「起きろって」


さらに揺さ振っても起きる気配が無い。


「……ん、爆睡中……」


「何が『爆睡中』だコラァ!!オメー絶対に起きてるな!?」


「………むにゃ」


起きる気配はまったくない。このまま置いていこうか迷っていたら久留美が話し掛けてきた。


「疲れているんだから少し休ませてあげたら?」


「ちっ、しょうがねぇ。30分だけ待ってやる。それが過ぎたら容赦なく叩き起こすからな」





沈黙がこの場を支配する。とりあえず俺は空を見上げてみた。

快晴だった天気のおかげで夜空には星共がごちゃごちゃしている。

でも、そんなに悪い気はしない。


「どう?部活は?」


久留美も空を見上げたまま話し掛けてきた。


「ん?めんどくせぇ」


「それだけ?」


「ああ」


また少しの沈黙。


「まあ、ムカつくヤツが多くて悪い気はしねぇけどな………」


久留美はは空を見上げるのをやめ、こちらを見る。


「ムカつくヤツ?」


「薫とか……亮とか………薫はいつかバスケで再起不能になるくらいボコボコにしてやるぜ」


「フフフ、逆に再起不能にされないようにね」


からかうような目で俺を見る。


――コイツ……可愛くねぇやつだな。


「そういやぁ、何で久留美はバスケ部に入ったんだ?」


「え?」


久留美はその質問に少し考えてから答える。


「純麗さんに誘われて部活見学に行ったの。それで部員の人たちを見たらみんな一生懸命で………」


「ふ〜ん。そうなのか」


――以外と単純な動機だったな。


また俺と久留美は夜空を見上げる。星たちは何が好きで光ってんだろう?とか思う。



「それと、カズ君(NO.12参照)みたいにジュンも高校になってバスケ始めるかなぁ?って思ったから…………とか」


「ん?」


突然の言葉に俺は久留美のほうを見る。

すると久留美も空を見上げるのをやめ、こちらを向きにっこり笑った。


「クスクス、ウソよ」


「お、おう」


――なっ、何だ今のは?でも少しだけ可愛かったな。ホントに少しだが。ペットボトルのキャップにジュースを注いで飲むよりも少しだ。うん、少し。




「あ〜、そうそう…………」



その後、俺たちのどうでもいい会話は続いたのだった。


――――――


――――


――




30分後………



「ぎゃぁぁぁ!!」


俺に叩き起こされた博司の悲鳴が、夜空に鳴り響いたのは言うまでもない。




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